第45話 キースの戦闘準備と二人の御守り
「そこそこ戦えるって・・・一体・・・?」
キースは極端に不安になってきた。先ほどまでのハーディの無茶苦茶な感覚で「ソコソコ」と言われても安心できる要素がない。
「お前さん、見てると結構器用なんだよな。右が効き腕のようだが、左でも困らないだろ」
「な、なんでわかるんだよ・・・」
「さっきの宿屋でのしぐさや食事のとり方などでも何となく想像できるぞ。ボーッっと生きてると情報を取り逃してしまうぞ?」
そう言いながら<異空間収納>から武器や防具を取り出す。
「これが<伝説級>の武器<双牙>だ。見た目は普通の青みがかったショートソードのようだが、魔力を込めて『切り離し』と唱えると、二本の剣に分解する。絶好のチャンスで二刀流の剣戟を持って相手を切り伏せろ」
「<伝説級>の武器って・・・」
地面に鞘ごと突き刺さった細身のショートソード。キースは手を伸ばそうとして、手に取る直前で躊躇した。
「先に<飛竜の皮当て>と<飛竜の篭手>、<翼の靴>、<防御の指輪>、後は・・・<疾風の腕輪>も今のキースには役立つか」
ボロボロと<異空間収納>から出てくる魔法のアイテム。キースはこれが現実だと認識するまでに少し時間がかかってしまった。
「まずは防具だな。<飛竜の皮当て>と<飛竜の篭手>、<翼の靴>を装備してくれ」
「い、いや・・・でも・・・こんなすごい装備・・・」
「さっさとしないと幼馴染がゴブリンに食われてしまうぞ?」
「わ、わかったよ!!」
焼けクソ気味に防具を身に着けていくキース。飛竜の防具はつけていることを感じさせないほどに軽く、しかも強度が高かった。ブーツに至っては魔力を通して使い方になれると、空中を数歩歩くことができるという伝説のアイテムだ。
「似合うじゃないか。それにこの指輪と腕輪を装備してくれ」
<防御の指輪>は装着者が受ける物理的ダメージを軽減してくれる効果がある。<疾風の腕輪>は魔力を込めると装着者のスピードを高める効果がある。
「これで二刀流の<双牙>を装備すれば、お前はスピードと手数で勝負する生粋のスピードファイターになれるぞ」
キースは手にしっくりなじむ魔法の武器<双牙>を見つめる。
これを使いこなすことができれば、アンリちゃんを助けることができる・・・そう思うとキースは力が湧いてくるような気がしてきた。
「どちらにしても非力なお前では盾があっても使いこなせないし意味がない。敵の攻撃はことごとくかわすしかない。それしかお前に生き延びる道はない」
はっきりと断言するハーディに一瞬にして背筋が凍り付くキース。先ほどアンリを助けられるかもしれないと安易に高揚したことを後悔するほどに重い言葉だった。
軽量でパワーの無い自分が敵を倒すためには、かわし続けて自分の攻撃のみを相手に届かす。キースはわずかながら自分が戦うイメージが浮かんできていた。
「いい目になった。だが、もう時間がない。キリングの花が咲いている森の奥地にお前を連れて行く。敵がいなければ一応少しだけキリングの花を採取しておけ。何があるかわからんからな。それが終われば、敵をその花の咲くエリアに近づけないように戦え。わかったな」
ハーディの説明にキースは震えながらも頷いた。
「トンヌラ・・・大丈夫かしら」
「もちろん大丈夫さ・・・アンナは俺が守るよ」
そう言って森の中をアンナの手を引いて歩いていくトンヌラ青年。
右手にナタを持ち、左の肩には矢筒とショート・ボウを担いでいる。狩人として生計を立てているようなので、それが普段使いの武器なのであろう。
だが、急いでいるとは言え、ろくに背負い袋も持たず、食料も傷薬もなく、いったい本気で無事に帰る気があるのか疑わしくなってくるほどだとハーディは溜息をついた。
キリリリリッ
ビュン!
ドズウッ!
また一匹ゴブリンが大木に縫い付けられる。
後で回収しないと腐乱して周りに迷惑がかかりそうだとハーディはまた違う意味で溜息をついた。
「チッ!またか」
今度は一度に矢を二本つがえると、一気に放つ。
ドビュッ!ドビュッ!
ドズッ!ドズッ!
木々に隠れていたゴブリンが二匹、再び大木に縫い付けられる。
「ギャ――――ス!」
一匹が断末魔を上げる。
「やだっ!なんだろう、今の声・・・」
「大丈夫だ、僕がついてるよ」
ゴブリンの断末魔が聞こえてしまい、怖がるアンリに根拠もなく大丈夫だと告げるトンヌラ。
ハーディはゴブリンたちのうめき声や断末魔が聞こえにくいようにかなり遠くにいる状態で狙撃していた。だが、そのうち一匹がかなり大きな声を出したので、アンリたちにも聞こえてしまったのだ。
「難儀だな・・・もっと遠くにいる状態で狙撃していくか」
実は現在でも700m以上離れたゴブリンを狙撃しているハーディ。位置関係からしても確実にこの森の中でアンリたちより500m以上離れたゴブリンを仕留めているのだが、より声が聞こえないようにと魔力を高めより長距離射程からゴブリンを狙っていく。
森の中を切り裂くように飛んで行く矢にもアンナやトンヌラは気づく事はなかった。
「よし・・・これでキリングの花を採取できた。これを持ち帰れば・・・」
キースは大事そうに採取した「キリングの花」を胸元にしまった。
薬草を手に入れると、つい当初の目的と違うことを考えてしまう。
誰しもある勘違いや思い違いといったものであろうが、キースにはそれを思い直すほどの余裕は与えられなかった。
「ゴブゥ!ゴブゥ!」
森の奥から姿を見せたのはゴブリンの兵士らしきものが三体、そして二回りは大きいであろうホブゴブリンが大きな棍棒を持って現れたのだ。
「ヒ、ヒィィィィ!」
たとえ<伝説級>の武器を装備しようと、高価な魔法の防具で身を固めようと、戦闘スキルに乏しく戦闘そのものの経験値が圧倒的に不足しているキースにとって初めて見るゴブリンよりも大きなホブゴブリンは脅威以外の何物でもなかった。
まして敵はホブゴブリン一匹だけではなかった。粗末な木の棒を振り回すゴブリンではない、明らかに兵士崩れのような恰好をしたゴブリン、ゴブリンソルジャーが三匹も一緒にいたのである。
「そ、そんな・・・」
キースにとっては、絶望的な戦闘が今、始まろうとしていた。
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