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牢屋の奥に彼女はいた。
彼女は驚いた表情で、僕を見つめている。
どうやら、彼女にとって僕がここに来ることは予想外だったらしい。
僕は彼女に向かって微笑む。そして、彼女の頭を拾い上げ、腕の中に包んだ。
そういえば、彼女をこうやって抱きしめるのは、初めてのことだ。僕の腕の中でも、彼女は驚いたように目を見開いていた。
その全てが愛おしい。
彼女の目も唇も、手も足も。
向こうに転がっている、汚れた下腹部も。
彼女の全てが、愛おしい。
例え彼女が『赤い人間』であったとしても、僕は彼女を嫌いになることはできない。
「碌でもないのは、僕も同じだ」
『赤い人間』であるというだけで忌み嫌われた、美しい君。
欠陥品だからという理由で全てを否定された、真理を見る僕。
他人に理解されることのない僕と彼女は酷く似ている。
だから、僕は君が愛しいんだ。




