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8話 真相

―――放課後の教室


「ここまでの話が俺の過去と昨夜に白崎さんを襲った幽霊の正体だ。」


「じゃあ、霧生君は滅霊師なの?」


「まあ…そうだな」


冬花は少し戸惑ってから


「てことは、霧生君も悪霊が見えるってこと?」


「そうだ」


「きっかけは…やっぱり、その…臨死体験?をしたこと?」


「たぶんな」


「人には見えないものが見えたときってやっぱり驚いた?」


「驚いたのもそうだけど、正直言うと…恐怖だった…」


晴人の脳内ではある記憶がとぎれとぎれで再生されていた。



―――深夜の暗い廃工場内

大鎌を肩にかついだ悪霊が滑るように素早く眼下へせまり………

……うくん……きりゅう君?

「霧生君?」


晴人は自分を呼びかける声に、はっとした。


「大丈夫?霧生君。どうしたの?」


「いや、なんでもない…」


落ち着いた顔を見せている。でも冬花には平気をよそおっているように感じられたが


「そう…」


と納得したように答えた。

晴人の血の気の引いた顔色を見て、冬花は彼の話を信じるしかなかった。

晴人は

『信じてくれたみたいだな…』

と安心した。


「ふぅーー」

深呼吸をし、しばらく外を眺めた。窓の外の景色は夕日が沈みかけていた。もうすぐ夜になりそうだった。

晴人は椅子から立ち上がり、背伸びをして


「結構話したなぁ。この続きは歩きながらにしないか?」


「うん。そうね…」


二人は帰る支度をし、学校を後にした。



晴人が自転車を引きながら並んで歩いていると、冬花がふと足を止め


「ずっと考えてたんだけど…。あたしが今回遭遇した悪霊って、放火事件の実行犯なんでしょ?」


「うん」


「じゃあ、なんで火災現場に焼死体が残ってるの?」


「それは悪霊に狙われた人の焼死体だ」


「どういうこと?」


極稀ごくまれなケースだけど、特殊な死に方で肉体から離れた悪霊の中には、人に取り憑くことができるのがいるんだ。白崎さんが遭遇したのがその例だね」


「じゃあ悪霊に取り憑かれたら普通の人には見えなくなるの?」


「うん。でも誰しもが取り憑かれるわけじゃない。ある条件を満たしている人だけが特殊な悪霊に狙われるんだ。」


「条件って?」


「う~んそうだなあ。例えば自殺願望を持ってる人とかかな?」


「えっ」


「自殺願望を持ってる人に皆共通することなんだけど、肉体から魂が半分抜けかけてるんだ。魂が抜けかけた肉体の部分に取り憑いて、元の魂を消滅させる。悪霊はその肉体を不可視化した肉体の姿で犯行を行う。」


「そう…だから普通の人には見えないんだー。可哀想に…」


と冬花は悲しい顔をして頷き

「…取り憑いた悪霊を消滅させたら…その魂って元に戻るの?」


「残念ながら…消滅した魂は元には戻らないよ」


「待って!じゃあ、あたしが見た女の子の肉体はどうなったの?」


「滅霊師の武器には、魂のない抜け殻となった肉体を消滅させる特性がある。だからその子も消滅した」


「…………」


そんな話の後、しばらく引かれる自転車のチェーンが回る音だけが響いた。角のコンビニ近くまで来ると


「あたしこっちだから…」


と冬花は右の道路を指差した。晴人は


「言っておきたい事がある」


「なに?」


「白崎さんが遭遇した悪霊は階級Dだ。白崎さんはまだ下級の悪霊しか見えていないと思う。でも、悪霊の件に関わっていくに連れて、上級の悪霊も見えるようになってしまう。悪霊は自分の存在を目視できる存在を優先して殺そうとするんだ。だから白崎さん、もうこれ以上悪霊の件には関わらない方がいい」


と静かに言った。冬花は晴人の真剣な表情をみて


「うん…わかった。じゃあ明日」

「うん明日…」


と手を振って一人で歩いていった。その後晴人は自転車に乗り、家に帰った。


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