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第52話 城塞都市メルギーヌでの情報収集

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「ヴァンパイア?」


ハーディは多少声が甲高くなりながらここの女将、ドーラにオウム返しに聞いた。


ここは城塞都市メルギーヌの街中、北にある冒険者御用達の宿屋街。

その1つ「ドーラの海賊亭」にハーディとキースは宿をとっていた。

今は到着が夕方だったので、部屋を確保した上で夕食も頼んだところであった。


先ほどのやり取りがあり、この「ドーラの海賊亭」の女主人であるドーラはいたくハーディたちの事を気に入ったのであった。






カランカラン


ハーディは「ドーラの海賊亭」と看板の掲げられた酒場兼宿屋の入り口を開けた。


「お前さん、お客かい? メシか?泊りか?」


白い服装の従業員らしきひょろ長ノッポが問いかけてくる。


「両方で頼む」


「ママ~!お客さんだよ!」


「ルーイや!仕事中は女将と呼びなっ!」


出てきたのはピンクがかったボリュームのある髪を二本の太い三つ編みにした鼻の長いおばさんであった。出て来るなりカウンターに入り、ハーディたちを見る。


「おや、冒険者かい。二人だね?」


「ああ、宿泊を頼む。とりあえず7泊で。食事がつけられれば食事もお願いしたい」


乱雑にカウンターの上に積みあがっていた道具を左手一閃!ガシャガシャとカウンター内側へ叩き落すと、帳面と何やら削り出した球がたくさん並んでいる道具を取り出す。


「こいつはね、東の遠い国で生まれた計算機だよ」


そう言って木の球をパチパチと弾くママと呼ばれた女将。


「朝、夕のメシ付き、夕食時は木のジョッキにエール1杯サービスをつけて、7泊するなら1人金貨5枚と銀貨6枚だね」


にやりと笑いながらハーディを見る女将。

懐の皮財布から金貨15枚をつかみ出す。


「2人ともそれで頼む。釣りはいい。滞在が長くなれば追加も払う。後、夕食時はエールのお替りを1杯追加して2杯にしてもらいたい」


きっぷ良く金貨を積み上げるハーディに目を丸くする女将。

銀貨10枚が金貨1枚である。

女将の言う通り、1人当たりの7泊は金貨5枚と銀貨6枚。

それを2人で金貨15枚も払うという。

それこそ金貨3枚と銀貨8枚も余分に払うと言っているのだ。

女将はいきなり笑い出す。


「ガハハハ!こいつは気前のいい兄ちゃんだ!きっぷのいい男は嫌いじゃないよ!」


獰猛な笑みを浮かべながら金貨を回収する女将。


「あたしはこの「ドーラの海賊亭」を切り盛りする女将のドーラだ。兄ちゃんたち名前は?」


「ハーディだ」

「俺はキース」


「ハーディにキース・・・と。宿帳には記録しといたからね。コイツが部屋のカギだ。汚れモンの洗濯を希望するなら一日分で銅貨5枚だよ。だけど弾んでもらってるからね、2日に一度ならサービスしとくよ。桶に汚れモノを放り込んでカウンターに出しな」


「わかった」


ハーディとキースはそれぞれキーを受け取ると一度宿泊する自分の部屋に向かう。

最も、ハーディは最低限のショルダーバッグだけで、キースも小型の背負い袋を持っているくらいだった。部屋に置いてカギを閉めて戻るが、実際カバンや背負い袋の中はそれほど重要なものや金銭は入れていない。宿屋の部屋に鍵がかかったといったところで、その防犯力などあって無きが如しなのである。この世界には<盗賊(シーフ)>とれっきとした職業があるのである。通常<盗賊(シーフ)>だからと言って宿屋の荷物を狙って忍び込むような輩はいないと思われるが、逆に言えばいないとも言えないという事であり、とどのつまり、防犯は自己責任でしかないということである。




それにしても、なぜこの宿に決めたかと言えば、道すがら小物を買ったり屋台で買い食いしたりしながらこの城塞都市メルギーヌの情報を集めていた時におすすめの宿として名前が何度も挙がったからだった。


特に多少割高でも立地条件が良く、宿自体はボロい割に造りがしっかりしていて、1階が酒場のため朝晩の食事にも困らない。また酒もメシも水準以上のうまさで、地元でも人気の食事処兼宿屋らしい。そして2人の気持ちをぐっと引き寄せたのが「女将の情報通」という話だった。近所のもめごとや男女の色恋から始まり、ダンジョンのお宝や近郊の魔物情報、果ては嘘かホントか貴族の内情や近隣の町や諸国の情報まであるという噂まであった。

この「ドーラの海賊亭」の女将であるドーラという人物にすごく興味を惹かれてこの宿に決めたのであった。



2人はこの城塞都市メルギーヌの情報を集めていた。城塞都市メルギーヌはその街の北側にいくつものダンジョンの入り口が広がっており、多くの冒険者たちが根城にしている街でもあった。


この町の城壁は街の中にダンジョンがあり、モンスターを外へ逃がさないように囲われているわけではなく、単純に多くのダンジョンから魔物があふれた際に町が持ちこたえられるように城壁が組まれているとの事だった。


この町の北側には多くの冒険者たちが定宿とする宿屋街があり、必然的にごみごみとした下町風な作りになっているらしい。

宿屋街の他、安くて量の多い食堂や、飲み屋、武器防具の店や鍛冶屋、雑貨屋なども多く店を構えている。冒険者ギルトがあるのは街の中央地区になるが、それでも若干北寄りになっている。


逆に南側は城塞都市メルギーヌを運営する貴族たちやその関係者が多く住んでおり、貴族街と呼ばれている。専用の警備兵も配置されており、冒険者や一般人、旅人などが入り込むことはあまりいい顔をされない。冒険者への依頼もあったりするため、禁止されているわけではないが、用もなく歩いていると巡回の警備兵に呼び止められた挙句、早めの地区外への退去を求められるようになるらしい。


そんな城塞都市メルギーヌにしばらく腰を落ち着け、この先の旅路の方向性を確認しつつ軍資金を稼ごうではないか・・・そうハーディとキースは考えていたのである。そしてこの2人が定宿に「情報通」の噂高いドーラの海賊亭を選ぶことは必然的なことでもあった。






「そう、ヴァンパイアさ!」


2杯目のエールを木のジョッキに並々次いで持ってきたドーラは、ハーディとキースの前にドンッ!と置くと、自分もジョッキでエールを煽った。


「この城塞都市メルギーヌの北西の山奥にヴァンパイアの住む村があるってもっぱらの噂なんだよ。なんでもヴァンパイアだから結構なお宝を貯め込んでるって話でね!」


ドーラの獰猛な笑みに押され気味のハーディであったが、まずはその情報に耳を傾ける。


「ヴァンパイアって・・・ヤバイのか?」


シンプルにキースが疑問を投げる。


「そりゃあ、ヴァンパイアってーくらいなんだから、ヤバイんだろうさ。ヤバイからこそお宝を貯め込んでるって話につながるんだろうけどねぇ」


ドーラが嬉しそうに話しながらジョッキのエールを飲み干す。


「あたしが後10年若かったら自分で槍担いでヴァンパイアのお宝をゲットしに行くんだがねぇ」


「バーサン冒険者だったのか!?」


キースが信じられないといった表情でドーラを見た。

ハーディも信じられないといった表情でキースを見る。


「誰がバーサンなんだい! あたしゃまだ50だよ! それとあたしのことは女将と呼びなっ!」


ドンッ!と空になった木のジョッキを机に叩きつけながらまくしたてるドーラ。

それみろといった表情でキースをジトッと睨むハーディ。女性はいくつになっても年齢を気にするものだと『竜の叡智』に溜め込んだ知識から理解していた。


「ママ~、そいつらの夕飯、もう出していいかい?」


「シャールや! 仕事中は女将と呼びなっ! メシは食うかい?」


ハーディたちの方を見て確認するドーラ。


「よろしく頼む」


2杯目のエールを飲み干し、そのまま食事に移行する。

出てきた夕食はメシとおかずがてんこ盛りだった。


「こりゃご馳走だな」


キースが手をこすり合わせながら夕食に挑みかかる。

ドーラからはヴァンパイアの話以外にも北へ出る交易馬車の護衛の話や、近隣に最近出没する気をつけるべきモンスターなどの話も聞けた。全て鵜呑みにするわけにはいかないが、有益な情報が多かった。

ハーディも夕食にありつきながら、ドーラから聞いた話を明日冒険者ギルドに行って裏を取ろうと考えるのだった。


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