第44話 正義の味方は裏方で働く
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「すまない、ここは冒険者ギルドの出張解体所で間違いないか?」
「んん? そうだが、お前さんは?」
村の一角に建てられた木で出来た小屋と言うには大きな木造の建物。
粗末ではあるが、それなりに広い様だ。
小屋に入ってカウンター越しに声を掛けると、奥から出てきたのはドワーフであった。
「俺はFランク冒険者のハーディだ。この村の北にある森が立ち入り禁止となったと聞いたのだが、その理由になった魔物について情報が欲しい。教えてくれれば、解体はここに出そう」
「おいおい、魔物を仕留められるって、随分な自信じゃないか・・・って、アンタ、勇者ハーディか!?」
「ん? おいおい、俺は勇者などと名乗った事は一度もないな。と言うか、俺のギルド証のFランク表示と名前を見て、なぜ勇者と結び付けられる? 外見が神託のあった勇者に似ているからって、Fランクの駆け出しを勇者と呼ぶのは些か違和感を感じるが?」
「はっはっは、お前さんはワシの師であるゴーンより話を聞いておるよ。ゴーンは冒険者ギルドの上級鑑定士でな。出来る限りお前さんに便宜を図ってやってくれとな」
「それは・・・ありがたいが、なんでまた?」
「お前さんが真の勇者と見込んでの事よ。お前さんのギルドでの対応、感心しておったぞ」
ギルドで依頼受注をせずに対応したことなどを言っているのだろうと思いながらも、ハーディはそれを直接口にすることは無かった。
「・・・別に、大したことはしていないけどな」
「あれが大したことでないのなら、世の中は大したことがない事ばかりじゃよ」
「・・・まあ、いいさ。で、森に出る魔物の情報は教えて貰えるのかい?」
「ああ、お前さんならぜひに聞いてもらいたいくらいじゃ。彼の森にはゴブリンの巣が出来ておる。少なくとも30近い数がおる様じゃ」
「・・・・・!」
キースが息をのむ。ゴブリンが30体もいたら、素人ではまず生きて帰れない。
「しかも、厄介なことに、それを統率している魔物がいるらしいのじゃ」
「統率している魔物?」
ハーディが問いかける。
「そうじゃ。ホブゴブリンが率いているようじゃ。お主ならともかく、そっちの坊やには
相当な覚悟が必要じゃぞ?」
「・・・そうか、情報すまなかったな。確認したいことが分かった。助かったよ」
「それで・・・何とかなるのかの?」
「・・・何とかするさ」
ハーディはニヤリと笑った。
ハーディは脇にキースを抱えて森の中を高速で移動していた。
枝から枝へと飛び移りながら、木々をかき分ける様に移動するハーディ。
「うわわわわっ!!」
引っ込み思案でうまく喋れなかったキースも大きな声で叫ぶ。
「何だ、声出るじゃないか」
「こ、殺す気か!」
「おいおい、こんなことで死ぬわけないじゃないか。だいだい、森に出た魔物を倒してアンナちゃんを命懸けで守るんじゃなかったのか?」
決して馬鹿にしたわけではないが、ハーディの事実を説明した声が気に入らなかったのか、キースが反発する。
「魔物と戦う前に死んじゃうよ!」
随分元気に話せるようになったものだとハーディは少し関心した。
そして、枝から飛び降りて地面に降り立つ。
「あれを見ろ」
キースはハーディが指さす方を見る。
「・・・何?」
「あそこにゴブリンがいる」
キースは最初ハーディが指さした方向を見てもゴブリンを見つけられなかった。
だが、再度言われて目を凝らすと、かなり遠く、木々の隙間からゴブリンがいるのを見つけた。
キースはこれでも一人で森の中で生活していた時期もあった。目は良い方だと思っていたのだが、どうやらこのハーディと言う男はやはり桁が違うようだという事を改めて思い知らされた。
「さて・・・」
ハーディは<異空間収納>から弓矢を取り出していた。
「・・・それは?」
ハーディの取り出した弓に余りの魔力を感じてキースの声が震える。
「<竜の弓>だ。どれ、どんなものか・・・?」
緑色の竜の鱗で出来た様な弓。先には竜を象った意匠が施されている。
それがとてつもない魔力を放っている事だけはキースも理解できた。
そして<竜の弓>に矢をつがえて目一杯引き絞るハーディ。
ドウッ!!!!!
遥か遠くのゴブリンの脳天をぶち抜き。その後ろの大木をも貫いてさらに奥の木に突き刺さり、さらに刺さった木が燃え上がる。
「うわぁ・・・威力あり過ぎだなぁ」
ボヤキながら、氷系の呪文を用意するハーディ。
「<氷の弾丸>」
ハーディの放つ氷の弾丸が一瞬にして燃え上がる大木を凍らせる。
「違う弓にするか・・・」
そう言って取り出したのは黒く鈍い光を放つ長弓であった。
「<+2戦闘弓>だな。これくらいが程よい威力か」
そう言って再び矢をつがえて放つ。
今度は木の陰に隠れていたゴブリンの脳天をぶち抜いた後、大木の幹に突き刺さって止まる。
「うむ、これなら遠くから狙撃できるな。さっきの二人がゴブリンに囲まれる前に仕留められるだろう」
<+2戦闘弓>の弦をその感触を確かめる様に引きながらハーディは言った。
「じゃ、じゃあアンナを助けられるんだね?」
「それはどうだろう? キース次第だと思うがね」
「ど、どういう事?」
「連中を安全に守るためには、周りのゴブリンを近づかない様に狙撃する役と、目的の薬草の近くにいるであろう連中のボスを先に倒しに行く役の二人が必要だ。その内、何匹襲い掛かって来るかわからないゴブリンの狙撃をキースに任せるのは無理だろう。ならばキース、君がボスを倒しに行かなくてはならないだろう」
「え・・・?」
キースは呆気に取られる。自分がボスのホブゴブリンを倒しに行く・・・?
「そ、そんなこと出来るわけないじゃないか!」
「ならばアンリを見捨てるのか」
「あ、貴方の力があれば助けられるんじゃないのか!」
ハーディはわざと首を傾げる様に言う。
「アンナという女性を助けたいと言ったのは君ではなかったのか?」
「い、いや、そうは言ったけど・・・」
弱気に俯くキースにハーディは追い打ちをかける。
「アンナたちと一緒に行けば、二手に分かれる必要もないじゃないか」
「・・・ああ、なんだ、君は彼女に一緒に行って欲しいと頼まれたのに答えられなかったくせに、俺と言う戦力が当てになるから、急に一緒に行こうとしたり顔で彼女に声を掛けるのか」
ハーディに図星を付かれて二の句が継げないキース。
「そういえば、君の幼馴染は別の男を選んで結婚するんだったな。もう君を見ていないのだから、君自身が命を懸けて助ける必要もないのか」
「ば、馬鹿にするな!例えアンナが僕を見ていなくったって、僕は・・・僕は!」
わざと嘲る様に言ったハーディの言葉に激高するキース。
「そうか。ならば命を懸けるといい。まあ、お前でもそこそこ戦えるようにしてやろう」
そう言うとハーディは悪戯でも企むかのように笑った。
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