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あなたは、銃を構えた。
そして、檻の中の『赤い人間』の少女の頭に狙いを定めた。
まず、左の檻の少女を撃ち殺した。
次に、中央の檻の少女を撃ち殺した。
最後に、右の檻の少女を撃ち殺した。
大広間に『赤い人間』の少女たちの血と肉が飛び散った。
「何をしてるんだ!」
老人は酷く驚いた。
それもそのはずだ。
老人は、あなたが『赤い人間』を見分けることができないと考えていた。
だから、適当な『赤い人間』の少女をあなたの前に用意したのだ。
あなたは、老人を嘲笑った。
「もう一度聞きます。彼女はここにいるんですか?」
老人は言葉に詰まった。
そして、小さい声で「どの『赤い人間』のことだ」と呟く。
『黄色い人間』にとって、『赤い人間』は「赤」以外の何ものでもない。
老人はあなたの言う「彼女」がどの『赤い人間』であるか、分からなかった。
幼いあなたが林檎の見分けがつかなかったように。
「いいでしょう。ゲームを続けましょう。ただ――」
あなたは老人に銃口を向けた。
その場にいる誰もが、呆気に取られていて、動けなかった。
「ただ、あなたに任せていたら、銃弾が足りないかもしれません」
あなたは老人を鋭く睨みつけた。
老人は腐った牛乳のげっぷをした。
そして、顔を引きつらせた。
「お前は狂ってる」
「知っています。生まれつきです」
あなたは歪に笑って、銃口を下ろした。
拳銃を老人の足元に投げて返した。
あなたは色が見えない。
だから、人間の頭が吹き飛んでも、その血や脳の色に酔うことはなかった。
あなたは、色を知らない。
あなたの世界に色はない。
だから、あなたは何も知らない。
知ることはない。
「僕を『赤い人間』のいるところに、案内して下さい」
老人はうなずいた。
「こちらです。何色でもない、水のような少年」
先ほど、扉であなたの相手をした女が、屋敷の奥に案内した。
女があなたを連れてきたのは、『赤い人間』が買われている牢屋だ。
そこには屋敷中の『赤い人間』がいた。
『赤い人間』たちはあなたの姿を見て、口を覆った。
色を見ることができないあなたは、知らない。
あなたは、血で真っ赤に染まっていた。
あなたは、『赤い人間』が顔を背けるくらい、穢れていた。
けれど、あなたは『赤い人間』ではない。
あなたは水だ。
『赤い人間』と同じではない。
けして、あなたとは違う。
あなたは色のない、穢れた水だ。
 




