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1話 新生活

 1時間目の終わりの休み時間になった。クラスの女子の何人かが、晴人の席の周りに集まって話をしている。そのうちの1人が、


「ねえねえ霧生君。霧生君はどこの学校から来たの?」


「俺は三重県の私立の高校だよ」


違う女子が、

「へー、その高校ってどんなとこなの?」


「う~ん。よくある普通の学校だよ。偏差値は中の上くらいかな」


「へー。そーなんだー」


そんな会話をしていると、次の授業の男性教員が教室に入り


「授業始めるぞー。早く席につけー」

と黒板に現国の助動詞についての説明をすらすら書き始めた。晴人の席に集まっていた生徒たちが慌てて


「あとでねー」


と小さく手を振り、ぞろぞろとそれぞれの席へ着いた。休み時間のたびに晴人の周りには先ほどの女子たちが集まりができていた。その様子をクラスの男子達が眉をひそめ、ちらちらと晴人を見ていた。


―――放課後。授業が終わり晴人は、帰る準備をしていると


「ねえ、霧生君。ちょっといいかな?」


晴人は顔を上げ話しかけられた方を見ると、くっきりした二重で大きな瞳の女の子が、背中まで伸びた黒髪を揺らしながら話しかけてきた。


「あたしは白崎冬花しらさきとうか。隣の席だから色々とよろしくねー」

と明るく微笑んだ。


「うん。よろしくー」


「霧生君って前の学校では、どう過ごしてたの?」


「う~ん…俺は去年、交通事故にあってずっと入院してて……だからほとんど学校に行ってなかったんだ……。それからリハビリとか終わって、事故の怪我から完全に復帰して退院したときに親の転勤が決まって、ここに来ることになったんだ」


と少し気まずそうに話した。


「へーそうなんだー。大変だったねー。霧生君は大丈夫なの?」


と心配そうな顔をしている。


「まあ、後遺症がなかっただけでも不幸中の幸いだよ。俺はその時の事故で地面に頭を強く打ったらしいから…。あまりよく覚えてないけど」


と落ち着いた表情をしている。そして思いついたように、


「ああそういえばさーここの学校の授業の進み早いね」


「そりゃそうだよ。ここの学校は市で有名な進学校だもの。転入試験大丈夫だった?ずっと入院してたんでしょ?」


「ああ。病院でもある程度勉強しておいたから転入試験を受けたとき先生に、『学力は問題ない』って言われた。だから2学年に転入できたんだと思う」


「そっかー。霧生君頭いいんだねー」


「そうでもないよ」


と晴人は少し遠慮するように言ったが、照れくさかったのだろうか頭を掻いていた。すると冬花は思い出したように、


「あっそういえば霧生君。入る部活決めた?」


「う~ん…俺は部活に入ってなかったなー。あんまり『いいなー』ってような部活なかったんだ」


「へーそうなんだ」


「白崎さんは部活なにやってるの?」


「あたしは文芸部よ。そこで小説とか書いてるの。よかったら見に来ない?」


「いや、今日は遠慮しておくよ」


「そう?」


と答えながら冬花は、黒板の上にかけてある丸い時計を見た。時間は5時40分を少し過ぎた時間になっている。


「あっ。もう部活始まる時間だ。霧生君じゃあまた明日ねー」

「うん。また明日―」


と晴人も返した。冬花が教室から出て行った後

「部活かー。どうすっかなー」

と呟き教室を出た。


 晴人は、急いで自転車をこぎ帰宅した。晴人は父と母と晴人の3人家族で、2階建てのアパートの2階の部屋に住んでいる。夜の7時の夕食時に、晴人の母親が

「はる君。新しい学校どうだった?」

「うーん。まだ1日目だからよくわからないなー」


「そう。授業はついていけそう?」


「うん」

父は

「新しい友達はできたか?」


「うーん。友達かーよくわかんないなー。でも何人かとは話したよ」

『女子ばっかりだけど…』


「そうか」


などと転入先の学校の様子について色々聞かれた。

 ―――AM1時17分。神奈川県の街の大通りは外灯の明るさで照らされていて、これから帰宅する会社員や酔っ払っているサラリーマンであふれかえっている。街の大通りから抜けると、路地裏の道路は大通りとはまるで別世界のような夜の静けさに包まれていた。その中を何かに取り憑かれたようにゆっくりと歩いている人影があった。その人影は、1軒の廃墟に入っていった。






プロローグに続いて1話目です。まだ投稿手続きに手間取っています(汗)


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