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10話 決意

晴人は部活動名を聞いたが、ぴんとこないらしく


「除霊研究部?」


「うん。そうだよ」


冬花はニコニコしている。


「その除霊研究部ってのは何をする部活なんだ?」


冬花は「待ってました」と言わんばかりの張り切った口調で


「よくぞ聞いてくれた!除霊研究部はね、この街に潜んでいる悪霊を霧生君が、やっつけていく部活だよー」


「俺が働くのかよ…」


冬花はきょとんとした顔で


「霧生君の他に誰が悪霊をやっつけるの?」


「まあ…そうだけど…」


「安心して。あたしも前線にでて霧生君のサポートもちゃんとするから」


それを聞いた晴人は廊下に響くような声で、


「おい。昨日も言ったよな!悪霊に関わるのはやめろって―――」


晴人が言い終わる前に冬花もそれに負けないような口調で


「あたしは霧生君の力になりたい!」


「っ」


誰もいないのもあり、このフロアでは一瞬、沈黙が覆った。


晴人は驚き、そして「力になりたい」と言う冬花の意志のある言葉に晴人の心は揺れかけたが、


「悪霊狩りは遊びじゃない!命がけだ!俺は同じ滅霊師が悪霊に殺されていくのを何度も見た!だから頼むよく考えろ!」


冬花は目に少し涙を浮かべながら


「あたしね…2件目の放火の現場を見てしまったのよ…」


「えっ」


晴人は驚いた表情を見せた。冬花は続けて


「友達の家からしばらく歩いてたら、黒い影が目の前を横切ったの…。その影がものすごく不自然だったから…後を追いかけて行ったの。そしたら、その先が火事になってて…あたしは助けを呼ぼうとしたんだけど、金縛りにあったように動けなくなってて…結局誰も助けられなかった。だから1人でも多く悪霊から人々を助けたいの!」


冬花は言い終わった後に涙をぼろぼろ流し、それを手で拭いている。晴人はしばらくなにも言わずに冬花の様子を見ていた。


晴人は戸惑いを隠した声で


「そうか…。そんなことが…」


といたわるように言った。


冬花は泣き声混じりで


「なんか…ごめんね。突然涙があふれちゃって…」


と泣いているのを見られ、赤面しながらも微笑んで言った。


晴人は一度、深呼吸をして落ち着いてから


「わかったじゃあ一緒にこの街の悪霊を1人残らず消滅させよう!」


と言いながら冬花に右手を差し出した。


「それと…俺が着いているからには白崎さんを絶対に死なせない!その…」


晴人は少し戸惑い、


「白崎さんは俺が護ってみせる!」


冬花は晴人の意思のある表情を見て頼もしく思った。涙を拭き安心したように


「うん!」


と晴人と握手を交わした。そして互いの手をぎゅっと握った。



 ―――時刻は六時を過ぎ、部活を終えた生徒達が下校し始めている時間。職員室には本田先生と除霊研究

部を立ち上げようとする2人がいた。本田先生は


「除霊研究部ってのはー具体的に、なにをする部活なんだ?いまいちぴんとこないんだがー」


「それは、この学校に元々存在するオカルト研究部と―――」


冬花は事前に答えを用意していたらしく、すらすらと何の違和感もなく本田先生の質問に答えている。

それを隣で聞いている晴人は

『よくそんなに納得させられるような答えをすらすらと思いつくな』


と感心していると、本田先生が


「そうかー話を聞く限り、一応ちゃんとした部活だってことはわかった」


と本田先生は晴人の方を見て、


「おい。そこでボケーとつっ立っている霧生!」


晴人はとばっちりを受け、


「ひゃい」

『噛んでしまった』


隣で冬花は笑いを堪えている。


「部長は白崎ってことでいいんだな?」


「はい…」


晴人はうつむきながら返事をした。


「まあー白崎は真面目だしーそこらへんはちゃんとしてくれるだろう。よしっじゃあメンバーをお前らの

他にあと3人集めてこい。そうすれば除霊研究部の設立を許可する」


と本田先生はしょうがないなあという風に『部活動設立願い』を冬花に返し、


「じゃあ頑張れよー。解散!」


と手をパンッとたたいた。


「失礼しました」


 職員室を出た2人は、帰宅しようと玄関に向かって廊下を歩いていた。


「さすが白崎さん。先生から信頼されてるな。除霊研究部って、よくよく考えると部活として変すぎるだろ」


晴人は『除霊研究部』のところを小さく笑い混じりに言った。

冬花も


「ふふっ、まあねっ。伊達だてに優等生やってませんから」


と得意気にしていた。


冬花は何か思い出したようにクスクス笑いながら


「それより、あの『ひゃい』ってなに?」


晴人は慌てて


「急に話し振られたから驚いたんだ」


「霧生君もそういうところあるんだね~」


「そんなことはない」


など、2人は話していると、進行方向から1人の女子生徒が晴人たちの方へ歩いていった。そして、そのまま玄関前のドアですれ違った。2人はそのまま生徒玄関へ入っていった。

その様子を振り返り、見ていた女子生徒は


「あー。あの人かー。大したことなさそう」


と呟き、「ふっ」と嘲笑した。




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