プロローグ(主人公視点)
今回からは主人公視点でプロローグから話を進めていきたいと思います。
情景描写の情報が漠然としていたと感じた部分をここで直しました。
急に変えるようなことをしてすみません。
『…きこえる』
…君はまもなく意識確認の後、死亡と判断されるだろう…
『頭ん中にきこえてくる』
…条件といってもお願いだよ。きいてくれないかな?……
『憎たらしいあの男の声が』
…おめでとう。霧生晴人君。君は選らばれた人間の1人だ…
『俺の生き方を狂わせた……
……あいつの声が!』
「……っは」
息を吸い込むような短い声あげた後、ふと目が覚めた。真っ白い自室の天井が目にはっきりと映り、俺はゆっくりと体を起こし枕の下からスマホを取り出して側面にある電源のスイッチを押し、時刻を確認するとAM6:45と表示されている。
「急がねえと…」
俺はぼそりと呟き、スマホを手に持ったままパジャマ代わりの使っているトレパンから学校指定の制服へと着替えた。
パソコンチェアの座面に置かれている最近新調したリュックの左右のベルトを勢いよくわしづかみにし、肩に担いでから飛び出すように部屋から出た。
◇◆◇
神奈川県、私立月神高校の朝。
俺は担任の先生に会うために職員室を探すため、きょろきょろ左右の部屋へ注意ぶかく視線を向けながら廊下を歩いていく。
学校の廊下を歩きに歩き、やっとの思いで職員室を見つけの入り口の前でもう一度辺りを見回してから
「しっかし。有名な進学校だけあって広いな。ここまで来るのに結構かかったな」
と独り言を言った後、職員室のドアをノックし、
「失礼します」
とドアを開けた。
職員室に入ると丁度正面にいた女の先生がパソコンチェアに座ったまま、くるりと体をこちらに向け、
「おっ来たなー転入生。わたしがお前の入る2年C組のクラス担任の本田だ。よろしくなー」
「よろしくお願いします」
へえー、女の先生か。若そうなのにクラス担任って大丈夫かよ。
「よしっ。じゃあついて来い。これからC組に案内してやる」
本田先生は椅子からサッと立ち、職員室から出て行った。
俺はその後をついて歩いている。ショートカットで男口調、そしてビシッとした印象を与える教師だ。嘗められないように工夫してるんだな。まっ、ここは有名な進学校だし、そんな奴等はいないか。ハハ。
などと考えながら本田先生の後ををすたすたと歩き続ける。
廊下の真ん中辺りで、本田先生が歩みを止め
「ここが2年C組だ」
と大げさなくらいにびしっ教室を指差した。
そして教室のドアに手をかけ、
「簡単にホームルーム済ませるからその後に、自己紹介な」
と1人で教室へ入って行った。
「お前らー席につけー」
と教室の中から、いかにも教師らしい張った声がした。ホームルームが始まったようだ。教室の中からなにかひそひそ聞こえてくる。内容まではわからないが何を話しているのかは大体予想がつく。
あまりいい気分しないな。
俺は鼻で浅いため息をついた。
みな、それぞれの席に着いたのか教室の中から本田先生の声しかきこえなくなった。
どうやらホームルームが始まったらしい。
「えー、今日は転入生を紹介するー。入ってこーい」
と中から聞こえてきた。がらりと教室のドアを開け教室に入ると、女子同士がひそひそ話し始めた。
ひそひそ声だが会話の内容は、はっきり聞こえる。
「あの転入生、噂どおりかっこいいー」
「そうだねー。意外とタイプだったり?」
「あとで話しかけてみようかなー」
「なんで今の時期?」
などなど。
ふつうの人だったらこういう転校生シチュエーションに憧れるのかもしれない。だが、いざ夢見たこのべたな展開に直面してみてわかった。教団の近くにこうして大勢を前に立っていると、何処となく気味が悪い。
俺はこの光景に圧倒され、呆然と立ち尽くしていた。すると横から
「自己紹介しろー」
と本田先生の声で俺は正気に戻り、一瞬の間、何を言おうか少し考えてから
「はい。霧生晴人です。よろしくお願いします」
我ながらにいい自己紹介だ。余計なことを言って引かれるくらいならいっそ、シンプルな方がいい。
周りからは「それだけ?」とか聞こえてくるが、気にしない。
「よしっ。じゃあ向こうの席に座れ」
と本田先生は窓側の1番後ろの空いている席を指差した。
俺はクラス中の視線を受けながら、スタスタと指摘された席へまっすぐ向かった。その途中で俺の前の席になるクラスメイトに軽く会釈をした後にそのまま席へ着き、そのまま本田先生の数学の授業を受けた。