第31話 暗転する運命
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2018/10/15 入学の年齢表記が間違っておりましたので修正しました。
12歳で入学、成人の15歳で卒業になります。
王立高等学校入学式―――――
ハーディとクラリス、イザベラは3人揃って入学式の行われる城塞都市カルバリッサの本校舎へ来ていた。
揃って、と言っても三人がここまで一緒に来たわけではない。
イザベラはヒップバーン家の馬車を用立てて家族と共に城塞都市カルバリッサまで来ていた。ハーディとイザベラはトーリ、タニア、ニーナと共に公共馬車を使って移動して来ていた。
今は生徒たちと保護者達は分かれて校舎内を移動している。
入学式自体はまだ先だが、生徒たちの集合は少し早めの予定だった。
ハーディとクラリス、イザベラは特待生として王立高等学校に入学金や授業料などの費用は全額免除が認められている。
イザベラは5つもの魔力判定機を破壊、ハーディに至っては土の精霊師フォビドゥン先生の最高傑作ともいわれたストーンゴーレムを完全破壊とこれ以上ない結果を出していた。
だが、さらにその上の結果を出したのがクラリスだった。
「神霊科」の試験で一人連れて行かれたクラリスは不満が溜まっていたのか「神力計」と呼ばれる魔力と同じような力「神力」を測るテストで、なんとクラリスは「神力計」をぶっ壊したのだ。そして天井すらも突き抜ける光の柱が立ったと言う。もはや「聖女」ではなく「神の使い」とか「女神」とか言われるようになってしまった。
本人曰く「ハーディのおかげ」と訳の分からない事を言っているらしい。
今、ハーディは一人で校舎内から外の中庭の方へ歩いて来ていた。
クラリスは入学式での入学宣誓の大役を依頼されていた。
何度もハーディの方がよいと言う回答をしていたようだが、どうも女神としての資質を見てしまった学園側がクラリスの宣誓で押し切った。
そのためクラリスは準備と打ち合わせで別行動だ。
イザベラも両親と話をしに行っていた。
「暇であるな・・・」
プラプラと歩いているハーディは中庭を抜け、広い運動場へ出た。
「我はこれから3年間の冒険者科での勉強を行うわけだが・・・」
ハーディは独り言ちる。
強制的に転生されられた身。人間としてどのように生きて行くか。
人間として生きてくための勉学を進めながら、それでも何を目標に生きて行けばいいか。
すでにハーディには番ではないが、守るべき家族というイメージが出来ている。
「守れるだけの力があればいい」
すでにハーディ、クラリス、イザベラも全員が12歳となっていた。
この世界、15歳となると成人として認められる。
貴族などの婚約などはもっと早いタイミングでもあったが、実際の結婚は成人と
して認められる15歳からだった。
そういう意味でも12歳から3年間さらに専門的な知識を学べるこの王立高等学校に通学する事は成人する15歳からエリート中のエリートとしてのスタートラインになるものだった。
「まあ、ありがたい事にこれから3年間も学び舎で学ぶ機会があるのだ。その間にいろいろと考えてみるか・・・」
まだ、3年もある・・・ハーディは楽観的に考えた。
ドンッッッッ!!
急に爆発音が聞こえた。
「何だっ!?」
見れは、校舎の入口とは別、裏とも言える人通りの少ない通用門が破壊されて煙が濛々と立ち込めていた。
「これは・・・?」
ハーディは門に少し歩み寄り、状況を確認しようとする。
「ガアアアアア!」
「何だ!?」
再び何故の言葉がハーディの口から飛び出る。
まるで状況が把握できない。
「ぐああー!」
「ギャア!」
煙の中から警備員らしき人たちが真っ二つになって吹き飛ばされて来る。
「これは・・・!?」
土煙が納まる中、その姿を現した異形の者。
汚れた濃いピンク色のような全身鎧はこびり付いた血で赤黒く汚れている。
手に持った大きな戦斧は禍々しいオーラを放っている。
「なあ・・・!?」
ハーディはその姿に記憶があった。
前世である<皇帝竜>ハーデスの記憶だった。
その記憶では、もっと美しく輝くピンク色の鎧に金色に輝く黄金の戦斧を持っていたはずだった。
「お前は・・・『死神の騎士』アルフレッド・トーラス・・・」
警備員が何人も走って来て、異形の騎士を取り押さえにかかるが、その禍々しい戦斧を振るわれるたびに命が消えて行く。
「やめろ―――――!!」
ハーディは怒鳴り、走り出す。
今のハーディには武器が無い。
入学式だったのだ。王立高等学校が支給するブレザーの制服を着ているだけだ。
「アルフレッド! お前なのか! なぜこんなことをする!」
異形の騎士に声を掛けるハーディ。だが、異形の騎士は答えず、戦斧を真っ直ぐ真上から振り下ろす。
ズドォン!
瞬時に躱すハーディの元居た足元が戦斧でえぐれ、ひび割れる。
「なんて威力だ!」
かなりのスピードの上、一撃は圧倒的な破壊力を持つ。
生身の体で一撃を受ければ、まわりの警備員の様に体を両断されるか、吹き飛ばされるかのどちらかだろう。
「ちっ!」
魔の者であれば、光の魔法が通用しやすい。
ハーディは超至近距離で<閃光の投擲>を打ち込むべく、詠唱を開始する。
「光よ!我が手に集まり、敵を穿て・・・ぐうっ!!」
<閃光の投擲>を放つべく、手に魔力を集め詠唱を開始したハーディだが、呪文を放つべく集中したその瞬間、体中を激痛が走る。
敵の目の前で呪文生成に失敗し、一瞬動きが止まるハーディ。
「ガアアアアア!」
戦斧が振るわれ、ハーディを直撃して吹き飛ばされる。
「ぐはぁ!」
地面に叩きつけられ、体中が軋む。口から血が垂れる。内臓を損傷したようだ。
「ぐ・・・、戦斧が片刃で助かった・・・」
刃の方が直撃したら間違いなく体が両断されていた。
ハーディは身体強化のため、魔力を体中に張り巡らせている。瞬発力の他、全体的な能力が上がっているため、もちろん耐久力も通常より高くはなっているが、あのバケモノが振り回す戦斧には焼け石に水だろう。
「だがっ・・・!」
ハーディは怒りに頭の中がショートしそうだった。
『聖女の呪い』
それが、正式な名称かどうかは知らないが、生き物に攻撃しようとするとすさまじい激痛が体を襲い、攻撃できない呪い。
子供のころから、分かっていたはずの呪い。
範囲攻撃の魔法、目標をずらしての突撃。
いくつかの方法を試したりしてきた。
だが、今この時、これほどの強敵を前に、ハーディは全く攻撃方法を見い出せずにいた。
自分の身を呪う絶対的不利な条件の対策をおざなりにして何とかなると甘い考えをしていた自分自身に怒りが収まらない。
「ガアアアア!」
荒れ狂う暴風の様に振り回される戦斧。攻撃できないハーディは躱し続けるしかない。
これほどの速度である。防御呪文を詠唱するヒマすら与えてくれない。
呪文に集中した瞬間に戦斧に切り裂かれるだろう。
接近戦を選んだハーディの戦術ミスと言えばミスなのだろうが、これほどの相手とわかっていない時点で、警備員がまだ居たのだ。範囲攻撃の魔法を放つわけにはいかなかった。
「ぐぅぅ」
一撃一撃が死のオーラを纏う。
戦斧の刃を躱し続けながら、ハーディは反撃を伺う。
「ヨコセェェェェ」
(何だ!?)
「聖女ノ血ヲヨコセェェェェェ!!」
「何だと!?」
ハーディは自分の血が沸騰するかのような感覚を覚える。
「聖女の血」
それがこの学園内で示すものと言えば・・・
「クラリスが狙いか!」
体が震える。
これほどのバケモノがクラリスを狙う。
求める物は「血」。
どう考えてもクラリスが無事でいられるビジョンが見えない。
「絶対に止める!」
ハーディは戦斧を躱しながら魔力を練り上げる。
僅かなバックステップで距離を取り、瞬間、呪文の詠唱を行う。
(広範囲に広がる呪文なら!)
「爆炎よ!その身で捉えた敵を焼き尽くせ!フ・・・」
異形の騎士を目で捉えず、その周りに放つよう呪文を準備するのだが、
「ぐうっ!」
放つ瞬間、またしてもハーディの体を激痛が走る。
<爆炎流>の呪文を唱えようとしたハーディだが、やはり失敗してしまう。
クラリスが狙われていると知ってしまった以上、アルフレッドかもしれない異形の騎士への攻撃意識をゼロとすることはハーディには無理な話であった。
「ごはっ!」
またしても戦斧の柄の一撃がハーディを襲い吹き飛ばされる。
更に内臓にダメージを負ったのか口からの吐血が止まらない。
「マズイ・・・!」
何とか立て直しを図りたいハーディだったが、敵は更にハーディを仕留めるべく、次の行動に移っていた。
「<衝撃の槌>」
地面を叩き割るかのように大地に振り下ろされた戦斧から、圧倒的な衝撃波が発せられた。
「ぐぼぁ!」
超高速の衝撃波がハーディに叩きつけられ、ハーディの体は吹き飛ばされ、校舎の壁に激突して瓦礫に埋まる。
「がはっ!」
全身を打ち付け、体が思うように動かない。視界が揺れる。
だが、立ち向かわなければならない。なぜなら、あの異形の騎士の目的はクラリスなのだ。
朦朧とした意識の中、遠くに見える異形の騎士と自分との間に一人の女性が飛び出してきたように見えた。その姿は間違いなくハーディの最愛の人、クラリスであった・・・。
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