第11話 はじめての会話
暑い日が続いております。
皆様も体調にお気を付けください。
ハーディのひとりたっちトレーニングが身を結び、1人で歩けるようになると、ハーディの監視がさらに厳しくなった。
それはそうである。目を離すとあっという間に走り去っていなくなってしまうからである。
今日も楽しいニーナの爆乳エネルギーチャージタイムを満喫した後、ニーナの手から脱出したいのだが、しっかり抱きしめられたままベビーベッドまで連れて帰られてしまった。
(ぬう! 我はトレーニングに出かけたいのである!)
だが、もちろんニーナにはハーディの思いは伝わらない。
「さあ、ハーディちゃんお腹いっぱいになったらおねむねむしまちょうね~」
ニーナはしっかりとハーディを抱きしめて頭をなでなでしてくれる。
・・・嬉しいが、我は別に眠くないのだ。・・・決してなでなでが嫌な訳ではない。
そして、我のベビーベッドのある部屋に到着してしまう。
(ニ、ニーナよ! 我はまだ眠くないのだ! トレーニングに行かせてくれ!)
ニーナの腕の中でわたわたと暴れてみる。・・・ニーナの胸、柔らかすぎる。
どれだけ形が変わるのだ!
「ハ、ハーディちゃん暴れちゃだめよ~だめだめ!」
なんだか嫌がり方のリズムが変な気もするが、そこを気にしている余裕はない。
さすがのハーディもベビーベッドに入れられてしまえば脱出は困難だ。
今のところ、魔力コントロールはまだまだ甘く、空中を飛ぶことは難しい。
(な、なんとか脱出を・・・)
だが、敢え無くベビーベッドに寝かされてしまう。
「あうあう~」
まだまだハーディはうまく言葉を発生させることが出来ない。
伝えたいことが伝えられないもどかしさ。
(むううっ! これは言葉の発生トレーニングも必要だな!)
現在は魔力枯渇による魔力増大と魔力コントロールのための座禅瞑想を行っている。
ちなみに魔力トレーニングだけで筋力トレーニングを行わないのは『竜の叡智』の検索により赤子の間は体に負担をかけない方が良いという情報が引き出されたからだ
(早速発声練習の知恵を検索しよう)
ハーディは発声練習をするべくベビーベッドに座り込む。
「あ~~~~、あ~~~~」
よく考えれば、バブーとかオギャーとか叫び声は上げていたはずなのに言葉が自由にならないのは何とももどかしい。
通常の赤子であれば感情の赴くまま泣いていればいいのだが、ハーディは悠久の時を生きた最強の<皇帝竜>であった。そのためその知能は圧倒的にスペックが高く、現在の状態はかなりストレスの溜まるものであった。
これでコミュニケーションが取れるようになれば、だいぶやりたいことが伝わるようになるだろう。ハーディはニマニマとタニアやトーリ、ニーナたちとトークで盛り上がる姿を想像する。だが、ハーディは知らない。人間の赤ん坊はそんなにすぐべらべら喋ったりしないということを。
・・・・・・
来る日も来る日も発音が安定するように練習を重ねる。
「あ~~~~、あ~~~~」
だいぶ発音が安定してきた。
「アメンボアカイナア・イ・ウ・エ・オ」
ついにペラペラと流暢に喋り出すハーディ。
「あ、あ、あ~~~~」
ガチャ!
タニアが急に扉を開けて入って来た。
座り込んで発声練習をしていたハーディとバッタリ目が合う。
「あ、どうも」
「大人だね!」
ハーディのつい出てしまった挨拶に思わず身も蓋もないホンネでツッコミを入れてしまうタニア。決まずい雰囲気が流れる中、タニアが先に正気に戻る。
「ハーディ! アンタ喋れるようになったのかい?」
「うむ、タニアよ。いつも世話になっておるな。大儀である」
「うん、ハーディ、アンタ悪魔に取りつかれてるね」
と言って首根っこを掴んでスタスタと大聖堂に向かう。
「ま、まてまてタニアよ! 我は別に悪魔に取りつかれてなどおらぬぞ!」
ぶらぶらされたままハーディは慌てて釈明するがタニアは聞き入れない。
バンッと大扉を開けて大聖堂のマリア像前にやってくる。
そこにはトーリが居た。
「どうした?タニア」
「トーリ、やっぱりこの子、ちょっとおかしいんじゃないのかねぇ?」
と言って手でぶら下げていたハーディをトーリに突き出す。
「タニアよ、また買い物袋でもぶら下げるように勇者様をぶらぶらさせおって・・・」
トーリはしかめっ面でタニアを窘める。
「ねえトーリ。こんな赤子の時からペラペラに喋れるようになるって、どう思うんだい?」
「やあ、トーリ。ごきげんよう」
と言って手を挙げるハーディ。
「なんと! つい先日までバブーとかオギャ―とかしか言えなかったハーディが・・・。やはりハーディは神より使わされた勇者様で間違いないな!」
破顔するトーリ。能天気もいいところである。
「そんな話でいいのかねぇ? ハーディの学習能力は異常過ぎないかい? だいたい喋り方だってちょっとおかしい感じだよ。古めかしいというか、ちょっと偉そうというか・・・」
「我はそんなつもりはないのだが・・・」
「いや、そのしゃべり方がおかしいって言ってるのさ。どこで学んだんだい、そんな言い回し」
タニアに突っ込まれて、やっと何がまずかったか気が付くハーディ。
(し、しまったぁ! 通常の赤子は生まれてから学習した経験を元に知識を構築していくのだ! 我のように前世からの知識を有している者など稀有な存在なのだ)
完全にやらかしてしまったハーディ。
今さらバブーとか言っても白い目で見られるだけだろう。
「わ・・・我は天才なのだ! 天才ゆえに説明できぬ事は山のようにある!」
ハーディは不可思議な現象の理由を「天才だから」の一言で片づけた。
さすがに前世の<皇帝竜>の話や、『竜の叡智』の話は出来ないだろうという判断である。
「おおっ! さすが神の使わした勇者ハーディじゃ! 頼もしい事この上ないわい!」
どうやらトーリは納得したようだ。なぜ?
「はああ・・・もうどうでもいいさね。とにかく元気に育ってくれればね」
タニアは諦めの極致でハーディの健康だけを祈った。
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(自分で愛称呼んでます(苦笑))
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