その六
閉め切ったカーテンの間から光が差し込む。
だいぶ日も高くなっていた。
この時間まで寝ずにゲームをやっていられる俺。その素性はお察しである。
喉の渇きと空腹に気がつき、部屋に備え付けてあるミニ冷蔵庫を開ける。
何もない。何も。
「……だり」
ネットで物資調達も容易なご時世だが、さすがに届くまで数日はかかる。それまで我慢できるとは到底思えない。
行こう。買い出しに。
着古したトレーナーとジャージ下といういつものスタイルで家を出る。目指すはすぐ近くのスーパー。
とりあえず飲み物と食い物、それらを調達だ。エコバッグを山ほど持っていざ出陣。
日の下に出た俺は不健康体そのもの。少し歩けば気だるいし、日差しもうっとうしい。これから人がたくさんいるところに行くと考えると吐き気さえする。だめみたいですね。早目に帰還せねば。
スニーカーの爪先を見つめながら歩くこと数分。
ぼーっとしながら、とりとめもなく帰ったらゲームの続きを――そんな風に歩いていたせいか。
ふいに視界が暗くなる。ついで、足を踏み外した時のショックと独特の浮遊感。何が起きた?だなんて、そんなこと考える暇もなく。
その時俺は落下したのだと思う。確証などはないけれど。
この、俺が上手く馴染むことのできないでいた世界から。
俺がどこかで憧れ、焦がれ、夢見ていた――そう。『異世界』ってやつに。