防衛魔術が再構築されました
ー敗北した。
ある空間で、人では無く形を成さないユイトを守る防衛魔術そのものはそう結論づけた。
侵入を許し、術式を覗かれた結果、世界の管理者である少女はシステムを把握し文字化けを解消しユイトと意思疎通にも成功した訳だが、防衛魔術はそれを知る由もなかった。
防衛魔術はユイトのメニューシステムとは切り離されており、防衛のみを担当する唯一自己学習を許された魔王式防衛魔術だった。
防衛魔術は始動直後、初めての防衛に完膚なきまでの敗北した。
その直後から、先ほどのアクセスログを分析していた。
こちらのプロテクトを一瞬で解析し、瞬時に対抗され、何もできなかった事象を何度も分析、シュミレートしていた。
こちらの対抗策は何一つ成果を出さず、いいように情報を覗かれ一方的に去っていった。
次、もし同じように侵入を許したら、もし攻撃してきたら守ることが可能かシュミレートする。何度やっても可能性は0.一パーセントすら超えない。
防衛魔術は、マスターを守る。ただそれだけだ。それをできなければ価値はない。
あの初陣は当にその存在を否定された出来事だった。
防衛魔術には決定的に再構築が必要だと判断していた。だが、どう構築し直したら良いのか方向性が分からない。
この存在が消されることになってもマスターを守らなければならない。
何か一つで良いからその術が欲しい。マスターを脅威から守る術を。
不意に、防衛魔術はマスターが何かを見つけたことに気づく。
マスターの前に姿を現したそれは、少女の姿をしていた。
しかし防衛魔術の検知機能を持ってしてもら彼女の存在に全く気づくことができなかった。
ユイトと防衛魔術は魔王の術式により結ばれており感覚や記憶を共有することができる。
それはマスターを守るために魔王が与えたユニークスキル『共有』。
先ほどの侵入者の可能性が高いと判断した防衛魔術は次の手段をすぐに導き出した。
マスターの目の前に、現れたソレは、危険を及ぼす可能性がある。
全力で守らなければ。
今度こそ。
例え、この術式が消されようとも。
防衛魔術は自身で、与えれた術式を再構築し始めた。
ー何で戦うのうか。それはマスターが知っている強力な武器だ。
ー何に構築するのか。それはマスターを恐れさせてはいけないものだ。
防衛魔術は自らを再構築していく。
今度こそマスターを守り、自らの存在を証明するために。
◇◇
自称魔王からメッセージが届いたかと思ったら、今度は自称神様が現れたよ。
もっと魔王や神様って凄いレアな存在でだと思ったんだが。
「初めまして、神様? ユイトです。」
なんかマヌケな挨拶だったが、他に思いつく言葉がなかった。
「うん。よろしくね。」
神様という言葉に少女は何の違和感を感じることもなく、無邪気な笑顔で返事をしてくれる。
「ところで、ユイトくん。色々話したいことがあるんだけど、一ついいかな。」
「はい。何でしょうか。」
「うん。君の後ろで防衛魔術が擬人化しているようだけど、大丈夫?」
「えっ?」
ぼうえいまじゅつがぎじんか? 何を言っていいるんだろう、この幼女は。とブツブツつぶやきながら後ろを振り向くワタシ。
そう言えば、最近テレビや雑誌でよくみる世界的に有名な金髪モデルが俺の中でイチオシなんだ。欧米的な顔立ちに背は俺よりも少しだけ高く。出身は忘れたが確かハンバーガーやらステーキを子供の頃から大好物と言っていたからそっちの国の人なんだと勝手に思ってた。
歳は二十歳になったとかで、まだ幼さ少し残っているんだけど、育つところはちゃんと育っているんだ。つまり黙っていても美人なのに、笑顔になるとすごく可愛いくてドキッとする。もう最強だよね!
ちなみに、その前の一押しが年上のセクシー女優のお姉さんだったのは秘密な!
で、どうしてその金髪モデルさんの話を突然始めたかと言うと、その超美人モデルさんが俺の目の前にいる訳だ。しかもモデルに似合わず軍服姿だ。自衛隊のようなミリタリー迷彩ではなく、旧某国が着ていた軍服のスカート仕様だと! 最高じゃないか!
そんな訳で、今俺の中で最も一押し美人さんが、(俺的に)最もグッとくる姿で後ろに立ち、真っ直ぐ神様を見て言い放った。
「ターゲットを視認。排除します。」
神様を排除するそうです。