第48話 山間の街道にある村にて
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2019/2/12 なぜか、「まさスラ」175話がこちらに継続反映されておりましたので削除いたしました。自分の操作を間違えた覚えはないのですが・・・? ご迷惑をお掛け致しました。
「ねーねぇ、綺麗なお姉さーん、ギルドに討伐報告が終わったら一緒にお茶でもどーお?」
ここは街道沿いの宿場町。
比較的人口も多く、店も多い中規模の町だった。
ハーディたちはあれからいくつもの村や町を経由して東へ向かっていた。
途中でゴブリンを狩ってはギルドに討伐証明を出して報告し、小銭を稼ぎながら。
「あら? 随分と可愛い金髪のボーヤねぇ、でも、ごめんなさいね?年下君はちょっとねぇ」
妖艶な雰囲気を醸し出すグラマラスな魔導士風のお姉さんは金髪ボーヤ・・・キースを見ながら言った。
ここ二ヶ月ほど、旅をしながらキースの話をずっと聞いて来たハーディ。
自分は新しく生まれ変わって生きて行くっ!と力強く宣言したのは良いのだが、
どうもキースは女性方面へのアタックに元気になってしまったらしい。
最初会った時のコミュ症は何だったのかと思わないでもないハーディである。
それでも、最初の内は落ち込まれるよりはいいかと好きにさせていたハーディだが、かなりチャラい感じになって来た今、そろそろカツでも入れなければならないかと心配になって来ている。
「あ、俺が年下で幼く見えるなら、アイツも同席させるよ? あの赤髪の剣士。アレ、年の割にしっかり者でおっさん臭いからきっと気に入るかもよ?」
おいおいキースよ、人を勝手に巻き込むなとギルドのカウンターで討伐報告中のハーディは心の中で文句を言う。
だいたい、キースも故郷の村を出てから冒険者ギルドで登録を行ったFランク冒険者なのだ。最低限の仕事をこなす必要があり、ハーディはキースとゴブリンの討伐証明を半分に分けてそれぞれ個人で報告していた。キースが一人での対応に慣れれば、パーティメンバー登録してパーティとしての処理を行ってもいいとは思っていたのだが、一人で何もできないままメンバーとして楽をさせておくのも本人のためにならないとハーディは考えていた。
「おいボーズ、俺の女に何か用なのか?」
「はい?」
見れば筋骨隆々の禿げたオッサンがキースの肩に手を置いていた。
「あらアンタ。思ったより早かったわね?ギルドマスターに報告は済んだの?」
「ああ、依頼完了だ」
ギルドマスターに直接完了報告しているところを見ると、かなり実力のある冒険者なのだろう。
「よっしゃ、ボース!俺がオ・ハ・ナ・シしてやろう!」
そう言ってキースの首根っこを捕まえてギルドの訓練場に引きずって行く。
「おおおっ!? ちょ、ちょっと待って!? ハーディ助けろ~~~~!」
ギルドのカウンターからチラッと横目でキースを見たハーディは手を合わせて合掌する。
「薄情者~~~~~!!」
キースの叫び声は訓練場に消えて行った。
ハーディとキースの旅は続く。
「なあ、ハーディ」
キースは少し先を歩く、ハーディに声をかけた。
「何だ?」
「何でイーナ村を経由するルートを選んだんだ?東の大都市、城塞都市メルギーヌへ行くなら、ライム村を通る中央街道の方が早いだろう」
キースの疑問は最もだった。目的地に着くだけなら、中央街道の方が間違いなく早いだろう。
中央街道は道幅も広く比較的整備されている。馬車の往来も多い。それに比べてイーナ村経由のルートは山岳ルートといってもよいくらいのアップダウンがあり、場所によっては馬車のすれ違いも厳しいほど狭くなる道もあり、大手商人ならばまず選ばない。
「人が多い中央街道よりは、山岳ルートの方がおもしろそうだし、メシの種にもありつけるかも知れないだろ? それにトレーニングにもなるさ。」
ハーディのあまりにテキトーな理由に思わずキースは苦笑した。
勇者などといっても、国が資金を融通してくれるわけではない。冒険者として身を立てねばならないのだから、そこいらの剣士となんら変わりがない。帝国宮廷魔術師の御触れと生まれた地元での勇者扱い程度である。はっきりって、勇者と言われて得をしていることなど、皆無である。帝国宮廷魔術師の御触れは髪と目の色と生まれた時期だけである。
至るところで自称勇者が溢れている可能性すらあった。
ただ、現在魔族の侵攻もなく、人々は危機感を覚えてはいない。そのため、勇者を渇望するような事態に至っていない。そのため、自分で勇者と名乗っても白い目で見られるのがオチという話すらある。もともとハーディも目立つのを好まないこともあり、自らを勇者と名乗るようなことはなかった。というか、ハーディは自分が勇者だとは思っていない。
それはそうだ、自分は皇帝竜ハーデスの生まれ変わりだと知っているのだから。
「小さな商隊の護衛でも狙おうってか?」
キースはせこい話だ、と肩をすぼめて手のひらを上に向けた。
「仕方あるまい。ゴブリンの討伐報酬では満足に宿にも宿泊できんからな。かといってデカい魔獣を狩って持って行けば目立つし、時間もかかるからな。面倒な事は避けた方がいい」
ハーディの説明にキースは笑みを浮かべて答えた。キースはこの不器用で何となく尊大なしゃべり方をするくせになぜか偉ぶっていないようなハーディが好きだった。
イーナ村までは、すれ違う人もある程度いたが、農産物を運んでいる小さな商隊くらいで、特に何事もなく到着した。
「稼げなかったなぁ~」
当てが外れたか?といった感じでキースは問いかけてきた。
「まあ、イーナ村までは平たんな道で森林もそれほど深くない。どちらかといえばイーナ村から城塞都市メルギーヌまでの方が山岳ルートになり、狼などの野生動物からの襲撃の可能性も高くなるだろう。」
「なるほどね。考えてるね~」
キースの軽口に
「お前よりはな」
とまじめな顔でハーディは軽口を返しながら、イーナ村に入っていった。
-イーナ村―
人口300人程度、特質する特産物もなく、農業とわずかな牧畜をメインとする典型的な農村である。王都からは大きく離れ、位置的にいえば西から向かう旅人が城塞都市「メルギーヌ」や大森林三王国へ向かう街道の1つである。小さいながらも旅人のための宿屋や酒場などはあるものの、冒険者ギルド支部はなく、この村に長期滞在するものはほとんどいない。
街道としても、より直線的なライム村を経由する街道を使う旅人の方が圧倒的に多い。
そのため、イーナ村を訪れる旅人も相対的に少なくなる。
「あんでまぁ。冒険者の方々かね?」
入り口近くで鍬を担いだ農夫と思われるおじいさんがハーディたちに声をかけた。
「うむ、この村に宿屋はあるかな?」
「宿屋なら、ほれ、このまままっすぐ行ったところに看板が出ておるぞぃ」
「なるほど、ありがとう」
さわやかな笑顔でハーディは答えると、宿屋に向かって歩きだそうとした。その時――――
「ハウンド・ドッグが出たぞーーーー!!」
大声で叫ぶ声が聞こえた。声の聞こえた方を見ると若い男性が走ってくる後ろを10匹近いハウンド・ドッグが追いかけてきていた。
ハウンド・ドッグは野生の狼の一種である。
魔獣と違い野生のため、獣として狩られることもあるが、肉は固めで味もイマイチであり、毛皮も高級品としては取り扱われないため、積極的には狩られない。そのため、繁殖は多く小さな村では被害が出ることも多かった。
周りを見れば、このイーナ村は村の周りすべてを柵で覆い切れていない。
ところどころに切れ目があるため、町中に獣や魔獣の侵入を防ぎきれない。
ハーディはおもむろに背中に背負った大剣「王者の剣」を抜き放った。
キースも帯剣している「双牙」を抜き放つ。
「報酬交渉もないまま、とにかく人のために剣を振るう。やっぱハーディは勇者っぽいね~」
自分もそうであるのに、まるで人ごとのように真っ先に駆け出したハーディの背中を見ながら、キースもハウンド・ドッグに向かうのであった。
ザンッ! 最後の1匹の首を一撃で飛ばすハーディ。
10匹のハウンド・ドッグはハーディとキースの前に瞬殺される。
「ふうっ」
ハーディは大剣についた血を振り払うと、背負った鞘に納めた。
最もハーディの持つ「王者の剣」は刀身が魔力の塊で出来ているため、血糊を振り払う必要はないのだが、それまでの普通の剣を使っていた癖が抜けなかった。
「片付いたかな?」
キースも腰に剣をしまってハーディに声をかける。
「おおっ、お助けいただきましてありがとうございます。見事な腕前ですじゃ」
入り口で説明してくれたおじいさんが声をかけてきた。
「あんたたち、強ぇーんだな。助かったぜ!」
走ってきた若者もハーディたちの強さに驚いていた。
「ハウンド・ドッグくらい何匹いても大丈夫だ。問題ない」
「おーおー、自信満々だねぇ」
ハーディの自信満々な言い回しに笑いをこらえながらキースは突っ込みを入れた。
「おれはアランってんだ。あんたたちは?」
「ハーディだ」
「キースだ」
握手を求めてきたアランという若者に対して、ハーディたちは手を差し出しながら答えた。
「大変だ!村の西側にハウンド・ドッグが大量に出た!子供たちや農作業の爺さん婆さんたちもまだ村の外側にいるんだ!」
「な、なんだって!?」
別の男が広場近くで大声を上げていた。アランの動揺にハーディは素早く剣を抜いて対応した。
「どこだ!すぐ案内しろ!」
「何匹いても大丈夫って言ったからには、それを証明しないとね~」
キースの軽口に
「言ってる場合か!」
ハーディは走り出していた。
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