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第50話 イーナ村の酒宴と女山賊の情報

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


-その夜-


始まった宴に先立ち、長老が年齢に似合わぬ良く通る大きな声で話し始めた。


「皆の者!今日はハウンド・ドッグが村を襲撃するという事件が起こったが、たまたま村を訪れてくれた勇者ハーディ、勇者キースによりすべてのハウンド・ドッグが倒され、村の危機を救ってくれた!おかげで数名の怪我人のみで死者も出ず、村の外の畑に出ていた子供たちも傷一つ負うことなく無事だった!」


村長がいったん声を区切ると、村人たちから大きな拍手と歓声が上がる。


村の中央広場、村長の横には用意された敷物に座ったハーディとキースがいた。

低めのテーブルが用意され、豪勢な料理がたくさん並び、酒も用意されている。


(俺まで勇者になっちまったじゃねーか!)


キースは左隣に座るハーディに口元を右手で隠しながら小声で愚痴った。


(お前だって勇者といえば勇者だろうが)


(こんなことなら、エロい顔して助けたお礼に一番きれいな村娘を差し出せとか言っておけば勇者とか言われなくて済んだんだ)


(言えるかっっっ!)


「どうしましたかな?」


村長が怪訝な顔でこちらを見たので、ハーディは慌てて顔の前で手をふりながら、


「いえ、別に」


と返した。問題なかったようだと村長は続けた。


「しかも、倒したハウンド・ドッグをすべて村へ寄付してくれた上に、村を救ってくれたお礼に用意した報酬も受け取らず、村を救うことがあたかも当たり前のように振る舞うこの姿。まさしく勇者と呼ぶにふさわしい!」


村長の上がりまくりのテンションに若干引き気味のハーディではあったが、村人たちは完全にハーディが勇者であると信じて疑わなかった。この自分が生きるだけでも精一杯な世界で、村という規模を救い、報酬がいらないなどという人間が果たしているだろうか?

まさしく「勇者」という存在以外にありえないのではないか、村人たちにそう結論付けさせていた。




宴は進み、多くの村人がハーディたちにお礼を述べに来た。

あまりに多くの人々がハーディたちに声をかけ握手を求め、酒を注ぎに来たので、さすがに疲れて来た時だった。


「・・・あの、王子様」


「はいっ?」


ハーディは自分の斜め後ろからかけられた王子様という言葉に理解が追い付かず、声が裏返った。

見れば、ハーディが危機一髪のところを救ったミーナという少女であった。


「王子さまは、やっぱり国に帰るとお姫様が待っていたりするのですか?」


ハーディはもはや何から訂正していいかわからなかった。

少女の話す内容に一つも正解がない。


「ええと・・・、俺は王子ではないぞ? 国も持っておらんし、姫もいないし」


「ええっ!それでは婚約者のお姫様とか、決まっていらっしゃらないのですか?」


「・・・うむ。そういうものはいない。」


ミーナには姫がいないというところに全力で引っかかっており、王子でない部分は聞こえていないようだ。だが、ハーディは瞬間守れなかったクラリスを思い出し、表情に影が差した。キースはそんなハーディの表情に気づいていた。しかしハーディはクラリスのことを誰にも話していなかったため、なぜそんな表情になったのか伺い知ることはできなかった。ただ、きっとその根底に隠しているものがハーディを無償でも「つらく苦しんでいる人々を救いたい、守りたい」という衝動に駆り立てているのではないか、と考えていた。

いつか、こうやって酒を酌み交わしながら、そんなハーディの心の奥底にしまわれている思いを語ってくれる日が来ればいい・・・、そう思いながらキースは盃をグイッと空けた。




「勇者様は明日には出立してしまわれるのですかな?」


村長がハーディに声をかけてきた。


「うむ。我らも目的があって旅をしている。ゆえにあまり同じ場所に長く留まることはできない」


「残念です。もっとご逗留いただければ歓待できましたのですが・・・」


心底残念、という感じで村長はため息をついた。


「村長殿。村の柵は全域を覆っていない。村の警備に不安があるのではないか?」


ハーディの指摘に村長は表情を暗くする。


「若い男手が不足しており、農作業もありますので警備専門で従事する人間もおらず・・・」


「そうか・・・」


ハーディは考えるように遠くを見つめたが、


「まあ、すぐ改善できるものでもないしな。なるべく柵だけは早めに村を完全に覆うよう対応する方がよかろう」


「はい、アドバイスありがとうございます」


ハーディのアドバイスに素直に村長は頭を下げた。


宴も終わり宿に向かって歩き出したハーディたちに声をかけるものがいた。


「・・・勇者様」


ハーディが見ると、旅の商人のようであった。


「勇者様は城塞都市メルギーヌの方へ向かわれるので?」


「そうだが」


もしかして、商隊と同じ方向だから護衛の依頼でも受けられるかと少し期待したキースだったが、商人の話は逆であった。


「我々は城塞都市メルギーヌから来たのですが・・・」


(逆じゃん!)


キースは何の話だよ、と思いながら無表情のハーディと商人の顔を交互に見た。


「実は、イーナの村に来る前に山越えの峠道を馬車で移動しておりましたところ、女山賊が現れたのです」


「女山賊?」


キースが興味出たとばかり、前のめりに会話に割り込んだ。


「はい、いきなり襲い掛かってくるようなことはなく、道の真ん中に女山賊が一人で立っており、こちらの馬車の行く手をさえぎったのです。そうして、「おい、力比べしようじゃないか、手合わせ願おうか!」と声をかけてきたのです」


「そんなの断ればいいんじゃない?」


キースは至極まっとうなことを言ったのだが、


「それが、「断るとは腰抜けか!」とか「根性なしだ!」とかさんざんに暴言を吐かれ、しまいに護衛にも自信がないなら護衛の仕事なんか引き受けないほうがいい」とかいう始末で、その挑発に乗ってしまった護衛の一人が一騎打ちに応じてしまったのです」


「で、どうなったのだ?」


ハーディはある程度どうなったか結果が想像できたのだが、説明を促した。

女山賊を倒しているなら、今こうやってハーディに声をかけてこないだろう。


「一騎打ちの前に、「あたいが買ったら荷物の半分をもらい受ける」なんて言うものですから、とんでもない、承服できないというと、「じゃあ四分の1」とか「ええいっ!せこい男だ、じゃあ大負けに負けて5分の1で手を打とう」とかいう始末。よく考えれば無理難題の力比べを強引に仕掛けておきながら、なんだか最後は向こうが譲歩してやった、みたいな雰囲気になってしまいまして・・・」


「それはまた・・・」


キースも微妙な苦笑でつぶやいた。


「結局護衛の剣士はあっという間にたたき伏せられ、別の護衛3名も同時に切りかかったのですが、こちらも返り討ちで・・・」


「殺されたのか?」


「いえ、全員叩きのめされてすぐは動けなかったのですが、大けがではなかったのです」


(相当な腕だな・・・)


ただ殺すより敵を殺さずに無力化する方が圧倒的に難しい。しかも、すぐ動けないダメージを与えておきながら、大けがでなかったわけだ。かなりの実力差があったと考えられる。しかも護衛の仕事を引き受けるレベルの冒険者に対して、である。かなりの実力者だと思われた。


「しかも、女山賊が護衛を倒した後、「おまえたち、約束の荷物を回収しな!」と声をかけると、15,6人くらいの山賊の仲間が出てきたのです。そして荷物を奪っていってしまいました」


「えらく狡猾だなー」


キースの一言にハーディも唸った。最初から山賊全員で囲っていれば護衛たちも相当に警戒するはずだ。ところが女山賊1名だけで立ちはだかり、護衛と勝負した上で荷物の権利を主張する。たとえ商人たちが護衛を見捨てて馬車で強行突破などを考えていたとしても、最後に仲間が囲うように仕組まれているのだ。


「それにしても、5分の1の商品を選ぶのにすったもんだしましてね。「これがいい」と高いものを選ぶので、それは5分の1を超えてしまう!というとじゃあコッチはどうだ、としつこくて」


「・・・なんだか随分フレンドリーな山賊だねぇ」


キースの苦笑に商人も、


「そうなんですよ!商品を持っていかれたのですから、損害が発生しているわけですが、山賊に護衛を殺されたわけでもなく、商品選定の時もあまり無茶を通さず、正直、これくらいで済んでよかったと思えるくらいなのです・・・」


「大体、一騎打ちに臨んだ時点で山賊という枠から外れちゃってるもんね。お互い承知の上で勝負したんでしょってことになれば、その女山賊を罰する法すらない。いわゆる決闘になり、それに類する条件はすべて決闘の結果によって決まる。決闘前に女山賊が「勝ったら荷物の5分の1をもらう」という条件で受けてしまえば、それを覆すことはできないね」


「ちなみに護衛が勝った時の条件は?」


キースは納得してしまったようだが、ハーディはそういえば説明がなかったなと思いながら商人に聞いた。


「そういえば・・・。護衛が挑発に乗ってしまい、なし崩し的に一騎打ちになってしまったので・・・」


「マジか!」


キースは頭に手を当てて唸った。ハーディも同じ気持ちだった。商隊の護衛を煽るだけ煽って、なし崩し的に一騎打ちに持ち込み、自分が負けた時の条件さえ決めさせていない。

正直、ただの山賊であるとは思えなかった。ハーディはその女山賊に敬意さえ払いたくなった。


「面白い情報ではあるな。他に気づいたことは?」


ハーディの言葉に商人は首をかしげながら思い出すようにつぶやいた。


「そういえば、女山賊の仲間として出てきた連中には半分まではいませんでしたが女がいました。それから子供も確か2人くらいいましたね」


「・・・・・?」


キースがどういうことなんだ?とハーディに視線を向けてきた。

ハーディはキースに答えず、何かを考える様に視線を彷徨わせる。


「村長、一つ協力頂けないだろうか? もしうまくいけば、この村の守備強化につながるかも知れない」


ハーディは思い立ったように村長の所まで行くと、ニヤリと何かをたくらんだ笑顔で話しかけた。


「ホホッ!勇者ハーディ様の申し出を断るなどという選択肢は私にはありませんぞ?」


村長もニヤリと笑い返した。


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