第29話 実技試験の衝撃
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なんだか変な貴族の次男坊に絡まれてしまったが、しっかりお弁当を食べて午後の実技試験に臨む。
「う~う~う~!」
クラリスが目に涙をいっぱい溜めて何かしらの抗議を行っているが、試験官たちに両脇を固められて連れて行かれる。
「聖女様の実技試験会場はあちらですから」
「試験が終わればまた勇者様と会えますから」
ズルズルと引きずられていくクラリス。
クラリスの受験する科は「神霊科」であり、神術を中心に学ぶ科である。
今からここで行うのは魔法実技の試験であり、攻撃系呪文の威力をテストされる。
神術系の実技は攻撃系呪文の試験が無いので、クラリスとは別会場となってしまうのだ。
ちなみにハーディの受験する「冒険者科」とイザベラの「魔法科」は攻撃呪文のテストがあるので同じこの会場での試験を受ける。
「う~う~う~!」
クラリスの怨嗟の唸り声が遠ざかって行った。
「あら?順番えらく遅いですわね?」
試験順番はイザベラがラス前、ハーディがラストとなっていた。
「まあ、私たちが呪文を放ってしまうと対象物が無くなってしまいますものね」
イザベラが優雅に笑う。
「ププッ! アイツ何にも知らねーんだな」
「ああ、お高く留まっているおバカなんだろうさ」
「テストで使う的は土の精霊師フォビドゥン先生が作ってるって超有名なのにな」
「壊れるどころか、傷一つ付きゃしないよ」
クスクスと笑う連中。
陰口が聞こえてくる。
「・・・・・・!」
イザベラが何か言おうとするのを止める。
「やればわかることさ」
ハーディはニヤリと笑った。
そして実技テストが始まる。
「マナよ!我が手に満ちて敵を打て!<火球>」
手のひらから人の頭程度の大きさの火の玉を発生させ、的にぶつける。
ボウン!
ピー
「なんだ?」
「よし、音が出た。合格」
(むう・・・あの小型ゴーレムに魔法をぶち当てて音が出たら合格という事か・・・)
ハーディは腕を組みながら判定のシステムを考える。
次々とテストが進んで行くが、なかなか音が鳴らずにどうも不合格っぽい判定が続く。
(まあ、あの程度の魔力練度ではなぁ・・・)
ハーディは溜息を吐いた。
受験生のほとんどが、呪文の詠唱に気を取られて自身の持っている魔力を練り上げる努力を怠っている。
(まるで魔力が練られておらず、高まらない。その程度の魔力量ではなぁ)
さっきピーと鳴った少女の魔力は、受験者たちの中では高い方だった。
それからすると、この中から合格するのは2割もいないだろう。
「ふははっ、きっと土の精霊師フォビドゥン先生が作られている的に絶望しているのではないかな?」
「まったくですわ」
「可哀そうにねぇ」
見ればサジタール侯爵家次男のランデル・フォン・サジタールと取り巻き二名が来ていた。その他、貴族の子息たちと思われる受験者たちが大勢この会場を覗きに来ていた。
「ははは、皆で噂の勇者様のお手並みを拝見しようではないか!」
ランデルが大きな声で周りを煽る。
赤髪の碧眼、どう見ても神託のあった勇者のいで立ちであるハーディはかなり派手に目立っていた。そして「魔女」の異名を取るイザベラと「聖女」の異名を取るクラリスがどちらもハーディにベタボレ感を出しまくっているという事で、かなりのやっかみも含まれている。
「でも、残念ね。ハーディの前に私の番なのよね。5つの的、残らないかもよ?」
マジカルステッキをクルクルと回しながらイザベラが軽口を言う。
「ははっ!それはそれは剛毅なお嬢さんだ。もちろん予備はあるから全て壊しちゃっても大丈夫だよ?」
土色のローブに身を包んだ金髪ロングの優男が現れる。
「フォビドゥン先生、わざわざ試験を見学に?」
試験官の女性教師が現れた優男に声を掛ける。
「うん、噂の勇者君を見にね」
ウインクしながらキョロキョロ周りを見回す。
「あ、君が噂の勇者君かな?」
そう言ってハーディに話しかけてくるフォビドゥン先生。
「我は一度たりとも自分を勇者などと自称したことは無いな」
太々しいともとれる態度のハーディに「何様だ!」「思い上がるな!」と言った声が貴族の子息たちから上がる。
だがフォビドゥン先生はクスクスと笑う。
「うん、いいね! 気持ちがいい。神託の予言に乗っかって勇者を気取ってるよりよっぽどいいよ」
そう言ってからからと笑うフォビドゥン先生。
(ふむ、この先生はだいぶ見る目、理解する頭を持っているようだ)
ハーディは学園も捨てた物ではないと改めて再認識した。
「このゴーレムはフォビドゥン先生が作られたとか?」
一瞬、目を細めるフォビドゥン先生。
「ほう、ただの硬い土くれだとばかり思われているんだけどね、よくゴーレムだと分かったね?」
嬉しそうにフォビドゥン先生がハーディに食いつく。
「それは見ればわかりますよ。魔力回路もうまく組まれているし。当たった呪文の威力を判定するための魔法陣と、土で出来たボディを強化する回路ですね。これならかなりの耐久力があるでしょうね」
「お・・・おお! そこまでわかるんだ!すごいね!」
ハーディの手を取って感動しだすフォビドゥン先生。
「ちょっと触らせてもらっても?」
「どうそどうそ!」
フォビドゥン先生自ら的になっているゴーレムの元へ案内してくれる。
ペタペタと触ってみるハーディ。
(フム・・・確かによく出来たゴーレムだ。イザベラの<火炎輪舞>程度では傷も付かぬか)
ハーディは思案する。
(イザベラは5つの的を破壊するような事を言っていたが、<火炎輪舞>の他、<熱線波>のような直撃系呪文では破壊する事は出来ないだろう。ピーとは鳴るだろうが)
「素晴らしい出来ですね。この学校に入学する事が出来たなら、ぜひ教えを受けたいですね」
少しおべっかを混ぜて如才ない挨拶を返すハーディ。
「おおっ!それは楽しみだね!」
ニコニコ話すフォビドゥン先生から離れてイザベラの元へ行く。
「イザベラ。直撃系の呪文ではあのゴーレムを破壊するのは難しいと思う」
「・・・マジで!?」
イザベラが目を丸くする。
「持続系の呪文を使え。特に熱ならゴーレムの耐久力を上回れるだろう」
「任せて、ちょうどハーディと練習したあの呪文で行くわ」
「それはど派手だな」
ハーディとイザベラはニヤリと笑った。
「それでは次、イザベラ・ヒップバーン。呪文を放ちなさい」
「ルーディス・フロデル・スコルビリー!火よ!風よ!我が求めに応じその姿を顕現せよ!<火炎大嵐>!!」
ドゴォォォォ!!
立ち上がる巨大火災旋風!恐ろしいまでの熱風が周りにも伝わる。
だが、イザベラはかなり周囲への影響を絞る様に竜巻のような嵐を細く狭くコントロールする。
「はああっ・・・!」
魔力を十分にコントロールする術をハーディと研鑽してきたイザベラ。いつぞやの様に暴走させることも無く炎の竜巻を維持する。
ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
5つの的がけたたましく警報を鳴らしまくる。聞いたことも無いような大きな音で。
そして、維持を続けた火災旋風はついにゴーレムを破壊する。
ピシピシ・・・パリンパリンッ!
5つの的は全て砕け散った。
「「「えええ――――――!!」」」
居合わせた全員が顎が外れるほど驚いた。
「ふんっ!「魔女」を舐めないでくれるかしら?」
イザベラは今までで最高のドヤ顔を見せるのであった。
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