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ライト・オブ・シャドウ  作者: スラリン
大寒波編
10/11

第八章 試練の僧侶

大寒波編、いよいよクライマックスです。

「チッ・・・。」

氷でできた城の中、軍服の少年は液晶画面に映し出された、サーベルドッグを倒し意気揚々と歩みを進めるライトたちを見て、忌々しそうに机を叩いた。

「・・・氷戒!」

「はっ。何用でしょうか。」

氷戒と呼ばれた、僧侶然とした男が出てくる。軍服の少年より明らかに年上で大柄な男がひざまづくのを確認してから、少年は命令を下した。

「奴らがじきにここに来る。奴らを迎え撃ち・・・殺せ。」

「・・・はっ。」

氷戒は『迎え撃て』でも『倒せ』でもない命令に少々驚いたようだが、すぐに平常心を取り戻し、杖を携えうなずき、足早にその場を去って行った。

(お許し下さい・・・。)

城の玄関前廊下に来たところで、氷戒は白衣に眼鏡の研究者と遭遇した。

「ゲネルス・・・。」

ゲネルスと呼ばれたその男は、得体のしれない笑みを浮かべながら氷戒に近づいた。

「今日、奴らがきます。例の計画の実行日ですよ?」

「ああ、わかっている。だがしかし・・・。」

「いいですか。この計画は、あなたの主君のためなのです。それはあなたも承知でしょう?」

「・・・っ。わかっている。」

返す言葉の見つからない氷戒は、まだ後ろめたそうに城を出た。その直後、ゲネルスはニヤリと笑った。

「私の崇高な研究を不意にしたモルモットが、ようやくご退場ですね。ククッ。」



♦♦♦




それから10分ほど経過して、ライトたちは氷の城。その目の前へとたどり着いた。

「ここ、だよね。」

「ああ、間違いない。俺たちの街を凍らせた奴は、あの城の中にいる!」

「もしかしたら、グレイスたちのことも知っているかも。」

「だったらなおさらだ!みんな、何が何でもあの城の主をぶっ倒すぞ!」

「おお!」

ベルクの号令に二人が力強く右手を振り上げて答えた。その後、ものの数分のうちに氷の城の扉、その目の前へとたどり着いていた。

「待て、我が主の下、行かせはせぬ!そこをどけ!」

そこに立ちはだかったのは、あの氷戒であった。氷戒は杖を構え、僧侶らしからぬ殺気を瞳に込めた。しかし、ライトたちも怯まない。

「どくのはお前だ!俺たちの街をあんなにしやがって!ふざけんな!」

すると氷戒は、忠告はした、あとは知らんとでもいうかのようにひとつため息をついた後、杖に力をこめた。猛吹雪が辺りを舞う。氷戒は、猛吹雪に負けないくらいの声量で、叫んだ。

「どうだガキども!!これだけの力を前に、なお立ち向かい、足掻くか!さあ言え!」

対するライトたちの答えは、たった一つだ。

「ああ、足掻くぜ。」

「このままで終われるかよ!町も、グレイスも、ボルトも、マグナも、トヨも!みんな大切な親友だ!それをおまえみたいな勝手な奴が踏みにじっていい権利なんて、1ミリだってありはしない!!」

ベルクの魂の叫びを前に、氷戒は満足そうに笑みを浮かべた。直後、猛吹雪も消え失せた。

「・・・合格だ。」

「はぁ?」

氷戒の突拍子もない発言に、3人が驚いていると、氷戒はさらに頭を下げた。

「まずは、君たちを試すようなことをしたのを詫びさせてほしい。すまなかった。」

「と、とにかく何のことか話してもらえませんか?」

「あ、ああ。私は、この城の主と3年前に知り合い、その主に軍への参加を誘ったたのです。しかし、本部で、私は知りました。軍の暗部を。奴らは本物の軍隊だったのです。私は恐れおののきました。しかし我が主は軍の主要幹部に抜擢され、私でさえも口を出すことはできなくなってしまったのです・・・!」

氷戒は語るうちに悔しさがこみ上げてきたのか、拳を握りしめ、歯噛みをした。

「まさかあの城塞、軍のものだったなんて・・・。」

「あの軍服の言葉、本当だったのか・・・。」

氷戒は『あの軍服』という言葉に反応して、身を乗り出した。

「まさか、我が主を知っているのですか!?」

「ああ、そいつが騎士にあらぬ噂を吹き込んだおかげでひどい目にあわされた。」

「・・・あなたたちなんですね。獣道を越え、我が主が囃した騎士さえ退けたのは。」

「ああ。」

「主の名が、知りたいですか?」

「もちろんだ。」

「たとえその名を聞いても、私の頼みを断りませんか?主を倒してほしいという、私の頼みを。」

「ああ!」

「我が主の名は・・・グレイスです。」

その言葉に、一瞬時間が止まったかのような錯覚を覚えた。3人の心臓が一瞬確実に止まった。

「グレイスって・・・、あのグレイスか・・・?」

「ええ。」

脚をガクガクと震わせながらベルクが力なく尋ねる。対する氷戒の答えは非情だ。

「・・・行こう。」

沈んだ空気を打破するように、ライトが毅然とつぶやく。その呟きは、仲間を鼓舞する乙女の決意へと変わった。

「行こう!私たちの大切な親友、グレイスに会うために!こんなとこでうなだれてたって、何も始まらない!グレイスだって、きっと私たちを待ってる!」

「ああ、そうだな。」

「どこにいたって、グレイスは僕たちの親友だ。絶対に取り戻す。」

「・・・ご武運を。」

氷戒の見送りを背に、ライトたちは城塞の扉を開ける。




♦♦♦



「氷戒・・・、貴様あああああああああああッ!!まあいい。邪魔な親友気取りどもをぶちのめしてから、なぶり殺してくれる・・・。」

軍服、いやグレイスは部下の裏切りを目の当たりにして、怒りをあらわにした。直後、玉座の扉が叩き割られた。




大変遅くなってしまってすみませんでした。

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