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第19話 クラリスの思い

「どうして自分はこんなにハーディの事が好きなんだろ・・・」


ふうっと溜息を吐きクラリスは満天の星空を見上げた。

すでに時刻は日が変わったあとだろう。

眠れずに、カーディガンを羽織ったクラリスは寝間着のワンピースのまま自分の部屋を出たあと、大聖堂も抜けて外に出ていた。

教会の裏庭を少しだけ散歩する。

深夜の空気が凛として心地よかった。




物心ついた時から自分には両親が居ないということに気づいていた。

でもそれを寂しいと思ったことは一度も無かった。

自分を育ててくれる優しいニーナ。まるで実の祖父母の様に接してくれるトーリとタニア。教会の若い神官戦士や、シスターもとても優しかった。そしてなにより・・・、気づいた時からずっと一緒に、そばにいてくれる存在がいた。


「ハーディ・・・」


あまり自分の記憶にはないが、赤ん坊の時からハーディの事が大好きで、ハーディを見つけるたびに抱きついて離さなかったそうだ。今でも時たまその話をニーナにされると、顔が真っ赤になってしまう。今はもう8歳になろうかというクラリスである。さすがに今もべったりと抱きつくのは恥ずかしすぎる。恥ずかしい以前に淑女としてどうか、などと怒られてしまうかもしれない。


(誰にも見られていない所なら・・・)


そんなことを考えて、急に頭を振り、自分の想像をかき消す。


3歳の頃の事は朧気ながらも覚えている。よくハーディにおままごとを一緒にしてくれるようせがんだ。不思議な顔をしながらも嫌とは言わず、クラリスに付き合ってくれるハーディ。特に、涙目になって下から覗くようにハーディにお願い事をすれば、必ずクラリスの希望を叶えてくれた。少し分別が付くようになった今、その必殺テクニックはここぞの時だけにしなければと心に戒めている。なぜなら、クラリスがお願いすれば、ハーディは必ず叶えてしまうのだから。


(ハーディはやっぱり王子様だったんだな・・・)


益体も無い事をついつい考えてしまう。


ものすごく優しくて心地よい魔力を纏わせるハーディ。その圧倒的な魔力量に驚くよりも心地よさに身を委ねたくなってしまう。


きっと、別の人から見れば、ハーディは強大な魔力を持つ勇者に映るだろう。真紅の髪に紺碧の瞳を持つ予言の勇者様。その実力は本物だったのだから。

だけどクラリスには、別の勇者像が映っている。


(とてもとても勇気のある、優しい優しい勇者様)


暴力を嫌い、相手を傷つけることを極端に嫌うハーディ。実際のところ、聖女の呪いによる影響で攻撃できないことがそのような相手を気遣うように見えてしまっているのだが、クラリスにその事を知る由は無い。


圧倒的な剣の技術、圧倒的な魔法制御力、どれもこれも勇者を名乗るのに相応しかった。

そのせいか、一時期ハーディは嫉妬から男子たちに無視されたり、いじめられることもあった。

それに気づいた時、クラリスは胸が張り裂ける様に苦しかった。そしてそんな相手を自分の手でぶちのめしてやりたいと思う程過激な思想に捉われた。

だか、ハーディは己の力で立ち上がった。その全てを跳ね除け、堂々とその存在を輝かせたのだ。最も、ハーディが立ち直るきっかけを与えたのがクラリスのマッサージであった事などは、やはりクラリス自身が知る由もない事である。


ハーディと二人で森にこっそり探検に行ってワイルド・ボアに鉢合わせてしまい、命からがら逃げて来た時も、ハーディが自分を守ってくれた。みんなで遠足に行った際に枝から落ちそうになっているリスを助けようとしたクラリスが崖から落ちかけるハプニングがあった時も、ハーディが命懸けで助けてくれた。学校に入った時に、たくさんの男子に囲まれて怖い思いをした時もハーディが守ってくれた。いつだってクラリスの横に、いてくれる存在。


(ずっと・・・、ずっとハーディのそばにいられたらいいのに・・・)


そんな想像をして、頬を染めるクラリス。恥ずかしいけど、決して嫌じゃない。

むしろ、例え恥ずかしくてもその思いは捨てられない。

ずっと、ずっと一緒にいたいという、その思い。


クラリスは自分の首から下げているネックレスを握りしめる。

物心ついた日、ニーナから渡された装飾品。『緋色の魂魄』と呼ばれる、<秘宝>(アーティファクト)。効果はまったくわからない。だけど、ニーナは言った。


(この<秘宝>(アーティファクト)はあなたの実のお母さんから預かったもの。肌身離さず身につけなさい。いかなる時も)


何故だか、嬉しさよりも怖さが先に立って、貰った日は眠れなかった。一度も見たことも会ったこともない、実の母が託した、この<秘宝>(アーティファクト)。その重さに震えが止まらず、こっそりハーディの部屋に行って手をつないで一緒に寝てもらったのを今でも覚えている。

・・・後でタニアとニーナに怒られたのだが。


その宝石をギュッと握りしめ、再び満天の空を見上げる。


「ずっと・・・ずっとハーディのそばにいられたらいいのに・・・」


今度は口に出して呟く。

満天の星空の中、満月だけが優しく笑っているように見えた。


今後とも「ドラリバ」応援よろしくお願いします!

(自分で愛称呼んでます(苦笑))

よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。

大変励みになります(^0^)

他にも投稿しています。


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よろしければぜひご一読頂けましたら幸いです。


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