第14話 ヒトリノ夜
その夜、ハーディはクラリスと布団を並べて寝ていた。トーリもタニアもまだ帰ってきていないため、ニーナが一緒に寝るように促したのである。
「・・・・・・何だ!?」
強力な魔力を感じたハーディはパチリと目を覚ました。
「う、う~ん・・・」
クラリスが身を捩るが起きなかったようだ。ニーナも眠っている。ハーディはそっと布団を抜け出し、教会の外へ出た。
「・・・これは・・・」
外へ出たハーディが村の入り口近くに来た。村の入り口には2名が寝ずの番をしているはずだったが、すでに倒れている。
まがまがしい魔力が具現化した。
「ケェ~ケケケケケッ!」
「ヴァンパイア・・・!?」
ヴァンパイア。いわゆる吸血鬼。最も不死に近いとも言われる存在。
(まだロクに力を取り戻していないというのに・・・やっかいだな)
「300年ぶりの現世だぜぇ!長かったぜぇ!まずはこの村から俺の眷族を増やして勢力を拡大してやるぜ~ケェッケッケ!」
「・・・300年?」
ハーディのつぶやきにヴァンパイアが気づいた。
「なんだぁ?ガキ! よい子はもう寝る時間だぜぇ!<眠りの霧>!
「なぁ!?コ、コイツ・・・なんて規模だ!」
村全体にかかるように眠りの霧が覆いつくす。
「チッ・・・規模拡大で魔力を通常の何倍も消費したくせに込められた呪文に込められた魔力もデカイ・・・。これでは村人たちはレジストできんな。我くらいか・・・」
ハーディは一人ごちる。だが考えてみれば、村人たちが寝ていた方が都合がよい。ハーディが戦う姿を見られずにすむ。
「ここの村は我が世話になっているのでな・・・。眷族化などという世迷言を実行させるわけにはいかんな。」
「このガキィ・・・。おかしなしゃべり方しやがって・・・。俺様の<眠りの霧>もレジストした見てぇだし、まさか見た目の年齢じゃねえとかじゃねーだろうな?」
「いや、我の年齢自体は見た目通りだな。」
「じゃあそのしゃべり方はなんなんだよ?」
「何だと言われてもな。我は元々こんな感じだ。」
ヴァンパイアはハーディの淡々としたしゃべり方にいら立ちを覚えた。最も不死に近いとまで言われる己の存在をまるでものともせずにいる子供に本気で怒りをぶつける。
「イラつくガキだっ! すぐにでもぶっ殺してやる!」
「お前をな!」
ギャンッ!
魔力による身体強化により、圧倒的な爆発力で飛び出すハーディ。
ヴァンパイアの目の前に瞬間移動したかのように移動すると、拳を振り上げ殴りかかる、が。
「ぐあっ!」
殴りかかった瞬間、聖女の呪いのせいで全身に強烈な痛みが走り、動きが阻害される。
動きが鈍ったハーディはヴァンパイアに迎撃されて吹き飛ばされた。
「ぐっ・・・」
「あぶねぇ!このガキただもんじゃねーな!」
目の前に突如現れるかの如く接近してきたハーディを裏拳で迎撃したバンパイアは戦慄した。
「このガキ!焼き尽くしてやる!」
バンパイアは両腕を振り上げ、魔法を放つ。
「<火球>!」
直径1mはあろうかという火球がハーディを襲うが、ハーディは魔力強化だけで火球を耐えきる。
(ふう・・・この程度の呪文であれば専用の対魔法防除呪文の展開も不要か・・・、だが相手を仕留めるための攻撃をどうするか・・・)
「てめぇ、このクソガキがぁ!」
激高するヴァンパイア。
だが、次の瞬間、ハーディの体当たりを受けて吹き飛ぶ。
「ぐぉっ!?」
ハーディはただ身体強化を極限まで高め、全力でダッシュしただけであった。
目標はバンパイアの後ろの木の根元あたり。
そう、直線状に目標を結び、ただ、ダッシュするだけで移動線上にいるバンパイアに
体当たりをかましたのである。
ただの体当たりであれば再生能力の高いバンパイアにダメージを与えることは出来てもすぐに再生されてしまう。そこでハーディは身体強化で張り巡らせた魔力以外に肉体強化そのものにも魔力をあて、大魔力をそのままぶつけるようにしたのである。
斬撃などの武器による攻撃、火炎による火傷、氷結による凍傷、暴風よる裂傷も現象の元を魔法で構築していたとしてもダメージは物理的なものになる。
そこで再生能力に影響の出る魔力傷を与えるための苦肉の策でもあった。
無属性魔法は直接魔力でダメージを与えられるが、バンパイアなどの高位魔族は魔法耐性も非常に高い。<魔法の矢>などを放ってもレジストされる可能性が高い。最も現在のハーディは標的を定めて魔法を放つことは出来ないわけだが。
(ふむ、攻撃意識を持たずに、目標をずらして移動を目的とすればなんとかなるか・・・)
ハーディの聖女の呪い対策の一つがこの方法であった。
攻撃するという意識を持たずに行動だけで結果ダメージを与えられればなんとかなると考えたのである。
だが、ヴァンパイアを直接目標に突撃できないため、ヴァンパイアが高速で移動し始めると狙いを素早く定めることが出来なくなった。そしてヴァンパイアに追い詰められ始める。
「ちっ・・・」
「おらおらぁ!どうしたどうした!」
魔法の連続攻撃をギリギリで躱しながらハーディは対策を練る。
(勝負はヤツの動きが止まる一瞬。今度は体当たりではない・・・。掴み取る!そう、ニーナのおっぱいをだ!)
攻撃ではない。そう、ニーナのおっぱいをこの手に掴み取る!
極限まで集中力を高めるハーディ。
「おらおら! これでトドメだ! 炎よ集い荒れ狂え!わが手より離れその真火を具現せよ!<火炎輪舞>!」
<火炎輪舞>は大きく開いた両手の先から火炎放射のように炎を吹き出す魔法である。
放たれた火炎は大蛇のようにうねりながら対象者を焼く尽くすように向かっていく。
「<火炎耐性>、<火炎防盾>」
ハーディは即座に炎の魔法に対処する。
<火炎輪舞>の直撃を受けて炎上するハーディ。
だが、炎の中から平然と歩いて出てくる。
「なあっ・・・!」
ドンッッッッッ!
超高速で飛び出すハーディ。その目は閉じられたまま。
「おっぱーーーーーい!!」
抜き手のまままっすぐ貫くようにヴァンパイアの正面に衝突する。
右手はヴァンパイアの胸を貫き、その手には心臓が握られていた。
バシュウッ!
その心臓を握り潰し、「おっぱい掴んだり」と呟くハーディ。
誰かに見られたらどれだけ病んでいるのかと小一時間は問い詰められること間違いなしである。
「がああっ・・・」
もんどりうって倒れるヴァンパイア。
「くそ・・・心臓をやられちまったが、心臓だけなら15年くらいで復活してやるぜ。覚えてろよ、てめえ・・・」
「ん? そう言えばお前300年前にも滅ぼされたって言ったか? 今度は15年とはずいぶん短いんだな」
ハーディはふと疑問に思って聞いてみた。
「ぐ・・・300年前は竜王ハーデスってバケモンにやられたんだよ! その時は他にもいろんな種族がシバキ回されてよ・・・、俺はその時ハーデスに舐めた口きいたら塵レベルになる<竜の息吹>喰らって、復活に300年もかかったんだよ!」
ゼハーゼハー言いながら過去の話をするヴァンパイア。
「なんだ、300年前にお前を滅ぼしてたのか。記憶に無いな」
しれっと言い放つハーディ。
「はあっ? 300年前って・・・」
訳が分からんといった顔のヴァンパイアにハーディは言い放つ。
「強制転生で人間の子供になっているがな。竜王時代の記憶はあるぞ。その実力の一端は戻ってきているがな。15年後に復活だったか? 復活したらまた相手してやろうか?」
ぎろっと睨むハーディ。
「ど、どうりでおかしな子供だと・・・、いやいや、復活してももアンタにゃ逆らわねーよ!なんなら舎弟にしてくれよ!」
結構必死なヴァンパイア。
「まあ、その時に気が向いたらな」
「ほ、ホントか!頼むぜ! ・・・ああ、体が崩れる・・・それじゃ、15年後頼むぜ・・・」
灰になって行くヴァンパイア。
「長い夜になったな・・・」
ハーディは1人ごちた。
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