9話 組織
―――次の日。
登校終了のチャイムが鳴り終えた頃
「ハァッ、ハァッ、間に合った!」
と晴人は勢いよく教室の後ろ側のドアを開け、急いで自分の席に着いた。晴人の息を切らしている様子を見て冬花はクスクス笑い、
「おはよー。ギリギリだったねぇー。どうしたの?」
晴人は落ちつき、授業で使う教科書などを机の上に出しながら
「うん。少しばかり寝坊を」
「そうなんだー霧生君が遅刻ギリギリに登校するなんて珍しいねー」
と冬花はクスクス笑っている。そして
「あのさ、ちょっと提案があるんだけど、放課後ちょっといいかな?」
「いいけど、昨日みたいに追求とかするのか?」
「そんなことしないよー。なに?霧生君昨日のこと根に持ってるの?」
「そういうわけじゃないが…うん、放課後だろわかった」
「じゃあ、あたし今日は日直だから、その仕事終わるまで待っててねー。」
「りょーかい」
その後担任の本田先生が教室に入り、ホームルームが始まった。
一時限目は体育で、冬花は女子更衣室で制服からトレパンに着替えていると、先に着替え終えた二人のうちの一人が
「ねえねえ、白崎さん。白崎さんと霧生君って付き合ってるの?」
もうひとりが
「そうそう。今日の放課後がどうとかって話してたよねー」
冬花は慌てて手を横に振りながら、
「えー、そんなことないよー。席隣だから話してるだけで…。それに放課後は部活どうするのかなーって聞いてただけで…そのー付き合ってるとかじゃあないから」
話を聞きつけた別の女子が
「でもさー最近一緒に帰ってるよねー。見たっていう子、結構いるよー?」
「えっとそれはー…そうっ。偶然帰り道が同じだったからだよ」
授業開始のチャイムが鳴った。
「あっ授業始まっちゃう。早くいこー」
「あの先生うるさいからねー」
と女子たちが更衣室から急いでバタバタと体育館へ走って行った。
体育の授業で冬花は
『あたし、皆に霧生君と付き合ってると思われてるんだー。霧生君はどうなのかなー』
と準備体操をしながら考えていた。
--放課後--
その日最後の授業が終わって席を立った冬花は、
「じゃあ、待っててねっ」
「うん」
冬花は日直の仕事である日誌を提出しに職員室へ向かった。
職員室で冬花は
「失礼します」
と本田先生に日誌を手渡した。
「おー。サンキューな」
とぱらぱらと日誌のページをめくっている。
その間冬花は職員室内を忙しそうに歩いている教員やパソコンのキーボードを休みなく叩いている教員たちを眺めていた。
「あっそうそう白崎」
「なんですか?」
「いやー。最近生徒達の間で、噂になってるが霧生と付き合ってるのか?」
「えっ。そんなー先生までなに言ってるんですかー」
「ホントかー?先生、誰にも言わないぞー」
と、にまにま笑っている。
冬花は
「あはは…」
と苦笑いをしながら
『うわーぜんぜん信じてもらってないよ…』
と思った。
職員室から戻ってきた冬花は、
「お待たせ霧生君」
「うん」
教室には晴人の他に、教室にはまだ何人か生徒が残っていた。冬花は、
「場所を変えましょう」
「そうだな」
と2人は教室を出た。旧校舎へ繋ぐ2階の渡り廊下を歩いているとき冬花は、
「この前聞きそびれたんだけど、1ついいかな?」
「なに?」
「討伐点数が1万点まで貯めると、願いが叶うって言ってたでしょ。」
「うん。」
「だから、霧生君はなにをお願いするのかな?って思って。」
「うーん…願いかーなんだろう。」
晴人は右手で、おでこにかかった前髪をかきあげ、斜め上を見た。これは彼の考ええているときの癖だ。晴人の考えている様子を見て、少し「クスッ」と笑った。晴人は冬花が笑ったことに気づかなかったらしく、その後に
「まあ、そうなったらそのとき決めるさ」
冬花は元に戻っていく晴人の前髪を見て、
「ふ~ん」
と納得したように視線を進行方向に移した。それから、2階から4階まで上がり、2つ
ほど教室を通り過ぎ、廊下のつき当たりの教室の前で
「着いたわ。ここで話しましょ」
と使われていない教室のドアを指差した。
「わざわざ、こんなところまで来なくても…」
「いいの!」
晴人は、「…よかったんじゃないか」と言おうとしたところを冬花の強めの一言で、言いそびれた。冬花は
「霧生君はまだ入る部活決まってなかったでしょ?」
「うん。それがどうかした?」
と晴人は落ち着いて言った後、なにかに気付いたように『はっ』として、悟ったように
「まさかとは思うが…俺に白崎さんの部活に入部しろって言いたいのか?」
と冬花の方を見た。
「そう。名づけて『除霊研究部』」
冬花は「にこっ」と笑みを浮かべながら手を後ろに組み、晴人の顔を覗きこむように見た。
最近、忙しくなるので更新スピードが遅くなります。すみません。