第42話 金髪少年キースの事情
皆さま明けましておめでとうございます!
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「もういいよ! キース何て! 私一人でも探しに行くから」
そう言って振り返り、茶髪を振り乱して走り出す女性。
そしてその場に残される金髪の少年。
背を少し丸めた金髪ロン毛の弱々しい感じの男だ。
「え・・・まさか、あの気弱そうな、なよっちい感じの金髪君が・・・勇者なのか?」
とりあえずハーディは肩を落とす金髪の少年に近づいて行った。
「すまない、ちょっといいかな?」
「え・・・あ・・・、な、なんでしょうか・・・」
「(コミュ症かよっ!)」
見れば金髪に碧眼、一応勇者の条件に当てはまっている。
なんでも、碧眼の人間が少ないらしい。エルフのような種族には多いらしいのだが・・・。
赤の勇者、金の勇者、青の勇者それぞれ髪の色で呼ばれるようだが、共通で碧眼という条件がある。
「あ~、旅の者なんだが、どこかおススメの宿が無いかと思ってね・・・」
オドオドした雰囲気はとても勇者には見えない。
まあ、勇者と言われても、だからどうしたという話ではあるのだが、逆に勇者だと言って強制的に連行され厳しいトレーニングを無理矢理やらされると言ったことがないだけでもラッキーだったのかもしれない。
まあ、何が正解で何が幸せなのかは本人が決める事だろう。ハーディは彼がどのように生きて行きたいのか気になった。
「あ・・・宿なら村には1件しかないから・・・」
随分と小さな村のようだ。
「どこにあるんだい? よかったら飯でも奢るから案内してくれないか?」
金髪少年の肩を叩くハーディ。
「あ、ああ・・・じゃあ案内するよ・・・」
猫背のまま歩いて行く金髪少年。トボトボ歩いているイメージだな。
ものすごく暗い少年と言った第一印象だが、ハーディは別の内面も見抜いていた。
歩いているその足運び、筋肉の付き方。彼は自己流だろうがトレーニングをしているようだった。決してただ、引きこもっているだけの少年ではない。
「ここだよ・・・」
しばらく大通りを歩いて行くと、左手に見えたのは比較的大きな建物。
宿屋トーラス。
「村の名前が付いているんだな」
「村営だからね・・・、一階で食事もできるよ」
「じゃあ、約束通り食事を奢るよ。一緒に食べようじゃないか」
「あ、ああ・・・ありがとう」
背を丸めたまま、一緒に建物に入る少年。
「なんだ、キース。どうした?」
「お客さんを案内してきたんだ」
「おお、そうなのか・・・って! おい、アンタ・・・勇者なのか!?」
「ハーディだ。勇者と言われることはあるが、勇者だと思ったことは無いな。勇者がどういうものかよくわからないし」
「いや、よくわからないって・・・」
「それを言うなら、このキースも勇者じゃないのか? 金髪碧眼は『金の勇者』なのだろう?」
「う・・・」
俯いてしまう金髪少年キース。
「どうした?」
「キースは孤児なんだよ。教会に捨てられていたのを拾われてな。教会で育てられたんだ。金髪に青い目だったからな。予言の勇者様だってその時はすごく盛り上がった。だが、正直キースは器用ではあるが、それほど突出した能力を見せることも無くてな。正直期待外れって感じで、村のみんなもキースが勇者だってのはありえないんじゃないかと思うようになったんだ」
「キースはキースじゃないか。勇者として期待するのは周りの人間が勝手に思う事であってキース自身には何も関係のない事だろう」
「アンタの言う通りだ。だが、キースは周りの期待が裏返った時に疎まれていると感じてしまったのか、ものすごく引っ込み思案で喋らない子になってしまったんだよ」
「私も教会に捨てられていた身なのでね。キースと全く同じですよ」
「な、なんだって!じゃあやっぱりキースは勇者なのかい?」
身を乗り出してくる宿屋の親父さん。
「ですから、勇者かどうかなんて本人にはわかりませんって。少なくとも私は旅をして回っていますが、世界を救うとか、魔王を倒すとか全く考えていませんよ。だいたい、魔王とか魔族とか噂だけで見たことないですし」
「そりゃ、見た事ないのは俺もだけどさ・・・。魔獣は偶に暴れるじゃないか。あれも魔王の仕業だって・・・」
宿の親父さんは不安そうに首を捻る。
「いや、普通に獣だって暴れるでしょ。魔獣だって同じことでしょう。それと魔王の関連なんて、人が勝手にこじつけているだけでしょう。人間が納めているこの国だって獣が暴れるだけじゃなくて、盗賊が暴れたりすることは無くならないでしょ? 本当に魔王とか魔族がいたとしても、人間国で盗賊が暴れることが無くならないのと一緒で、それが魔王が攻めてきたって事には直結しないと思いますよ。そんなことを言っているのは、国内に住む領民たちの目を『魔族と言うわかりやすく造り上げた敵』に向けさせることによって、王族とか政治を操る自分たちに不満の目を向けさせないための情報操作だと思いますけどね」
ハーディが真面目な顔でやたらを難しい事を説明するので、宿屋の親父さんがポカーンとした顔でハーディを見た。
「お前さん・・・えらく頭がいいんだね・・・」
「誰かと比べたことがないのでいいかどうか判別がつきませんね」
そういうと、ハーディはキースに目を向ける。
「だから、勇者だとか、どうでもいいんじゃないかな? キースと言ったね?
君は君がやりたいことをやればいいんじゃないかな? それが生きるって事だと思うんだけど」
「・・・・・・」
キースは俯いたまま喋らない。
そこでハーディは話を変える事にする。
「キースは普段どんなことをして生活を立てているんだ?」
「あ・・・実は教会の神父さんが五年前に亡くなってしまって、新しく派遣されて来た神父さんは孤児院の運営は行わないって事で追い出されてしまったから、ボクは特に家もないし、日雇いの仕事をして、小銭を貰えたら宿に泊まったりしているよ」
「ウチも客が多い時は手を借りてる。雨露がしのげる納屋でもいいって言ってくれるんでな。飯だけはしっかり食わせてやってるけど」
ハーディは同じ教会に捨てられた者として、これほどの待遇差がある事に衝撃を受けた。
デュランダル大聖堂のトーリとタニアに拾われ、ニーナにも面倒を見てもらい、デュランダルの名まで貰ってクラリスと共に何不自由なく育てられた。そのため、ハーディは生きる事に苦労する事がなかった。だからハーディは自分のトレーニングに集中する事が出来たと言ってもいい。
だが、キースはどうだ。五年前に放り出されてしまい、自分で生きるために生計を立てねばならなくなった。あまりにも自分と違う環境にハーディは絶句した。
「で、これからキースはどうしたいんだ?」
「う・・・あ・・・」
急にガバッと顔を上げ、涙目になって何か言おうとするキース。
「落ち着け。ゆっくりでいい。何を言ってもお前に文句を言ったり、馬鹿にしたりしない。だから、言いたいことを言え」
ハーディはゆっくり言い聞かせる様にキースに伝える。
「ボ、ボクは・・・アンナを助けたいんだ!!」
絶叫に近い大声でキースがその心情を吐露した。
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