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その一
「お――おっ……お、あ、あれっ?」
地に、足がついている。目の前には森が広がっている。
前後不覚に陥っていたようで、少し足下がおぼつかなく、ふらっとしてしまう。
嫌なことがあった直後のように胸がなんだか重苦しい。
「俺……は、たしか……?」
手のひらへ、それからわき腹へと視線を落とす。
そうだ。たしか、俺は恐ろしい化け物にやられて……。
「生きてる……?」
『死んでますよー』
「!?」
腰の辺りから聴こえてきた妖精サンの声。
「死んで……って、だったらなに? ここは死後の世界だとでも」
『いえいえ。ここは変わらずフロレトリノですよ。貴方が死んだ場所から一ミリも動いてません。その証拠に、ほら』
その声につられて、視線を下ろす。
すると、足下に凄惨な血の跡が広がっていた。