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3話 放火犯

―――翌朝

晴人は自然に目が覚めると、リビングルームのテレビを点けた。いつものニュース番組のオープニング曲が流れ、


「おはようございます。朝のニュースをお伝えします。昨夜、午後8時45分頃に神奈川県の住宅街で2件目の火災が発生しました。その事故現場で身元不明の焼死体が二つ発見されており、その内1つは女性のものだと判明されたもようです。」


晴人は少し胸騒ぎがしたが

『気のせいだろう…』

と特に気にもせずにそのまま朝食を済ませて登校した。


 ―――8時30分。始業のチャイムが鳴り、本田先生が教室に入った。しかし晴人の隣の席は空いていた。晴人は(珍しいなあ。白崎さんが遅刻するのは。)と思っていると本田先生は出席確認で一人ひとりの名前を呼んでいき、


「白崎。あっ白崎は休みだったな」


と言って次の名簿の名前を呼んだ。ホームルームを終えた後、晴人が


「あのっ。先生。白崎さんは風邪ですか?」


と尋ねると、先生から驚きの答えが返ってきた。


「いやー、実はさあそれがよくわかんないんだよねー。一応親御さんとは連絡はとれたんだけど夕べ友達の家に行くって言ったっきり帰ってないみたいなんだー」

「えっ。帰ってない!?」


と晴人は驚きを隠せない表情と声色で言った。その後の先生の言葉が耳に入らなかった。晴人は

『まさか…あのニュースの焼死体の一つが…いやそんなはずない』

と考えていた。

後の授業も集中できず、そのまま下校する時刻を迎えて真っ直ぐ帰宅した。


 ―――PM11時5分。最初の火災現場とは違う別の路地裏で廃墟に侵入する人影があった。

今夜は満月がでていて月の光が廃墟の二階の部屋の窓に入り部屋中が照らされていた。その中に1人立っていたのは学生服を着た少女だった。

少女の目は開いているが、寝ぼけているようだった。そしてゆっくりと彼女は右手を高く上げた。

高く上げた右手のひらの上には青色の火の玉が現れて燃えていた。その火の玉を天井の腐りかけている木の板に放たれる直前、


「それ以上はだめーーー!」


急に叫び声がし、もう1人の少女が現れた。火の玉を持っている少女は


「あなた、だれ?」


と弱々しいような小さな声で言った。後から現れた少女は、目の前で起きている事実に少し驚いていたが


「あたしは白崎冬花!」


と声を張り上げ、堂々としている。先ほどの少女は


「そう…。あなただったのね…。昨夜からわたしを追いかけていたのは…。不思議な人もいるものね…。まさかあなたみたいな一般人にわたしの姿が見えるなんて…」


とても弱々しい口調だ。冬花はまたしても驚きの表情を浮かべて震えた声で

「えっ…一般人って……どういうこと?普通は…あなたが見えないの?」


と怯えながら1歩後ろへ下がった。


「見えないわよ…。でもあなたを殺せば私が見える人はいなくなる…。だからわたしはあなたを殺すけどいいよね…」


声は弱々しかったものの、冬花に殺意を向けた目でにらみつけ、1歩ずつ冬花に近づいていく。冬花はじりじりと後ずさりし、壁際まで追い詰められた。

そして少女は、冬花に右手で燃え続けているの火の玉を勢いよく投げつけた。声もあげられない程怯えてガタガタ震えている冬花は、火の玉が当たる寸前に自分の命の終わりを悟ったようにぎゅっと目を瞑り意識が途絶えた。



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