17 ホテル (田崎視点)
田崎視点です。
短いですが、読んで頂けると嬉しいです。
田崎リゾートホテルは破産の申請をする事に決まった。
高齢者のVLSへの入居が進み、期待していた国内外からのシニアの富裕層客が大幅に減少、そしてホテルはデザインを重視したために、オープン後に発覚した施工ミスで結婚式場や会議室が現在使用出来無い。修繕では莫大な費用がかかり、現在訴訟中だが勝訴したところで破産申請は免れないだろう。
業績はオープニングから黒字に転じる事は無く、もうこれ以上は融資は受けれない。
チェックメイトだ。
「父さん、こんな結果になり、本当に申し訳ありません。」
田崎ホテル社長宅の書斎で田崎誠は父に頭を下げた。
「誠、お前達夫婦はマスコミの報道が落ち着くまで、この家で暮らせば良い。母さんは来週手術だし、こんな時期こそ家族で励まし合って暮らしていこう。 鈴木くん悪いが誠の引越しの手配を宜しく頼む。」
「畏まりました。すぐに手配を進めます。」
そう言って父の秘書は自宅の応接間を出て行った。
今住んでいるマンションは田崎リゾートホテルの社宅として借りているし、
家具も会社の資産なので差し押さえられるだろう。
「では私も引越しが有るので帰ります。」
そう言って俺は帰宅するが、詩織は未だ戻っていなかった。
引越しするので帰宅するようにと詩織に連絡するも返信は無い。
父の秘書の鈴木さんと引越し業者がやってきた。
業者が引越し作業を始める頃、やっと詩織が買い物を両手に持って帰宅した。
夜逃げする妻が高級品の買い物をしていたとはびっくりだったのだろう。
作業員の手が止まる。だが直ぐに何も無かったように作業を始めた。
マンションの引越しが終わる頃には、もう夜中の12時を回っていた。
荷物は取り敢えず実家のガレージに入れて貰う。
客間には布団が敷いてあった。
朝から走り回り、くたくただ、早く寝ようと思い布団に入ると。
「私、当分の間実家に帰らして頂きます。」と詩織が言った。
ああ、もうどうでも良い。「好きなようにすれば良いさ。」と言って俺は布団に入った。
布団に横になると、何故かもしこれが玲奈だったらどうだろうと思う。
母と仲が良かった玲奈だったらと。。。
まあ今更そんな事を考えてもしょうがないけれど。。。。
朝起きると詩織はもう実家に帰ったのか居なかった。
午前中に弁護士と一緒に破産申請の手続きをする予定だ。
その後田崎リゾートホテルの従業員への説明を弁護士が行う事となった。
田崎リゾートは田崎ホテルとは別会社ではあるが、田崎ホテルもそれなりのダメージはあるはずだ。
俺は田崎ホテルの役員に戻るとしても、田崎リゾートホテルの従業員は全て解雇する他は無い。
今後はホテル業界からの風当たりも強くなるだろう。
読んで頂きありがとうございました。