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初クエストを受けました

 上位冒険者専用特別依頼 シルバーウルフの群れ討伐


 体長は全長二メートル、体重は80キロ近くある大型狼に分類され、全身が美しい銀毛で覆われたシルバーウルフ。

 集団で獲物を狩る魔物で、対象は動物、人様々。


 先月、東の森の近くに出没したと報告があり、町全体にその場所へ近づくことを禁止及び、付近の街道封鎖、今のところ人的被害はないが毛織物の対象となる動物襲われる被害の懸念や、街道封鎖に伴う物流の遅れが影響が出始めている。

 東の森付近で確認されている数は、10頭以上。

 速やかに、シルバーウルフの殲滅を依頼する。


 受付条件:シルバーランク以上(ゴールドランク推奨)


 達成条件:貸出したギルド専用マジックバックへ体の一部、または死骸を格納して持ち帰ること。状態が綺麗な死骸をそのまま持ち帰った場合、追加報酬を支払う。




 タリスさん、コレ超ベテラン冒険者が集団で挑むやつじゃないでしょうか。


 「その依頼は、先月ある商隊が東の森付近の街道を通過中に見かけたものです。張り出しの通り、物流の遅延や毛織に必要な素材が供給できず徐々に影響は広がりつつあります。我々としても、請け負っていただけるのは有り難いのですが……」


 ギルマスのマイヤーさんは、タリスさんの誤魔化した事に気づかず慎重に言葉を選んでいる。真面目な人なんだろうな……。


 「こちらは、上位冒険者専用の特別依頼となります。本日、ギルドカードを発行した皆様に依頼をお願いする訳には行きません。ギルドとしても実力が伴わない者を無下に死なせる分けにいきません。」


 マイヤーさんの言っていることは正論なんだが、最後の一言は、タリスさんには余計だった。


 「ほぅ。我々が実力不足だと?」

 タリスさん、そんなドスの利いた声で話しては行けません。


 「いえ、タリス殿の実力は確認するまでもなく折り紙付きです。例えば、貴方と貴方の部下10名程度でこの依頼を受けるのであれば我々は諸手を挙げてお願いすると思います。

 しかし、彼ら二人については我々は実力を判断できません。

 そのうえ、教会が高位神官と同等以上と認めた人物を死なせるなどしたら我々の立場も危うくなります。」


 タリスさんの身分を知っても毅然な態度で答えるマイヤーさん。彼は冒険者ギルドのギルマスとして全うしていると思う。

 命を伴う依頼のやり取りには、冒険者達のその後の人生を大きく左右することが少なくないはずだ。タリスさんも軍人が挑んで無傷で済まないケースがあると説明したのは記憶に新しい。その中で、依頼をゆだねるのに慎重になるのは当然なのだろう。


 冒険者は得てして、富や名声を求めて背伸びをしがちなのではないだろうか、そういった者たちを諌め冷静に対処するのが冒険者ギルドの人たちの大切な役目なのだろう。


 この依頼に未練も無いし、そもそもタリスさんが勝手に誤魔化して選んだ訳だし、さっさと辞めて他の依頼を受けよう。

 あの依頼を受けたければ上位に認められたときに改めて受ければ良いだけの話しだ。


 俺は、タリスさんに話しかけようとするが、僅差で事態は動き出す。


 「ならば、彼らの実力を証明すれば良いのだな?」

 「「えっ?」」


 これには、俺とマイヤーさんが驚く。 

 タリスさんが悪い顔している。

 僕知ってるよ! アレは何か企んでいるときの顔だ!!


 「マイヤー殿、確か冒険者ギルドには道場が併設されているものだと聞いたことがあるんだが?」

 「えぇ、主に若手冒険者の育成の為に簡易的なものですが、ギルドの裏に併設しています。」


 俺たちは、道場へ移動すると、タリスさんがせわしなく動き出した。数本の木刀を手早く束ね、立てた状態で固定させる。準備が整うと、木刀を一本俺に差し出す。


  最早、イヤな予感しかしない。


 「ユイト殿、初めて見せたように全力で振り抜いてくれ。」

 「いや、だけどそれだと...…」

 「良いんだ。さっ、早く。」


 タリスさんが俺の耳元で小声で囁く……近い。

 強引に促された俺は言われるがまま、立てられた数本の木刀の前で構える。


 諦めて構えたまま木刀を全力抜刀する。俺のカンストステータスによる全力抜刀は余裕で木刀達を切断する。

 そして抜刀した木刀は俺の手元から斜め前方へ豪快に解き放たれ、轟音と共に壁へダイブする。

 言わんこっちゃない。


 「見たか! マイヤー殿、コレがユイト殿の一振りで二度必ず相手を殺す技だ!

  彼は目の前にいる敵を倒すと同時に後方にいる敵まで同時に撃ち落とす。木刀でこの威力だ。

  真剣なら更に凄いぞ。」


 タリスさん、俺の壁へぶっ刺しも含めて必殺技だと言い放ちやがった。物は言いようというが、よく思いつくもんだ。

 マイヤーさんが、口開けたまま放心している。


 「さて、次はアイ殿だが……」

 言いかけたタリスさんが、アイを見て言葉を止める。

 見ると、アイはまるでダーツを投げた後のように右手を真っ直ぐ伸ばしている。

 その先には、切断された木刀の短い方に投げナイフが突き刺さった状態で床に転がっている。まさか落ちる前に射抜いたのか?


 「実力を証明するのに力など必要ないのです。」

 アイの決め台詞は、昔見たアニメの台詞をそのまま使っているはずなのだが、このタイミングで使われると嫌味にしか聞こえないから不思議だ。最早、意図的な犯行とすら思えてくる。


 「ハハッ……。アイ殿とは槍の模擬戦で証明しようと思っていたのだが、不要だったな。

 それではマイヤー殿、彼らの実力は問題無いと思うが如何か?」


 マイヤーさんが、タリスさんを見て無言のまま頷く。口が開きっ放しだ。

 「貴方方は、一体……。」


 これだけの事を見せてしまってはその存在に疑いを持つのは当然だろう。困った。


 「ワタシ達は、教会の極秘任務を受け、ある調査を行っております。不要に目立つ行動は控えたかったので、マイヤー様だけにワタシ達の実力をお見せいたしました。どうかこの事はご内密にしていただき例の依頼を受けさせていただけないでしょうか。」


 「なるほど、だから銀盤の証を持っていたのですね。それならそうと事前に話しを通していただければ良かったに……。」

 マイヤーさんは、俺とアイを見てようやく納得し呆れ顔で伝える。壁に穴まで開けたらそう言いたくなるか。


 「申し訳ございません。我々も既に話しが通っているものとばかり考えておりましが、何か手違いがあったようです。大変失礼いたしました。」


 ここで、アイがマイヤーさんへ微笑み軽く頭を下げる。美人だ。いや、そうじゃなくて、よくそんな言い訳を思いつくね。いや助かったんだけど。


 アイが頭を下げたまま、俺にメッセージを送ってきた。

 「タリスに任せると依頼の受注成功率が下がると判断し、勝手ながら最も成功率が高い手段を導き出し実行させていただきました。」


 あの女、笑顔の微笑みすら手段と言い切りやがった。

 こうして俺達は初めての依頼クエストを受けることができた。


 マイヤーさんが納得して笑顔で、二人と握手している。胸が痛い……。

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