5話 過去
五話 過去
「今回の真相の前に俺の過去の話をする」
「うん」
冬花は真面目な顔をして頷いた。教室の空気は、張り詰めたように静まり返っていた。
―――1年前。8月25日。PM2時4分
三重県のとある街。
「いってきまーす」
「気をつけてねー」
「うん」
晴人はリュックを背負い、自転車で図書館へ向かっていった。目的地に到着し図書館へ入った。ガラスの外の景色が見えるところに座り、家から持参してきた夏休みの宿題を机の上に並べ、宿題を進めた。
三時間ほど経ちひと段落ついた晴人は座って背伸びをし、腕時計を見る。時刻は五時丁度を示していた。
「そろそろ帰るかー」
と呟き机に広げていたものを片付け、帰る準備をして玄関へ向かった。玄関の自動ドアが開き、晴人は外の様子を見た。
「おいーっ嘘だろー。昼間の天気はなんだったんだ。大雨じゃねーか!」
昼間の晴れた天気が嘘だったかのような大雨が降っていて、暗くなっていた。晴人は急いで駐輪場に駆け込み、自転車にまたがって全速力でペダルをこいだ。
途中、交差点で晴人は信号待ちをしていた。その間、晴人は雨に打たれ、ずぶ濡れになっていった。信号が青に変わり、晴人は横断歩道を渡った。横断歩道の中間あたりまで進んだとき、対向車が猛スピードで晴人に近づいていた。雨のせいで視界が悪く、晴人がその車に気づいた頃にはもう宙に浮いていた。
晴人は、
『えっなんで俺は浮いてるんだ?』
と何が起こったのか理解できないでいた。
地面にたたきつけられた後晴人は
「いってー」
腰と頭をおさえて起き上がった。晴人の周りには、妙な人だかりができていた。そして晴人は人を避けながら歩いていた。しばらく歩いていると、
『あれっ体が妙に軽いなあ。まあいつもこんなもんか。』
と違和感を覚えたが気にせずに歩いていると、いままでいた街中から急に景色が一変した。晴人の辺り一面が真っ暗になった。
「わぁっなんだなんだ。なにが起きたんだ。なんだここは!」
と晴人は困惑していると、暗闇の一直線上に薄っすらと小さな光が見えた。よくわからないまま、それに向かって走っていき、光源まで辿り着くとその光は、一瞬大きく輝いた。あまりの眩しさに晴人は目を瞑った。
光が納まり目を開けるとそこには狭い空間がある。窓が無いからか薄暗く、壁や床など部屋全体が白と黒の市松模様で覆われていて異様な雰囲気だ。部屋の中心には丸テーブルと椅子二つが並べられていた。そのうちの1つに黒い大きめのコートを着て、頭にはポーラーハットを深くかぶっている男が据わっている。その男の顔が鼻の先と口元しか見えていなかった。晴人は(なんだ?このいかにも怪しいって感じのやつは)と警戒していると
「そこに座りたまえ。」
と重々しい声で、怪しい男は開いている席を示した。
/*注釈*/
市松模様…格子模様の一種で、2色の正方形を交互に配した模様。(ウィキペディアより)