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第15話 アンス作戦会議

   *

「これまでの進行路から推測するに、ターゲットはかなりの確率でここの工業地帯を通るはずじゃ、現時刻より一班はポイントAにて待機を開始しろ」

 正規の監視局とは入口を別にする、地下組織『アンス』

 嘘のように仰々しく、凡そ信じ難いようなその部隊にて指揮を振る華奢な姿の老人。

 老人の頭には茶色いシルクハットが乗せられてはいるが、それ以外の顔から下は全て紺色の特殊部隊然とした出で立ちである。一つ奇妙なのはその装備の何処にも所属部隊名が記名されていない事であった。

「局長」

 張り詰めた空気の中、先日来栖と接触した男、鷲巣春馬(わしずはるま)が老人に向けて言葉を発した。

「なんじゃい鷲巣」

「その……工業地帯、A地点なのですが……」

 そう言いさして言葉を濁す鷲巣に、老人はサッサと言えと顎で誘導する。それを見て鷲巣は続きを述べた。

「A1県警の刑事、来栖刃がA地点において、何かを待ち伏せているようです」

 局長はあんぐりと口を開けた後、激しい口調を向けた。

「お前がしゃんと釘を刺せんかったからじゃい鷲巣っ!」

 突然、局長から怒鳴られ、鷲巣は申し訳なさげに頭をもたげた。

「まぁ良い、わしが行く」

 唐突にそんな事を言った局長に、一点前だけを見つめていた隊員たちは、ざわめき始めた。

「局長、あなたが出向くまでも無いのでは……」

「うるさい鷲巣ぅ、こういう不安分子は徹底的に排除せないかんのじゃ」

 つっけんどんな態度で喋る老人に、後ろで手を組んだ姿勢の男が険しい顔付きで尋ねた。

「ですが局長が現場に出向いたら誰が指揮をとるのですか」

「ん〜? ……全体の指揮は一旦出羽ちゃんに任す。――そういう事で良いかのー出羽ちゃーん」

 老人が声を投げた先、整列した部隊を後ろから見ている形で壁にもたれ、腕を組んでいた男が首を縦に振った。

「わかりました……」

 出羽はそう言ってからぼそりと、「四十過ぎの私をちゃん付けで呼ばないで下さい」と呟いたが、局長にまでその声は届かなかった。

「一班の細かい現場の指揮に関してはわしがその場でとる。ニ班は出羽ちゃんの指示に従え、わしは今から一班と一緒にA地点で待機を開始する。二班は第二種戦闘配置」

 その言葉に、その場にいる特殊部隊の全員が「ハッ!」と力強く返事をすると、その中の半数がぞろぞろと部屋から出ていった。

「じゃあ〜出羽ちゃん任した〜」と去り際に言い置いていった老人の気の無い態度は、緊迫したこの空気の中では余りにも浮いて見えた。

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