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4話 疑心

廃墟での出来事から数時間ほど経ち、時刻はAM5時を少し過ぎた頃だった。

神奈川県の住宅街裏の廃墟にある2階の小さな部屋には制服姿の少女がうつぶせに倒れていた。その少女というのは冬花だった。冬花は意識を取り戻し部屋には自分ひとり以外誰もいないことに気がついた。


「あれ?あたし…生きてる…。あの時青い火の玉が当たる瞬間に私は目を瞑って…ってあれ?この後が思い出せない。とりあえずここから出て家に帰ろう。親も心配してるかもしれないし」


と言い起き上がろうとして体勢を変えると、左手付近から「くしゃっ」という音が鳴った。音がした方を見ると、そこにメモ帳から切り取ったような紙切れが落ちていた。冬花はそれを拾い上げて読むとこう書かれていた「もう夜は1人で出歩くな。殺されるぞ。」と書かれていた。そのメモを拾って、そのまま帰宅し学校へ向かった。


 朝、皆が登校し終えた頃に冬花は、教室に入り自分の席へ着いた。そして


「おはよー霧生君。昨日はごめんね」


「ん?なにが?」


「あっほらあたし昨日休んじゃったから。心配かけたかな~と思って。放火犯がどうとか言ってたじゃない?」


「ああ。白崎さんの元気そうな顔を見れて安心した」


そう言われたとたん冬花の頬が少し赤くなった。それは本人も気づいたらしく晴人からさっと顔をそらし

「ならよかった」


と言った。晴人は、急に顔をそらされたので


「俺、なにか変なこと言った?」

冬花は

「別にー」


と笑って返した。ちょうどそのタイミングで担任の本田先生が

「お前らー。席に着けー」

といつもの調子で教室に入った。先生がきたので二人は会話を中断した。


一時限目は化学で、実験室で、授業で使う実験器具の準備の最中に冬花は、


「ねえねえ霧生君。ちょっと変なこと聞いていい?」


「なんなりと」

晴人はいつも通りの表情をしている。


「この世に幽霊っていると思う?」


「うーん。どうだろう可視化されてないってだけで本当は、そこらへんにとかいるんじゃないかな。それがどうかしたの?」


「ううん。なんでもない」


と冬花は笑顔で言った。

「そっか」

と晴人も笑顔で返した。それから化学の授業が終わって十分休憩のときに、冬花は


「ねえ。放課後ちょっと時間ちょうだい」


こっそり晴人の耳元で言った。晴人は照れくさかったのか視線を斜めにそらし、それにうなずいた。


 ―――放課後。誰もいない教室で晴人は自分の席の机に座り、スマホでネットサーフィンをしながら一人で教室にいた。しばらくすると、部活から抜けてきた冬花が教室の後ろのドアから入った。晴人は


「で、話しってなに?」


とスマホの画面から目を離し冬花の方を見ると、冬花は右手を前に突き出しその手には一枚の紙切れを見せるように持っている。


「これを書いたのは霧生君よね?」


と真面目な口調で言った。晴人はきょとんとした顔で、


「なんだそれ知らないなぁ。それに俺がそんな脅迫状のようなものを白崎さんに書いてなんの得があるんだ」


「ふ~ん。そうきたかー。じゃあ霧生君は目がいいんだねーこの距離でここに書いてある文字が読めるなんて」


晴人は少し動揺したが平然を装い、


「まあな。俺の視力は両目とも1.5だ。」


「へ~そうかー。でもこの紙には私が書いたメモしか書かれてないわよー。それになんで脅迫状のこと知ってるのかな?」


と冬花は言いながら晴人に近づき、紙切れを目の前に見せ付けた。晴人は心の中で

『しまった!』

と叫んだ。

彼は表情がこわばりながらも、言い逃れる方法をあれこれ考えていた。しばらく教室中がしーんとして空気が重くなっている。そして晴人は

「ふーっ」

と溜息をつき


「俺の負けだ。いつ分かった?」


冬花は得意気に

「最初からよ。ここ最近の会話の内容を思い出してね」


「会話の内容?」


「うん。『夜遅くに出歩かないようにしよう』これは『放火犯を目撃してしまって、なにか事件に巻き込まれないようにしよう。』という意味だろうなー。と最初は思ってた。でもそれは放火犯という犯罪者ではなく、放火犯と思われるこの世の存在ではない者に遭遇しないためにそう注意したんじゃない?違う?」


晴人をビシッと指差し、「どうだ」っと言わんばかりの表情をしている。


「この世の者ではない?なんだそりゃ」


と晴人はとぼけるように言った。そして冬花は真面目な顔をして


「そうね。例えば…幽霊とか」


「なぜそう思う?」


「あたしは昨夜、廃墟を燃やそうとしていた子に『一般人にはわたしの姿を見ることができない。』と言っていた。なのにあたしはの姿を見ることができたからよ。」


「なるほどな」


晴人は納得したようにうなずく。


「霧生君。今までの放火事件について本当は色々知ってるんじゃないの?もし本当に知っていることがあるのならあたしに全部説明して」


晴人は少し考え込んでから

「何から話していいものやら」

「しかたない」と言ったふうに先日からの放火犯についてあらいざらい説明することにした。


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