第12話 聖女の呪い
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暑い日が続きますね。室内でも熱射病になる方もいらっしゃるとか。
しっかり水分をお取りになり、体調管理には十分お気を付けください。
教会に降臨した赤ん坊が「ハーディ・デュランダル」と名付けられて育てられて3年がたった。スクスクと育ったハーディはまさにわんぱく坊主といった感じだった。
今も近くに住む子供たちと村の広場で『勇者ゴッコ』なる遊びに興じている。
ただ若干普通と違うと思われるのが・・・
「フハハハハッ! 我こそは竜種の中の竜種!竜王ハーデスであるぞー!」
なぜか必ず勇者ゴッコをやるのに、ハーディは竜王役を主張する。
どうも『ハーデス』という名は巷には浸透していないようで、『勇者』や『竜王』という単語だけが広まっているようだった。
「<皇帝竜>ハーデスこそが、竜種の中の竜種! 竜王と呼ばれているのだぞー!」
とハーディが教えてやっても、
「ハーデスってハーディに似てるな~」
「竜王に自分に近い名前つけてカッコつけているんじゃないかぁ」
と子供たちから馬鹿にされてしまう。
(むうっ! なぜハーデスの名が広まっておらぬのか! 実に気にくわん)
と言っても誰もハーディに賛同するものなどいない。
3歳になったハーディはトーリやタニアに勇者の話をせがんだ。
実際竜王ハーデスの話を振ってもわからないことが多すぎるからだ。
そして、勇者4人が竜王を封じて帝国に戻ってきたのがおよそ3年前と判明した。
つまり、ハーデスがハーディとして人間に転生させられたのは<犠牲の輪廻>を喰らった直後という事になる。
(すでに3年の月日が流れてしまったわけだが、以前の居城や部下たちはどうしているであろうか・・・)
死神の騎士アルフレッド・トーラスにほとんどの事を任せっきりだったとはいえ、ハーデスには多くの部下がいた。確か、いろんな種族を纏めて6軍に分けたとか言っていたか。6軍にはそれぞれ団長がおり、その軍を纏めているとか言っていたな。みな息災だとよいのだが。
そして、一番解せないのは勇者たちが竜王を攻めた理由である。
竜王が世界征服を目論み、魔族を手下に人間の国を攻めようとしていた、というのである。
(そんなバカな!)
ハーディはそう話を聞いた時、全くもって信じられなかった。
それはそうである。そんな世界征服など目論んでいなかったのだから。
当人なのだから、それは絶対だ。
(我は100年ほどゴロゴロしていただけだぞ!)
なぜゴロゴロしているヒキコモリがわざわざ世界など征服せねばならんのか。
世界など征服しても面倒くさいだけではないか。
・・・まさしくヒキコモリの考え方であった。
「おーい、ハーディってば!」
「ん? おお」
ぼーっと考え事をしていたら、近所の悪ガキたちに呼ばれてしまった。
「早く勇者ゴッコやろうぜ!」
「よかろう!竜王ハーデスの実力を見せつけてやるか!」
今日も今日とて竜王役をやろうとするハーディ。
勇者ゴッコをやろうとする時、他の男の子たちは自分たちが勇者をやりたいので誰も文句を言わないが、親たちはハーディが降臨した勇者らしいと子供たちに話しているので、最初子供たちはハーディが勇者をやりたいと主張すると思っていた。ところがハーディは勇者ゴッコをやろうとすると決まって必ず「竜王」をやるというのだ。
「勇者どもよっ!この竜王に勝てると思っておるのかー!」
ぶっちぎりで悪役っぽいセリフを吐くハーディ。この後毎回勇者役の子供たちに「切られたから倒れろよー」とか言われるのだが、「フハハハハッ!竜王は不死身だ!」などと言ってやられようとしない。最終的に押し合いへし合いになるのだが、いつもハーディが突き飛ばされてやられたことになってしまっている。
(おかしい・・・。我が突き飛ばそうとしたり殴りかかったりすると体に痛みが走り、動きが阻害される・・・?)
ハーディは自分が攻撃的動作に入ると体に痛みが走り動かなくなってしまうことに気が付いていた。
魔力操作による身体系強化は赤ん坊のころからのトレーニングで可能なことがすでに確認できている。
(・・・呪いか?)
ハーディは竜王ハーデスとしての記憶の最後にある、聖女の唱えた究極の封印魔法がこの現象を引き起こしているのではと考えた。
(とすると、厄介なことになるな・・・。竜種の力が引き出せない今、通常の攻撃形態がすべて封じられたとなると、逃げる以外の選択肢が選べない・・・)
かなり厄介な話だった。
他人に攻撃できないことは致命的だ。亀のように身を守るか、攻撃をかわし続ける以外には逃げるしか方法がない。これでは勇者どころか、通常の冒険者として魔物狩りなどで生計を立てていくことすらできない。
(竜王ハーデスであった頃、勇者パーティの聖女にかけられた転生の秘呪文のせいだろうが、強制転生などとんでもない威力の上、さらに攻撃できない呪いが付加されているとか・・・。
どれだけ我に恨みがあるというのか・・・。どちらにしても解呪の方法を探らねばならんようだな・・・)
今日も今日とて結局みんなに押し倒されて袋叩きに合い、
「何だ、ハーディって勇者とか言ってたけどチョー弱ぇじゃん」
「だっせー」
「何が勇者だ、うそばっかりだな」
「はははっ」
などと散々に馬鹿にされてしまった。
「むううっ」
さすがにハーディも歯噛みするが、今のところ有効な打開策は打てそうにない。
(しばらくは魔力回路の効率化と増幅を訓練し、円滑な魔力操作を目指していくしかあるまい)
押し倒されて土で埃まみれになってしまったハーディを残して他の子供たちは帰っていく。ハーディは一人立ち上がると埃を払いながら溜息をつくのであった。
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(自分で愛称呼んでます(苦笑))
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