過保護な魔王に召喚されました
俺が知ってるファンタジーって、どこかの大きな駅で魔法学校へ続く電車に乗って魔法を覚えながら成長したり、または古い屋敷の衣装ダンスが異世界に繋がっていて動物と協力して魔女から世界を救ったり、或いはゲームをしていたらそのまま出れなくなって仲間たちと協力して現実世界への帰還を目指すような友情、恋愛で彩られてドキドキ、ワクワクそんな感じだったんだが……俺の場合は少し違ったらしい。
『親愛なるユイト様
突然の召喚誠に申し訳ありません。』
そう、届いた手紙には謝罪から始まったんだ。
『本来であれば直接そちらへ出向き、頭を下げ、お願いをするのが筋なのは十分承知しておりますが諸事情により、強制的に召喚させていただきますことを平にご容赦ください。』
謝り方が凄く丁寧過ぎて逆にこちらが申し訳なくなりそうになったが、言ってることが強制的に召喚とかエグい。
『ですが、ご安心ください! あなたの身の安全と帰還は私が保障いたします。どうかお力を貸してください。微力ながら幾許かの力とアイテムをお渡しさせていただきます。』
貰える力とアイテムには興味あるけど、全面的に安全と言われると逆に怪しい。
というか、安心できる箇所が見出せないのは多分気のせいじゃない。
『ユイト様の時間の尺度から申しますと時間は五十年程度余裕があります、急ぎではありませんがお手すきの際にどうか私の元へお訪ねください。
元の世界には自力で帰還できず大変恐縮ですが、何年かけて戻ったとしても召喚前の時刻から数分程度しか変わらないうえにユイト様のお身体は何一つ傷付けずお戻しいたします。』
これって言い変えると、私のところにこないと五十年たっても帰れないよ。って脅迫ですよね? この送り主は脅迫しているのか余程の天然さんかどちらかなんだと思う。
断言しよう、後者だ。
『なお、どうしても本件について拒否される場合は、大変恐縮ではございますが自害していただければ、元の世界へ戻ることは可能です。その場合は、本メッセージを受け取った以降の記憶は勝手ながら消去させていただきます。』
ねぇバカなの? 死ぬの? 死んで戻れるって何の保証もないまま誰が死ぬの?
『長文となり大変失礼いたしました。
それでは、ユイト様のご来場心よりお待ちしております。
魔王より
P.S. 本メッセージを読み終えると直ちに召喚を開始します。』
……
俺はどこだかよく分からない荒野に一人で自称魔王のメッセージを読み直している。
西部劇に出てきそうな荒野は周りには何もなく遠くには山脈が見える、こんなメッセージのせいか、思ったよりも動じなかったので今となっては緊張感すら持つことを許されず、俺はただ一人佇んでいた。
どうしてこうなった?