第17話 裏切り
今回のテーマは「いじめ」です。
テーマが苦手な方はお気を付けください。
正直拙作の稚拙な文章ではあまり強く伝わらないような気もしますが(^v^;)
もちろん次話ではむっくり元気になる予定ですが。
メキメキと実力を発揮して行くハーディ。
勉学で無敵、ケンカでもダメージを与えられない、勇者との評価、クラリスを始め女の子に大人気。これで他の男の子たちから恨まれないわけも無かった。
だが、正面切って対抗できない。勉学でも実技でも。
となれば、陰湿な作戦に移って行くのは自明の理であろうか。
入学して一年、そしてハーディは言うところの「いじめ」にあうようになる。
「ぬおっ! またして我の履物があ!」
オーバーに頭を抱えて苦悩するハーディ。
ここ数日毎日のように帰りの履物が無くなる。
タニアに手作りしてもらっているのだが、こうも毎日行方不明になるとタニアにまたも履物を製作依頼するのは申し訳ない気がしてくる。
「ぬううっ! この学舎にはどうやら不思議が渦巻いておるようだな・・・」
顎に手を当て、何かを考えるように唸るハーディ。だがもともと孤高の存在であったハーデスに人として転生し、ハーディとして僅か7年やそこらしか生きていない経験を足して見たところで、矮小な「いじめ」なる行為を推測することははっきり言って不可能であった。
そして、クラリスが「聖女」としてここ一週間ほど学校終了後に治療活動を行っていることも関係している。クラリスがハーディと一緒に帰宅出来るのであれば、靴がないことがもっと問題化している。クラリスはハーディを待たせることに負担を感じ、先に帰るよう伝えているが、本音はもちろん違う。最初はハーディもクラリスが一人で帰宅することに不安を覚えたのだが、デュランダル大聖堂から神官戦士が迎えに来るようになっていた。
学校側は自分たちで護衛を出すと申し出ていたのだが、トーリとタニア、ニーナはクラリスの取り込みを心配し、トーリの部下を派遣することを決めた。クラリスの治療行為が人のためになることは間違いなく、その点において誰も反対する者はいなかったからだ。
ぶっちゃけ、足裏を魔力で強化すればダメージはないので靴を履かなくても大丈夫と言えば大丈夫なのだが、ハーディも人の世界で生きる身である、あまりに見栄えがしないのはいかがなものかという感覚は身についていた。
そして、履物を隠されるという(見つかっていないので捨てられていると思われるが)いじめ以外にも、教室内外で男の子たちはハーディと一言も口をきかないという、所謂「無視」に発展した。
ハーディが話しかけても誰も返事をせず、聞こえないのかと思い声を大きくすれば、教師に対してハーディに恫喝されたと申し出る始末。さすがにハーディも反応がおかしいと気づき始めた。
(これは・・・皆が我を無視して、いない者と扱っておるのか!?)
女子はそうではないのだが、それすらも気づかぬほどハーディは狼狽した。
何せ前世は皇帝竜ハーデスであった。畏怖されることはあっても、目を合わせても無視して相手にしないなどという状況はもちろん過去一度もない。
さすがに戸惑ってしまう。
座学の休憩中でも、ハーディが周りを気にするだけで他の男どもは目線を逸らしハーディから離れて行く。
「・・・・・・」
そこへクラリスが教室に戻って来た。
「ハーディ、どうかした?」
ハーディの表情が曇っていることに気づいたのか、クラリスが声を掛けてくる。
「いや、大丈夫だよ」
空笑顔で答える。
「ハーディ疲れてる? お家に帰ったらマッサージしてあげるね!」
満面の笑顔でマッサージ宣言をするクラリス。
周りの男子から吹き荒れる怨念。
握りこぶしを震わす者、陰でクギを打つ者、血の涙を流す者、様々ではあるが、一様に思う。ハーディさえいなければ・・・と。
男子の誰からも相手にされない状態が続いたハーディだが、こそっと声を掛けてくる少年が居た。
「ハーディ君、ハーディ君」
「君は確か・・・トニーだったか?」
ハーディに声を掛けて来た少年はトニーと言った。小柄な少年で、教室でもあまり目立った印象はない。
「ハーディ君は教室の大将であるドノバン君から目を付けられちゃってて、みんなから無視されているよね」
「むうっ! そうだったのか。道理で誰も我に返事をせぬわけだ」
しみじみと納得するハーディ。
(わかってなかったのかよ!)
愕然とするトニー。
「だがトニーよ、なぜ我に話しかける? 今の話では、皆が我を無視するという作戦を遂行中なのであろう?」
ハーディの堅苦しいような話し方に面くらいながらもトニーはハーディと友達になりたいという。
「我と友達に?」
「そう、ハーディ君と友達になりたくて」
その日以降、トニーはみんなの目を避けるようにハーディにいろいろ話しかけるようになった。ハーディもトニー以外は喋る男子がいないため、必然的にトニーとコミュニケーションをとる回数が増えて行く。そしてトニーに根掘り葉掘り問いかけられるまま、いろいろと答えて行った。自分が気づいたら教会にいたこと、両親が居ない事(転生とはさすがに言えない)、教会でクラリスと一緒に住んでいる事など、個人的な情報も聞かれるままに話していった。
そして、「無視」のいじめは更なる段階を経て、「陰口」を聞こえるように叩くようになった。
「偽物勇者」
「捨て子のくせに何が勇者だ」
「クラリスの着替えを覗いているらしいぞ、変態だな」
「両親もいないくせに生意気だ」
無視しているくせに、ハーディの方を横目で馬鹿にするように睨んだりしながら、口元は手でわざと隠し、コソコソ話をするような振りをする。
明らかに聞こえるように、そして仲間外れを意識させる最低なやり口であった。
最も、ハーディは皇帝竜ハーデスであった時の時間が圧倒的に長いため、孤独に苛まされることはなかったため、それ自体はハーディにダメージを与えることはなかった。しかし、
(なぜ我の情報を知っているのだ・・・?)
彼らとコミュニケーションを取っていないのだから、当然自分の情報など話したことはない。そう、話したとしたらトニーだけだ。
(一体どういう事なのだろうか・・・?)
今日も一人で帰宅するハーディ。最近は履物を持ち歩くようにした。
教会に帰った時に靴が無かった事をクラリスに知られてしまい、プリプリに怒ったクラリスを宥めながら話をしていたところ、盗まれるならば最初から肌身離さず持っていればいいと単純な解決法を提案してきた。そんなわけで、腰にポシェットのような小さな袋を付け、履物を常時入れるようにした。
そして靴を履いてさあ帰ろうと学舎を出たところで、不意に学舎の裏へ歩いていくトニーの後姿を見つけた。
(トニーではないか。学舎の裏などに何をしにいくのだろう?)
ハーディはふと気になりトニーの後をついて行くことにした。
「で、ハーディの野郎はヘコんでるのか?」
「はい!教室の中じゃ誰も話しかけないし、完全に孤立してますよ」
「うまくいってるようですね、ドノバンさん」
「勇者なんて言われてるけどマジ大したことないですね!」
「どんどん情報を引き出して報告しますよ!」
ドノバンと呼ばれたガタイのいい少年、言い方を変えると少々デブな、正しくガキ大将と取り巻き数人に対し、トニーはニヤニヤしながらハーディと話した内容を報告していた。
これを見る限り、トニーはハーディと純粋に友達になりたかったわけではなく、ガキ大将であるドノバンの子分としてハーディの情報を探るためのスパイとしてハーディに近づいたと言えるであろう。
「・・・・・・」
ハーディはその状況を理解するのに少しだけ時間がかかった。
「ちっ! ハーディが来やがった」
「えっ?」
ドノバンの声にトニーが振り返る。
「ボーゼンとしてるようだが、トニーが本当にお前の友達になりたいなんて思ってると思ったのか?」
「ばかじゃねーの?お前と友達になりたいヤツ何ていやしねーよ!」
取り巻き達が口々に言葉を投げつける。
「トニー、そうなのか?」
ハーディはトニー本人に確認してみた。
「あたりめーじゃねーか。誰がオメーなんかと友達なんかになるかよ、ばーか!」
トニーは悪びれた様子も無く、ハーディに悪態をついた。
「・・・そうなのか・・・」
些か落ち込んだように見えるハーディに気を良くしたのか、ドノバンがさらに悪態をつく。
「何が勇者だ!てめーなんて誰も認めねえんだよ!ふざけるな!」
「そうそう、クラリスちゃんといちゃいちゃしやがって、気持ちわりーんだよ!」
ドノバンに続き、トニーも理不尽な文句をぶつける。
「・・・・・・」
ハーディはどれだけ言われても、一言も言い返さなかった。
「ぎゃははっ! コイツ泣いてるぜ! ダッセー!」
「ホントだ、チョー弱虫くんじゃねーか!」
「弱虫!弱虫!」
口々に囃し立てるドノバン達。
「泣いている?我が?」
ふと左手を頬に当てる。気づかないうちにハーディの目からは涙が流れていた。
ハーディは人として人に裏切られることの辛さと悲しさを知ったのであった。
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