鳩たちと戯れました
アイ視点のお話しです。
マスターが三本目の木刀を炎剣に燃やされた。このままだと、四本目の構築を求めれそうね。
魔力の無駄遣いは止めて欲しいのに……。
-マスター、木刀ではなく元の世界で使っていた模造刀も構築可能です。
ワタシは、チャットモードでメッセージを送った。
鳩だわ。
鳩が豆鉄砲食らった顔してこちらを見ている。
ご自身の記憶をベースに構築できることくらい知っているはずなのに、全く彼は時々抜けている。
この様子だと属性付与『炎』を覚えたことに気づくのはもう少し後になりそうね……。
鳩……もとい、マスターへ模造刀を渡し、再び子供のようにゴブリン王と訓練を開始している。
20年近く一度も勝てず五分にすら持ち込めなかった中、初めてマトモに戦えたのだ。
訓練とは言え、互角にやり合えるのは嬉しいようだ。最も本人にその自覚は無いようだけど。
「しかし、アイ殿の武器召喚魔法は何度見ても不思議だな。」
模造刀の構築を見てタリスが呟いている。
ワタシの正体を知らないタリスも構築だけは知っている。始めて会ったときに目の前で彼女が持つ槍を構築して戦ったためだ。
ただ、彼女は構築ではなく召喚と思い込んでいる節がある。この世界には構築するスキルは無いのかもしれない。
「マスターがタリスへ全てをお話する時が来たらワタシもお答えします。」
「あぁ楽しみにしているさ。」
小さなことも大きなことも拘らない彼女は、筋を通せば何でも受け入れてくれる。
ワタシは彼女その人柄に何度か救われている気がする。
しかし、ワタシが彼女の支えになったことはあるのだろうか。
「タリス、前にも伝えましたが、ワタシに敬称は不要ですよ。」
「スマンな、アイ殿……っと失礼。どうも癖が抜けなくてな。」
「まぁ無理にとは言いませんが、ワタシ達は友達なのですから、つまらない気遣いは不要です。」
当たり前のことを告げると、二羽目の鳩がこちらを見ている。
おかしいわね。豆鉄砲を構築したつもりはなかったのだけれども。
「何か驚くことを言いましたか?」
「いや、アイ殿からその言葉を貰うとは思わなかったよ。」
「友達ということですか? ワタシは一度も否定したことありませんよ。それに勝負した二人が酒を酌み交わしたら友だと言ったのはタリスだったと記憶していますが?」
「確かにそうだな……。アイ、ありがとう。」
タリスが微笑みお礼を言う。彼女のなかで一つ折り合いが着いたようだ。
心の機微が分からないワタシは、無言で受け入れることしかできなかった。
ワタシは、いつか彼女のお礼の意味を理解できる日が来るのだろうか。
「アイ! さっきよりはマシになったけど、やっぱり何度も打ち合っているうちに炎剣に折られたから、新しい模造刀を構築してくれないか!?」
少し離れたところで、マスターが叫んでいる。
……ふぅ。
-マスター、先程覚えた属性付与をご使用ください。僅かな魔力消費で武器自体の炎に対する耐久性も上がります。
それから、これ以上魔力の無駄遣いをするようなら、豆鉄砲を構築して背後から狙い撃ちますのでご注意ください。
ワタシがチャットで告げると彼は再び鳩になり動くなるが、構わず彼の手元に模造刀を構築した。
マスターは模造刀をマジマジと見ながら属性付与『炎』を使用し、子供のようにはしゃいでいる。
あら……、ゴブリンも鳩になるのね。
大切な時に必要な魔力が無いと困るのは貴方なのですからね。今のうちにしっかり武器と魔力の扱いも学んでください。
残念ながら、いつでも貴方をお護りできる訳ではありません。
ワタシもまた未熟なのです。
「なんと、ユイト殿も炎剣ができるのか……」
驚いているタリスに問いかける。
「タリス一つお願いがあります。鞭の扱いを少し訓練したいのですが付き合ってもらえますか?」
「ほぅ。フラゲルム・デイを出してくれるのか?」
戦えると思った瞬間、子供のような顔している。そんな、嬉しそうに言わなくても……。
「いえ、あれは必要な時にしか出せません。ソレを模した鞭を使った訓練です。
威力は比べ物になりませんが、ある程度ワタシの意思によって伸縮できるので、多少は近い動きが可能です。」
「冗談だよ。勿論本物でなくても大丈夫さ。あのゴブリンと戦えなくて正直ウズウズしていたところだ。
それにアイとは初めて戦ったときも途中で終わったうえに、お預けのままだっただろう?
訓練だろうが大歓迎さ。無論、手加減はしないがな。」
彼女が楽しそうに槍を構え、ワタシは微笑みで応える。
-マスター、暫くワタシも訓練を行います。模造刀は二本構築しておきましたので折れたら適当に使ってください。
なお、これ以上の破損は認めませんので。
折れ掛けた模造刀を持ったマスターへ一方的に宣言し、ワタシは白い鞭を構築し彼女と向き合った。




