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ファーストコンタクトは神様でした

 チャットウィンドウはから何度か文字化けメッセージが届いた。こちらもメッセージを打ち返そうとするが、どうするんだ?

 試しにチャットウィンドウに焦点を当てて伝えたい文字を入力するイメージをしてみる。


 「こんにちは。ユイトです。」


 打てたよ。イージーな奴め。

 しかしゲーム不慣れな人にチュートリアルって大事だな。本当に分からない事ばかりで困る……。

 気をとり直し、チャットウィンドウへ意識を向き直す。すると、こちらのメッセージに明らかに反応したように文字化けメッセージが返ってきた。


 「俺の言葉が分かるなら助けて欲しい。残念だけど、そちらのメッセージは文字化けしていて分からない。」


 もしかしたら、俺と同じように召喚された人がいるのかもしれない。例え仲間になれなくても今は情報が欲しい。

 しかし、俺のこのメッセージを最後に反応が無くなった。


 五分程待ったが応答はなく、ここまでか。そう思った瞬間今度は目の前のシステムウィンドウから不穏なメッセージが流れた。


ーシステムに不正なアクセスを確認。

ー第一階層のプロテクトを突破を確認。第二階層の隔離を実行します。

ー隔離失敗。以降の階層も固定化されました。第二階層突破まで推定四秒。第一階層のプロテクト突破方法を解析し、第三階層以降のプロテクト仕様を変更します。

ー第二階層のプロテクトを突破を確認。第三階層プロテクトの一部仕様を変更します。

ー第三階層のプロテクト侵入、プロテクトのパターンを更に変更し逆探知と攻撃者への侵入を試みます。

ー第三階層のプロテクトを突破を確認。


 意味不明なメッセージが流れてる。全然ファンタジーじゃないけど、ハッキング側と防衛側の攻防が見て取れる。なんかカッコイイな。

 でもシステムってこの画面ウィンドウ等を含むUIだよね。つまり、俺が何者かに、不正アクセスを受けているっぽい。カッコイイけど押されている状況に不安になる。プロテクトって何階層まであるんだろう。 よく分からないが頑張れ!


ー不正アクセスより一部システムデータの解析が確認されました。侵入前のデータと変更点を確認します。

ー変更点なし。侵入アクセス後の活動停止を確認しました。

ー攻撃者への逆探知失敗。

ーシステムの正常動作を確認。プロテクトの侵入方法を解析します。

ー以降、プロテクトのアップデートが確立するまで各階層のプロテクト方法をランダムパターンへ変更と多重暗号化を行います。


 防衛システムはあっさり敗北したようだったけど、特に害はなかったらしい。少なくとも今のところは。

 これってどういうことだろう。侵入者はこちらのシステムを解析だけしたってことかな。

 そして、システムの謎の防御システムは今回の不正侵入から自動で対応を行おうとしているのか。

 侵入を許したシステムが機械的に説明しているが、侵入を許したことが物凄く悔しそうに読み取れるのは気のせいだろうか。


 不意にチャットウィンドウにメッセージが流れる。

 しかし、今度は文字化けしていなかった。


 「こんにちは、ユイトくん。このメッセージが読めるなら反応してくれるかな?」


 おぉ!読めるぞ!!


 「読めます!ちゃんと読めます!!」

 すぐに返信を行う。メッセージは相手にも届いたようですぐに返信がきた。


 「ありがとう。今回は意思疎通ができる相手で良かったよ。ところでユイトくん。聖剣の反応がしたから覗いてみたら誰もいないはずの場所に突然君がいて、しかも君自身が初めて見る術式でかなり頑丈に守られているんだけど、君は一体何者なのかな。」


 安心したら、今度は不安なワードがいっぱいでてきたよ。今回は意思疎通ができる? 覗いた? 術式で守られている? ごめん、ちょっと理解が追いつかない。


 術式で守られているという意味は、さっきのシステムと謎の不正侵入の攻防と関係があるのだろうか。

 この人がシステムにハッキングした人なのか?


 こちらからメッセージの返信が無いと相手は更に言葉を重ねてきた。


 「あ、もしも不安にさせたらごめんね、ユイトくん。先に言っておくけど君が不安にすることはしないから安心してね。君がこの世界を傷つけるなら止めるけど、僕たちは意志疎通ができるからね。お互いに建設的に話しあえたら嬉しいな。僕は幾らでも待てるから気持ちが落ち着いたら少しずつでも良いから話してね。」


 不意に幼い頃、遊園地で迷子になって泣きじゃくっていた時に優しく手を差し伸べたお姉さんを思い出す。あんな感じの雰囲気だ。

 そう、俺は間違いなくこの世界の迷子なんだ。あの時と違うのは年齢と泣かないだけで、不安なのは何も変わらない。見知らぬ土地で困っている人に声をかけてくれる優しい人がいるなら、それはとても幸運なことだ。


 流れたメッセージは、こちらの反応を待つように静かになる。

 少し深呼吸して落ち着かせる。


 「ありがとうございます。先ほど俺は突然この場所に、飛ばされてきました。理由は正直分かりませんが自分の意志ではありません。」


 「空を飛んできたの?」

 端的な質問が返ってくる。


 「それも分かりませんが、多分違うと思います。俺をここに連れてきた人はメッセージで召喚という文字を使っていました。」


 「ユイトくんは何者かに召喚されたんだね。その人とは直接会ったり、話はできた?」

 「いえ、メッセージが一方的に届いただけです。」


 そこで、思い出す。このシステムがゲームと同じなら届いたメッセージをコピペできるはずだ。

 自称魔王から届いたメッセージを開き内容をすべて選択してコピーするイメージを行い、チャットウィンドウへ貼り付け試みたところ、あっさりできた。


 「これが俺に届いたメッセージです。これを読んだら、突然この場所にいました。」


 正直、どこまで情報を開示していいのか少し迷った。

 この人は、本当は悪い人で利用しようとしているのかもしれない。今はとにかく情報が欲しいし、 現時点では自称魔王よりこの人のほうが信用できそうだ。直感だけど。


 「この人、すごい丁寧なのに、無茶苦茶言ってるね。ユイトくんも災難だったね。」


 あぁチャットだけどこの人大好きだ。いますぐ抱きしめたい。男だったら両手握手だな。


 「ありがとうございます。正直混乱していたのですが、おかげで大分落ち着きました。」

 「えへへ。どういたしまして。」

 むしろずっとチャットを続けたいと思い始めてきた。


 「ところで、お名前を伺っていいですか?」


 何気なく聞いた質問だけど、これには理由があった。

 このチャットウィンドウには基本的にキャラクター名が表示される仕様だ。俺の発言にはコメントの手前にユイトと表示されているから、相手にはこちらの名前が分かる。

 しかし、相手のコメントには名前が表示されていない。つまり未だに呼び方も分からない訳だ。


 「ごめん、ごめんまだ名乗っていなかったね。」


 コメントがそこで途切れる。そのまま自己紹介してくれると思ったんだが。

 チャットウィンドウが反応する待ちながら視線を少し下から前方へ移す。

 すると、目の前に十歳くらいの少女がいつの間にか立っていた。

 白いワンピースは足元まであり素足が見え隠れする。青い髪は腰まで長く、瞳も青い。


 「改めましてユイトくん。この世界へようこそ! 世界の管理者である神はあなたの召喚を歓迎します。」

  

 満面の笑顔で世界の神は俺を歓迎してくれた。

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