27 スキャンダル
イイネや評価をして下さり、本当にありがとうございます! 優しさに感謝致します。
「健司」と俺を呼ぶ声がして振り返ると詩織がいた。
「あっ詩織?」
久しぶりと言いかけたところで、詩織が近藤さんに気付いた。
詩織の形相が変わり、スタスタと近藤さんに向かって歩いて行く。
パシッ
詩織が近藤さんの頬を叩いた。
「えっ!」
「この泥棒猫! 貴方が私が田崎に行くように仕向けたのね!」
俺は何の事だか分からないが、近藤さんも頬を抑えたまま立ち尽くす。
詩織が再び手を振り上げたので、俺は近藤さんをかばう様に抱きかかえた。
詩織は目を見開き信じられない物を見た様に一瞬固まるが、
「何よバカ!」
詩織は涙声になり小走りにその場を後にした。
周りには野次馬も集まってきたので、俺達も荷物を持ってデパートを出る。
「大丈夫近藤さん?」
俺は近藤さんの顔を覗き込み頬を確認すると、少し赤くなっていた。
「大丈夫です。」
レストランは個室を予約していたので頬を冷やす事も出来るだろう。
タクシーで予約していたレストランへ向かう。
「松原さん 大丈夫です。もう痛みもないです。」
見たところ赤みも気になるほどでは無い。
「私が何で詩織に叩かれ無くてはいけないのか、分からないです。」
近藤さんは続ける。
「詩織と最後に会ったのが、一緒に見に行ったウエディングドレスのファッションショー。その後連絡しても連絡がつかなくなったんです。そしてクリスマスイブに田崎さんから婚約解消されました。」
「あっ お客さん着きましたよ。」
「ありがとうございます。」
俺はタクシーの支払いをして外に出る。
姉さんが予約してくれていたのは完全個室の和食。
取り敢えず おしぼりと氷を用意してもらう。
「大丈夫だと思うけれど、少し冷やした方が良いかもしれません。」
「そうですね。ちょっと冷やしておこうかな。」
俺は頷いておしぼりに氷を挟んで近藤さんへ渡した。
「近藤さんも婚約解消はクリスマスイブだったんですね。」
「えっ、と言うことは松原さんも!」
「クリスマスイブを詩織にすっぽかされてレストランの閉店前にテキストでフラレました。ハハ。せめてもう少し前に知らせて欲しかった。」
「いやー酷いですね。私もレストランで言われました。流石に本人来たけど。。。。でも結果的には田崎さんと結婚しなくて良かったですが。」
そんな話でも近藤さんと俺は辛気臭くならずに話は盛り上がった。
和食が余りにも美味しくて、美味しいお酒と食事に大満足。
姉さん良いレストランを予約してくれて感謝。
◆ ◆ ◆
すっかり詩織と会った事など忘れかけた頃。
サンダーシャックからのメールで、
週刊誌に『シルバー、大手ホテル経営者夫人とのドロドロの三角関係』との記事が出るそうです。
と連絡があった。
えーーーーー!!
翌日 その週刊誌が発売となり、詩織が手を上げている時に、健司が近藤さんを庇っている写真が掲載された。
すぐに大手ホテルの経営者夫人は田崎リゾート経営者夫人だと特定された。
先日の田崎リゾートホテルの倒産と重なってた事も有り、ワイドショーなどテレビでも取り上げられた。
こうなってはしょうがないので、サンダーシャックも色々な媒体を通して今回の件は、シルバーとは無関係で、夫人は存じ上げているが、夫人がご結婚後にお会いするのはこの時が初めてだった事、またもう一方の叩かれた女性も夫人とは学友だったが、何年もあった事は無く、叩かれる様な事はしていない。被害者だと主張した。
その後、詩織がビンタして叫んでいる動画なども出てきたが、どの人も詩織を弁護する声は無かった。
健司に対する疑惑は消えたが、他人に手を上げた詩織に対しての批判や世間の目は変わる事は無かった。
読んで下さりありがとうございました。