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死人と生存者たち ~ある男子高校生の生存記録~  作者: 奥鷹 雪斗
第1章 平和の終わり
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第2話 生きるために出来ることを

前回までのあらすじ


ある日の昼、いつものように俺は昼食を食べながら親友の間宮と桃形と共に雑談していると外でトラックが事故を起こした。そしてトラックから投げ出され重傷を負っているはずの人が起き上がり、状況を確かめるために近づいた公務員の米所さんに噛み付いた・・・

 唖然としていた俺たちだったがクラスメイトの1人が叫び声を上げながら教室を出て行った。それに釣られて我に返ったクラスメイトたちは叫び声を上げながら一目散に教室から出て行き始めた。


「うぁぁあー!」「きゃぁぁー!」「なんなんだよ!あれは!?」「どうなってるの!」

 

 様々な叫び声を上げながらクラスメイトたちは教室から出て行く。


「み、みんな!落ち着いて!」


 凛華がクラスのみんなを落ち着かせようとするが誰も聞く耳を持たない。


「おい、これって、ゆ、夢じゃねぇ、よな?」


 非現実的な事が起こってそれを受け入れ切れず、苦笑いをしている東に俺は近づき頬をつねる。


「痛てててッ!何しやがる!」


「これでも夢だと思うか!!」


 俺は声を張って怒鳴った。凛華と東は俺の怒鳴り声に驚いていた。気付けば教室には俺たち3人しか残っていない。俺は窓の外を再び見ると米所さんは大量の血を流して倒れていたが不自然な動きをして起き上がろうとしている。教頭は逃げたのか近くに姿はない。そしてトラックから投げ出された人は校舎に向かって歩いていた。


「凛華!」


 俺に名前を呼ばれてビクッと体を震わせ「はい!」と返事をした。


「俺たちは何をすればいい?」


「・・・え?」


 凛華は拍子抜けした声を出す。


「外には『ゾンビ』みたいた奴がこっちに向かって来てる。こういう場合どうすればいい?」


 俺の質問に戸惑いながらも凛華は答えた。


「ええっと、まず警察に連絡してその後に安全の確保を優先しましょう」


 そう言って凛華はスマホを取り出し、110番通報をした。しかし、


「・・・うそ」


 凛華が気の抜けた言葉を放った。


「おい、どうしたんだ?」


 俺が聞くと凛華がスマホを差し出してきた。俺は受け取ってスマホを耳に当てると、


『現在110番通報が頻発しているため、回線が混雑しています。ご用の際はそのままお待ちいただくか、しばらく待ってからお掛け直しください。繰り返します。』


 110番は既に使用できない状態だった。


「クロマル、何だって。警察はなんて言ってるんだ?」


 東が不安げな、いや、あきらかに不安の表情を浮かべていた。


「警察は来ない。110番通報が機能してないんだ」


 俺は俯きながら答えた。


「えぇ!どういうことだ!?」


 東は必死になって聞いてくる。


「考えられることは町のほうでもさっきの奴みたいのが出たんだと思う」


「嘘だろ・・・」


 東はその場に座り込んでしまった。


「凛華」


 俺は凛華にスマホを差し出した。


「ありが」


『こちら放送室』


 凛華が受け取ってお礼を言いきる前に教頭の校内放送が響き渡った。


『現在、校内に不審者が侵入しました。生徒は先生・ドンッ!・従って・ドンッ!・てください』


 校内放送に混じって窓を叩く音が聞こえてきた。


「ま、待って、そう言えば放送室って、正面玄関入ってすぐ右にあったはずじゃ」


 凛華の言葉を聞いた瞬間、


『ガシャンッ!!』


 校内放送からガラスの割れる音とともに、


『な、何をする!やめろ・・来るな、アアァァァァ!』


 助けを求める声の後に断末魔の叫び声が聞こえてきた。そして何かを引き裂くような音と呻き声が聞こえた後、放送は途切れた。凛華はへたり込み、東は頭を抱えて俯いていた。俺は今起こっていることを整理しようと頭を動かす。教室の外からは他の教室から生徒の叫び声が聞こえてきた。


(どうする?隠れるか?でもどこに?どうやって逃げる?逃げるったって町は既に・・・)


パニックに陥っている思考を俺は顔を両手で叩き無理やり現実に引き戻す。


(そんなの後だ。今は生き残る努力をするしかない!)


「凛華、東」


 名前を呼ばれた2人は俺のほうを向く。


「もし本当に『ゾンビ』が来てるとしたらこのままだと脱出もままならなくなる。だから、」


 そう言って俺は2人に手を差し出す。


「ここから、脱出しよう!」


 俺の言葉を聞いて東はすぐ、


「あ、当たり前だろう!」


 と言って俺の手を握り、俺は手を引っ張って立たせた。


「私も、死にたくないから」


 そう言って凛華も俺の手を握り、立ち上がる。


「で、どうすんだクロマル?もう『ゾンビ』は校舎の中にいるんだろ?」


 放送室がやられたのなら玄関付近は既に『ゾンビ』がいるのは間違いないだろう。だがそれよりも、


「まずは武器の調達しよう。機械加工実習室に行けば手頃な武器が手に入ると思う」


 俺は2人に提案する。


「そうね!」


 凛華は俺の提案に乗った。


「なら機械加工実習室に行くぞ!グズグズしてると『ゾンビ』に喰われるかもしれねぇからな!」


 そう言って東も俺の提案に乗り、教室の外へ駆けだした。俺と凛華は苦笑して後を追った。


PM01:17


「おい、クロマル!リン!ちょっと待ててくれ!」


 東は俺を呼び止めると教室の向かい側にあるロッカールームに走って少しするとバックとバットケース、それにバットを2本持ってきた。


「ほらよ」


 東は2本のうちの1本を俺に渡した。


「丸腰で行くよりはいいだろ?」


「サンキュー」


 俺は東に礼を言う。


「ちょっと、私は?」


 凛華は不服そうに東に聞く。


「ねぇよ」


 それを聞いた凛華は頬を膨らませて不機嫌になった。俺は一瞬笑うと前を向き、


「機械加工実習室に行けば武器が手に入るはずだ。それまで、」


 俺はバットを一振りして、


「俺たちに守られてろ!」


 そう言って再び俺は走り出した。


「何かっこつけてんだか」


 凛華が呆れながら言う。


「全くだ。ずりぃぞ、クロマル!俺にも言わせろ!」


 東はそう言って俺を追って走る。


「そっち!」


 的外れな返答を聞いてツッコんだ後、凛華も急いで2人の後を追った。


PM01:23


 俺たちは何とか機械加工実習室に到着した。まだ工業棟までは『ゾンビ』は来ていないようだ。しかし、実習室は鍵がかかっていた。


「どうする?」


 俺が2人のほうを向くと、


「こうするに決まってんだろ」


 そう言って東は前に出てバットを振り上げる。


ガシャァァンッ!


 壮大にガラス部分を破壊するとそこから手を入れてドアのロックを解除した。


「フッ」


 ドヤ顔で親指を突き立てた。


「ドヤ顔はいいから早く武器の調達!」


 そう言って凛華は実習室に入っていった。俺たちも続いて入るとそこには見慣れた旋盤やボール盤と言った加工機材があった。


「さて、武器になりそうな物はっと」


 俺はそう言って棚やロッカーの中を調べるがどれも武器になりそうなものは無かった。


「そっちにはなんかあったか?」


「なーし」


「あったわ」


「あった」と聞こえたので振り向くと凛華は身長より長い鉄パイプを握っていた。


「出ました!ゾンビゲームお馴染みの鉄パイプ!」


 東は笑いながら言うが武器としては申し分ない。


「でもそれだと使いにくくないか?」


 東はそう言って鉄パイプを指差す。凛華の持つ鉄パイプは当たり前だが滑り止めもないので下手に振り回すとすっぽ抜けそうだった。


「うーん、出来ればもう少し短くて先が尖ってれば槍みたいに突いたり出来るんだけどね」


 凛華は鉄パイプを振り回しなが言った。だがここは機械加工実習室。加工する機材は揃ってる。


「ならバンドソーを使って斜めに切断しよう」


 俺は近くにあった大型の工業用バンドソーの電源を入れる。まだ電気が通っているか心配だったがランプが点灯した。


「よし!鉄パイプを!」


 俺は凛華から鉄パイプを受け取るとバンドソーに斜めに固定し、ボタンを押して切断を開始する。


「どれくらいで切り終わる?」


「多分少し時間はかかる。それまで使えるものをかき集めよう」


 そう言って俺たちは棚やキャビネットを探し回った。


PM01:29


 ガガガガッ、バキンッ!カランッカランッ!


 切断された鉄パイプが音を立てて転がり、俺はすぐにバンドソーを止めた。固定していた鉄パイプは斜めに切断したおかげで先が注射器のように鋭利になっていた。


「あとは!」


 俺は探し回った時に見つけた黒のゴムテープを先端とは反対の持ち手のほうに巻いて滑り落ちないようにする。


「出来た?」


 俺は握り具合を確かめていると凛華が聞いてきた。


「オーケー!出来た!」


 そう言って俺は鉄パイプを凛華に渡す。受け取った凛華は軽く振って感触を確かめた。


「いい感じ!」


 そう言って凛華は鉄パイプを肩に掛ける。

 

「おい、やべぇぞ!来やがった!」


 廊下に出ていた東はすぐに俺たちのほうへ戻って来た。


「数は?」


 俺はすぐ東に人数を聞く。


「見た感じ10数人はいる!」


 どうやら機械の作動音や切断音に釣られてきてしまったようだ。


「どうする?」


 東は俺たちに聞いてくる。ここじゃあいつらを迎え撃つには不利だ。


「グラウンドを通って反対側に行きましょう」


 凛華はすぐに答えた。


「でも反対側は工事中だぞ?」


 俺たちのいる機械加工実習室の反対側は第2体育館の建設のため立ち入りが制限されている。


「そこのトラックでここから脱出するの!」


「そりゃいい!」


 凛華の提案に東は賛成する。


「名案だ!トラックなら数人は乗れるはずだしな!それと東!これバックに入れてくれ」


「わかった!」


 俺も凛華の提案に賛成だった。そして探し回っている間に見つけたゴムテープや使えそうな工具などを東に預けると俺はグラウンドを見て見る。『ゾンビ』は数人しか見当たらない。


「ア、ァァアアァァァ」


 ドアのほうには既に『ゾンビ』がやって来ていた。


「急ぎましょう!」


 そう言って凛華は窓を開けて外に出た。


「よし、入れ終わったぞ!」


 東もバックを背負ってバットを手に取る。


「行こう!」


 俺と東も窓から出て凛華の後を追った。



「うぉら!」


ドゴォ!


 俺は『ゾンビ』となった同じ高校の生徒を叩き飛ばす。


「クロマル、急げ!」


 東も他の奴を叩き飛ばしながら工事現場に向かって走る。


「はぁッ!」


 凛華は鉄パイプを使って3人を薙ぎ払って突き進んでいた。俺も2人に遅れまいともう1人を叩き飛ばして追いかける。後ろを振り返ると叩き飛ばした生徒がゆっくりと立ち上がっているところだった。


「結構強めに飛ばしてるのに平然と立ち上がってる」


「『ゾンビ』だから頭を潰さないと死なないんだ、ろ!」


 俺の愚痴を聞きながら東は目の前にいた1人を叩き飛ばした。


(だとしたら今持っている武器じゃ頭を叩き潰すには威力不足だし、バットもあと数回殴っただけ使い物にならなくなるかも)


「あと少しよ!」


 凛華の声を聞いて1度『ゾンビ』を倒す方法について考えるのをやめる。今は脱出する事だけを考えよう。 

 工事現場に入った俺たちはすぐにトラックを見つけた。資材運搬用らしくクレーン付きの大型トラックだった。俺たちはトラックに向かい東が運転席のドアを開ける。


「ラッキー!鍵がつけっぱだ!」

 

 そう言うと東はバットとバックを助手席に投げ入れるとドアを閉める。そして、


キュルルルルッ、ドルンッ!


 トラックからエンジン音が鳴り響いた。


「クロマル、リン!乗れ!」


 東が叫ぶと俺と凛華はトラックの荷台に乗る。トラックのエンジン音に釣られてか隠れていた『ゾンビ』が歩いて向かって来る。


「動かせるのか?」


 俺は東に聞いた。


「15の時から車を動かしてるんだ。動かせるに決まってる!」


 東は自慢げに言った。


「いくぞ!どこかに掴まれ!」


 俺と凛華はトラックに掴まると東はアクセルを踏んで走らせる。道路に出ると左に曲がって町のほうへトラックを走らせた。


「アズ!正門でトラックを止めて!」


 突然、凛華は言い放った。


(正門に止めて何をするんだつもりなんだ?)


 東は正門にトラックを凛華の指示に従って止めた。東はトラックを降りてくると俺たちのほうに来る。


「リン!どうするつもりなんだ!」


 凛華はトラックを降りながら東の言葉を聞く。


「もう一度学校に入って、生き残りがいれば連れてくるわ」


「連れてくるったっている場所の見当はついてるのか?」


 東に聞かれて凛華は黙り込む。正直言えば、生きている奴がいる可能性は低いだろう。


(でも!)


 俺もトラックから降りると、


「俺も手伝うよ」


 俺は凛華のほうを向いて言う。


「クロマル、お前・・」


 東は呆れていたが顔を下に向けて頭を掻いくと顔を上げる。


「分かった!」


 東も凛華の話に乗ってくれた。


「それで作戦は?」


 俺は凛華に作戦を聞く。


「まず東は車のクラクションを鳴らして『ゾンビ』を引きつけといて。私とクロマルは学校の周りで生存者がいないか呼びかけて、居たらできるだけ救助するわ」


 凛華は具体的な作戦を話す。


「分かった。でも戻ってくるときはどうする?」


 クラクションを鳴らせば『ゾンビ』を引きつけられるがそうなればトラックにゾンビが群がって戻ることが難しくなってしまう。


「戻るときは・・・そうね、確か学校の裏手に道路を少し下ったところにあるバス停まで続く階段があったはずよ。だから東はできるだけ『ゾンビ』を引きつけてからバス停に向かって」


「ラジャー!」


 東は凛華に向かって敬礼をした。それを見た凛華は一瞬笑った。


「クロマルはさっき言ったとおり私と生存者を探すわよ」


 すぐに表情を戻すと俺にも指示を出す。俺が頷くと凛華は正門の入り口に立ち、俺もその横に立つ。東はトラックに乗って俺たちが行動を開始するのを待った。


「なぁ、凛華」


「なに?」


 俺の問いかけに凛華は振り向く。


「校舎に入ったらどこから危険が迫るか分からない。だから」


「容赦せず頭を潰すんでしょ、分かってる」


 意外な返答に驚くが鉄パイプを握っている手は震えていた。口ではそう言ってもそれが間違った行いであることを無視できないでいるのだろう。


「さぁ、行きましょう!」


 凛華は学校に向かって歩き出すと俺も続いて歩いた。

年末に風邪引くとは思わなかった。


次回:生者は死者に恐怖する

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