第1話 日常は非日常へ
思いつきで書いてます。
それは突然やって来て、同時に俺たちの日常は奪われた。バス停まで続く階段を降りる前に後ろを振り返る。目の舞に広がる光景を説明するのは容易い。
そう、一言で言えば・・・、
“地獄だ”
~約1時間半前~
AM12:40
英語の授業が終わり昼休みに入って飯を食っている俺、高校3年 三澤 九朗丸は明日発売のVRFPSゲーム「リアル・ゾンビ・サバイバル 通称 R.Z.S」のことで頭がいっぱいだった。去年のゲームフェスティバルで開発途中ながら公開されたプロモーションが高い完成度だったため多方から高評価を得て2ヶ月前に発売日が決定し、いよいよ発売日が明日と迫っていた。
(「R.Z.S」のために何度も諦めていたVR機器も買ったし予約もしたし明日は休みだし楽しみだなぁ~♪)
飯を食いながらスマホでゲームの最新情報を見ていると不意に影が差してきた。何かと思い顔を上げると目の前に俺のクラスの顧問で新任教師のミカ先生が立っていた。
「三澤君、校内でのスマホの使用は禁止されているはずなんだが?」
俺は口に入っているものを飲み込むと少し間を置いてあははっと苦笑いを浮かべたがミカ先生はすぐにスマホを取り上げるとスーツの胸ポケットにしまう。
「放課後職員室に取りに来るように。もちろん部活は反省文を書いてからね」
部活の顧問にどやされると思った俺はとっさに、
「そ、それは・・・」
と、弁解しようとしたが、
「いいですね」
糸目の目を見開いて圧のかかった顔を俺に向ける。俺は項垂れながら「・・・はい」と力の無い返事をし、それを聞いたミカ先生は教室を後にした。
バシッ!
「痛ッ!」
「何やってんだよ、ク・ロ・マ・ル」
俺の後ろから背中を思いっきり叩いたこいつは間宮 東。幼稚園の頃からの幼なじみでこいつも「R.Z.S」を楽しみにしている。クロマルは俺の名前の九朗丸では呼びずらいので付けられたあだ名だ。
「いつもは来ないのに何で来たんだあいつ?」
いつも用が無いときは職員室にずっといるはずなのだか今日は珍しく出歩いてたようだ。
「さぁな、て言うか教室の最前列で堂々と携帯弄るからだろ?」
全くもってド正論を言われる。
「いつもは隠して見てるんだよ。はぁ、これで明日は『罰ゲーム』決定か」
俺の言う『罰ゲーム』とはこの学校独自の罰則で校則違反をした生徒には校則で『奉仕活動』をしなければならない。しかし俺たち生徒からは『罰ゲーム』と呼ばれている。また、校則違反を犯した次の日が土曜日の場合は土日、つまり2日連続の『罰ゲーム』となっている。
「明日は朝からゲーム三昧のはずだったのに~~!ハァ~~~」
長い溜め息を吐いて俺はまた項垂れた。
「全く何やってるんだか」
そう言って俺の机の前に立ったのは学級委員長でテストでは学年1位なうえ、生徒会長もしている桃形 凛華だった。こいつも東と同じく幼稚園の頃からの幼なじみだ。ちなみに学年2位は東で俺は58位・・・・解せぬ。
「これを気にゲームよりもちゃんと勉強したら?東や私を見習って」
凛華は前髪をかき上げ微笑みながら言う。
「フンッ、俺は勉強とゲームどちらを取ると聞かれたらゲームを取る!それが俺だ!」
そう言って俺は親指を自分の胸に突きつける。
「それ、ただ馬鹿をさらしているだけよ?」
凛華は頭に手を当てて呆れていた。
「俺も桃形と同意見」
東も首をすくめて同じく呆れていた。
「お前らひどッ!」
そう言うと2人は笑い出した。俺もそれに釣られて笑い声を上げる。
(まぁ、今日明日何かが起こるわけでもないし今度から見付からないように気を付けよう)
俺は懲りずにスマホの隠しかたを考えていた時だった。
キキィー!ドゴォォォン!
窓の外から車の急ブレーキ音と衝突音が響いてきた。東と凛華ははすぐに窓へ向かい、俺も机から立って窓に向かった。
外では正門の目の前にある電柱にトラックが突っ込んで窓から見える限り、運転席は完全に潰れ助手席にいたのであろう人物は車から少し先に投げ出されていた。
「事故?」「あそこに倒れてる人、血流してない?」「運転席の奴は完全に即死だな」「早く先生に知らせないと!」「うぇ、グロ・・・」
クラスメイトが戸惑いながら口々に呟いていく。しかし俺は別の意味で戸惑っていた。それは俺の通う鷲巣高校正門前の道路は横一直線で車もギリギリ2台通れる程の幅しかなく、またトラックが来た方向はカーブになっているので普通に考えれば事故を起こす可能性は低いはずなのだ。
「投げ出された方も死んでるな、ありゃぁ」
東はのんきにトラックから投げ出された人を見て言った。。
「とにかく救急車を呼びましょう」
そう言ってスマホを取り出した凛華の手首を俺は掴んだ。手首を掴まれて驚いている凛華を引っ張って、
「悪い、一緒に来てくれ。東も」
そう言って俺は廊下に向かった。呼ばれた東も何事かと思い後を追った。
AM12:54
廊下に出た俺は凛華の手首から手を離し、東もすぐに廊下へ出てきた。
「どうしたの急に?」
凛華はスマホをしまいながらキョトンとした顔で首を傾げる。東も首を傾げて俺を見てきた。
「あのトラックの事故、おかしくないか?」
「どういうこと(だ)?」
息ぴったりの返事にツッコミたくなるが抑えた。
「トラックが来た方向はカーブになってる。普通は減速するはずだろ?おかしいと思わないのか?」
「いや、でも飲酒運転したとかもしれねぇぞ?」
東がそれなりの答えを言う。確かにそうかもしれないが俺は何だか嫌な予感がしてならない。
「だとしたら助手席にいた奴と変わればよかったはずだ。それにこんな日の昇った昼間に事故を起こすか?夜ならともかく」
俺は2人をなんとか説得しようとした。
「でも夜は電柱の明かりで照らされてるし、しかも事故防止のためか明かりが途切れないように等間隔に設置されてるから早々事故を起こすはずがないわ。それに」
凛華はそういって俺を見ると、
「こう言う時のクロマルって嫌な予感がする時だよね?」
それを聞いた俺は驚いた。
「・・・分かってたのか?」
そう言うと凛華は首を振った。
「ううん、私も聞いてておかしいと思ったし。でも、クロマルがそう言う時って何かが起こるのは確かなのよね」
「それは本当だから否定できねぇな」
凛華と東は勝手に納得していた。
「おい、お前ら。何気にまた俺のことディスって」
「リンちゃん!」
俺のクラスメイトで凛華の親友の清水 静歌が俺の言葉を遮ってきた。
「どうしたのシズ?」
凛華も静歌の慌てように驚いていた。
「いいから来て!」
そう言って静歌は凛華を引っ張って行ってしまった。俺と東もすぐに後を追った。
「ほらアレ!」
窓まで来ると静歌は指を指して凛華は指の指す方を見た。
「え?」
凛華は気の抜けた声を上げた。
「どうした?」
俺も同じく静歌の指さす方を見ると、
「え?」
凛華と同じ言葉が自然に出てきた。それは仕方ないとしか言い様が無い。何故なら車から投げ出され血溜まりができるほどの重症を負ったはずの人が立っていたのだ。そしてその人の方へ歩いていく人が目に入った。
「あれって教員用玄関の受付やってる『コメジジイ』と教頭じゃねぇか?」
東に『コメジジイ』と呼ばれているのは苗字が米所の事務員の爺さんだ。その爺さんがその人の肩に手を掛けた次の瞬間、
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
その人は爺さんの首に噛み付き、爺さんの叫び声が3階にいる俺たちのほうまで響いてきた。
PM01:00
俺たちの平和な日常はこの瞬間、消え去ったのだった。
こっちも不定期になる可能性が高いのでご了承下さい。
次回:生きるために出来ることを




