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閑話2 カレン・スターリング

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


 アタイはカレン・スターリング。物心ついた時から、今は亡くなっちまったジーサマと二人で生きてきた。ジーサマはどこかの国の騎士団長だったらしく、アタイに騎士道精神と騎士としての剣技を叩き込んでくれた。


でもこのご時世、騎士道精神まっしぐらでは、まともにゃ生きていけないね。

ジーサマはまじめだったからね。子供のころはホント、ビンボーだったよ。

どこかの村の護衛で何年かいられた時もあったけど基本は旅をしながら商隊の護衛が仕事だった。だからジーサマが亡くなったときはホントにまいったね。


そんな時イーナ村に向かって旅をしていたら、山賊まがいの連中に囲まれたので叩きのめしてやったら、みんなして姐さん姐さんって懐いちまった。


旅芸人一座じゃあるまいし、みんなを連れて旅の続きなんてできやしない。中には小さな地乳飲み子を抱えている女もいるじゃないか。どうしたもんか途方に暮れたね。自分一人の身の振り方も満足に行きゃしないってのにさ。


そのうち、盗賊たちの頭的な役割だったザックってやつが、アタイにいろいろ提案してきた。当然盗賊なんて悪党になる気はさらさらない。さすがに死んだジーサマに顔向けできやしないね。人殺しなんてまっぴらごめんだし。そこでザックは一騎打ちで買ったら品物を分けてもらおうと言い出した。それもよく考えりゃめちゃくちゃなこと言ってる気がするけど、あたいも腕試ししたいってのもあって、それならって返事しちゃったんだよね。


アタイの魅力もあってか(自分で言っちゃってるけどさ)、何度かはうまくいったよ。

負けたらアタイに奴隷になれ、とか、妾になれとか、結構好き放題条件つけて来た金持ちそうな商人が何人かいたけど、そういった時は逆においしかったね。何たって向こうも承知で勝負に来てくれるわけだし。商品をごっそり頂いても罪悪感無しで気持ちがいいってもんだね。負けたら奴隷にしてアタイをヒーヒー言わせてやるなんて卑猥な事を言っていた商人がいたっけ。負けたくせ品物を渡さずに護衛全員にあたいを殺せって命令しやがった。その時は一斉にかかってきた護衛どもを、まとめてぶっ飛ばして商品を全部頂いた上に空の荷馬車にぶっ飛ばした護衛たちを山積みにしてやったね。あの時の商人の絶望した顔ったらなかったね!


でも、アタイもこんな事ずっと続けられるわけも無いってわかってはいたんだ。

そんな時だったよ。


「我が名はハーディ!御山に住む麗しの姫君に一騎打ちを所望したい!返答はいかに!!」


(え―――――――!! 王子様キタ―――――――!!)


燃えるような真紅の髪に、透き通るほどの紺碧の瞳。バリバリ勇者っぽい!

しかもちょーイケメン! まして明らかにアタイがスレスレの「仕事」をしている事を知って声をかけてきている。麗しの姫君とか言われちゃったし。


(こりゃ退治してもらうしかないね!)


思わずふにゃ!っと音がしそうなほど破顔して出ていこうとしたアタイを、ザックのヤツが止める。


「姐さん!あきらかに罠ですぜ!」


知ってるってーの!なんたってアタイご指名なんだから。

間違いなくアタイより上手の実力者だね。罠でも何でもない。一人でアタイを含む全員を相手にできるという自信と実力があっての呼び出しだ。

それでも、ハーディと名乗った男の瞳を見ていると、一片の不安も感じない。

アタイを相手にした後、どうするつもりなんだろう?


(も、もしかして・・・俺に負けたら嫁になれ!とかっっっ)


両手で頬を抑えて真っ赤になって悶えるアタイをザックが残念な子を見つめるような目で見ていた。


「姐さん、マジでどうするつもりですかい?」


ザックがため息交じりに問いかける。


「出るさ。お前たちは隠れていろ。万一アタイが打ち取られた場合はイーナ村へ難民を装って向かいな」


言ってる内容は悲壮感漂うかもしれないけど、アタイの顔は笑顔のままさ。楽しみで仕方ない、そんな雰囲気がザックにも伝わる。


「ま、姐さんがどうにかなるなんて、想像出来やしませんがね・・・」


ザックが溜息をつきながら応じた。


「イーナ村なら、難民を装えば村で保護してもらえるだろうさ」


「姐さん、ご武運を」


ザックの奴は苦笑しながらもアタイを見送ってくれた。

アタイは大剣を鞘から引き抜かず、肩に背負ったまま、赤毛の王子様の前まで歩いて行った。


「アタイに何か用かい?」


自然と笑みがこぼれる。そばで見ると一段とイイ男!


「言ったはずだ。一騎打ちを所望とな。あんたの名を聞いてもいいか?」


ヤバ!王子様に名前聞かれちゃった!


「何だ、ナンパかい」


緊張しすぎて軽口たたいちゃったよ~、き、嫌われないかなぁ?


「一騎打ちと言ったであろう。名を名乗るのは騎士道精神というやつではないのか?」


あ、ちょっと顔を顰めちゃった。


「なんでアタイが騎士道精神なんて持ち合わせてるってわかるんだい?」


あ、騎士道精神持ち合わせてるって肯定しちゃった。どうもこの王子様テクニシャンみたい♡


「商人の護衛相手とはいえ、一騎打ちを仕掛けてくるなんて、騎士かバカ貴族以外にはいないさ」


王子様はさわやかにほほ笑む。


「なるほどね。一騎打ちのやり口が騎士を想像させるってかい?」


「ああ、商人から聞いた話だと、一騎打ち後はそれなりに理性のある対応をしていたようだからな。バカな貴族ではないと踏んだわけさ。まあなんだ、だからと言って褒められたやり方ではないと思うがな」


「なんつーか、結構成り行き?みたいな。アタイあんまり頭良くないし、でも何人も食べさせなきゃいけないしね」


アタイは左手で頭をバリバリと掻き毟る。

頭使う事は苦手なんだよね。


「群れの頭ってのはそれなりに苦労するものさ。それよりまだあんたの名前を聞いてないな」


「アタイはカレン、カレン・スターリング。もちろんそっちの名前も教えてもらえるんだろうね?」


アタイはドキドキしてるのをバレないように、努めて余裕のあるフリをして聞いた。


「俺はハーディ。ハーディ・デュランダル。旅の冒険者だ」


燃えるような赤毛に透き通るような紺碧の瞳。どっからどう見ても噂に聞く勇者だね。この王子様♡ 旅の冒険者に出せるような雰囲気じゃないね。


(ハーディ、ハーディ、ハーディ・デュランダル・・・)


アタイは王子様の名前を絶対に忘れるもんかと呪文のようにつぶやいて記憶に刷り込んだ。


「いいぜ。ハーディ・デュランダル! 一騎打ちの申し込み、受けてやるぜ!」


アタイは鞘から大剣を抜いて、改めて肩に背負った。決闘の条件とか、全部ぶっ飛んじゃってる。早く始めたい。早くアタイを見てほしい。どうせ勝てるわけないんだもん。

でも全力で行く!「これがアタイだ!」って知ってほしいから。


「来い!カレン・スターリング!」


ヤバ!フルネーム全力で呼ばれた!正直蕩けそうだね。

ハーディの輝くような笑顔が、何かアタイに新しい道を示してくれているような気さえする。

アタイの心があんまり持ちそうにないね。アタイの騎士レベル最大の技で行く!


「行くぜ! 剣技!<神速の唐立(しんそくのからたち)>」


超高速の踏み込みから、一気に詰めて頭を狙って振り下ろす必殺の一撃。スキル補正により、振り上げた剣は相手に認識しにくくなる。まあ躱されればその時だね。




だが―――――


ギャリィ!ガッキィィィィィィィィン!!


一瞬―――――


ギャリィ! と音がした。頭を狙ったアタイのバスタードソードの一撃を持っている大剣の腹で払うように受け、その切っ先をずらされた。てっきりそのまま地面をたたきつけるように振り下ろすことになったアタイのスキをつかれるのだろうと思ったのだが―――――


ガッキィィィィィィィィン!!


ずらされて地面方向へ力が抜けかかった瞬間、ハーディの持つ大剣が滑り、アタイのバスタード・ソードの鍔にぶつかった。そしてその大剣がそこにまるで壁のように元からあるかの如く、すさまじい衝撃がアタイを襲う。


「ぐあっ!」


アタイはバスタード・ソードの柄を衝撃で離してしまった。

クルクルと回転したまま飛んで行ったバスタード・ソードが、地面に突き刺さった。

アタイは信じられないような目で自分の手のひらを見つめた。

自分の最大の剣技を躱されるではなく、弾き返された。もう、ぐうの音も出ない。


「・・・負け・・・だね、アタイの」


「そうだな」


構えた大剣を降ろしながらハーディは言った。


「・・・あ、決闘の条件決めてなかったね」


アタイは、さもそういえば~みたいな雰囲気で苦笑気味に話しかけた。


「・・・そうだな」


ハーディも多少苦笑しながら、先ほどとは多少違うイントネーションで同じセリフを吐いた。


「で、何が望みだい? 負けたんだし、アタイはあんたの自由さ。体でも所望かい?」


自分で言ってて、ドキドキもんだよ!顔色が変わらないように必死に平常心を装う。

本当に求められたらどーしよ?うれしいけど、会ってその日はちょっと不安かな。

でも、負けたんだし、我儘言えないか。言えないよね、うん。


「そうだな」


3度目の「そうだな」。でも意味が桁違いだよ!ホントーにアタイ

、お持ち帰りされちゃうの! せ、せめて心の準備をさせておくれでないかい?

顔を真っ赤にして両手で自分の胸を抱えて、自分自身を抱きしめるようにクネッてしまう。それを見たハーディが、


「・・・あ~、体を所望するって言ってもなんだか想像しているようなことではないと思うぞ?」


と、説明してくれた。ん?どういうこと?


そこへ、


「姐さん!大丈夫ですかい?」


「てめえ、姐さんに手を出しちゃただじゃおかねーぞ!」


わらわらと手に武器を持った男たちが山から下りてきた。


「お姉ちゃんにひどいことしないで!」


「お姉ちゃんはいい人なんだよ!」


その後ろから子供たちが2人出てきて、それぞれに叫ぶ。


「こら!出て行っちゃいけません!」


母親や保護者役割の者か、女たちも続いて出てきちゃった。


「みんなやめろ!」


アタイは大声を出した。


「ですが・・・」


ザックが渋るが、


「ザック、みんなをまとめろ。アタイは負けたんだ。この男に従う必要がある」


「そんなっ!」


それぞれが口々に文句や不安を訴えるが、


「あ~、そんなに心配しなくていいと思うぞ。俺はカレンに仕事を紹介しに来たんだ。なんなら部下の連中もうまくいけば仕事にありつけるかもしれんぞ?」


ハーディはこの場の誰もが想像していなかった事を話し始める。


「仕事・・・だって!?」


どうやらあたいの王子様は斜め上を行く凄腕の人だったみたい。


「実はこの先のイーナ村で先日ハウンドドッグの襲撃があった。村を囲う柵も完全ではない。たまたま俺たちが村に着いた時だったんで、退治出来たんだが」


どれくらいの群れかわからないけど、2人でハウンドドッグの集団を仕留めるなんて、やっぱり王子様は腕利きだね!


「まあ、一言でいえば村の護衛だな。自警団を賄えるほど若いやつらがいないのもあって、村の防衛が不安な状態だ。そんなわけで、村に住まわせてもらう代わりに村の護衛を仕事にするって話にすれば、村への移住をすんなり認めてもらえると思うぞ。俺からの手紙も一筆つけてやろう。役立つかはわからんがな」


キャーッ! さっすが王子様! 村長に顔が利くんだね!


「ありがとっ!」


そう言って王子様に抱きついちゃった!

目を白黒させて驚いてる、ちょっとカワイイかも!


それからアタイたちは王子様の乗って来た馬車をもらうことになった。

なんでもイーナ村の村長さんから借りて来たんだって。

だからこれに乗ってイーナ村まで行って、ついでに村長に返しておいて、だって。


完全にコレ、アタイたち捕まえてイーナ村まで行かせる気だったって事だよね?

王子様凄すぎ!


馬車の荷台に子供たちや女性を優先して乗せる。必要な荷物も積み込む。

そして、一番大事な王子様の直筆お手紙を受け取る。


「ほら」


ちょっとぶっきらぼうに手紙を差し出してくれる。王子様。


「ねえハーディ? 腕のいい剣士いらない? いろいろ役に立つよ? 戦闘でも夜でも・・・」


抱きついてちょっと耳元で囁いちゃう! 大胆すぎるかなぁ?


「お前は子分たちの生活をとりあえず安定させる役目があるだろうが」


ジトッと睨まれちゃう。あーんハーディのいけずぅ!


「う~、わかったよう・・・。でも絶対また会えるよね?」


「そりゃ会えるだろうさ。東に行ったら、また戻ってくるつもりだしな」


「ホントッ!」


全身で喜びを表しちゃう。ちょっとハシタナイかなぁ?


「え、帰りは中央街道じゃないの?」


なぬ!? なんだこの金髪ひょろひょろは!


「なんだお前!アタイとハーディの恋路を邪魔する気か!?」


思わず胸倉を掴んじゃう。だってしょうがないよね。アタイとハーディの仲を邪魔しようなんてさ。


「うごごっ!し、死ぬっ!」




すったもんだしたけど、きっとまたハーディと会えると信じてる。

ホントはついて行きたいけど、ハーディたちが、なんだか大変な目的で旅を続けているってわかるから。

だから、今はガマンの時だ!

いつかまた会えた時に胸を張って今日のお礼が言える様に、頑張ろっと!

それまで、またねハーディ! アタイの王子様!


今後とも「ドラリバ」応援よろしくお願いします!

よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。

大変励みになります(^0^)

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よろしければぜひご一読頂けましたら幸いです。

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