口裂け女事件1
ねえ、知ってる?この世には人の常識じゃあ計り知れない妖怪がいるんだってー
東京都内のある公園ー
「ハッ、、八ッ、、は、、」
そこに荒い息をつきながら呆然と立っている男がいた。周りには、綺麗に切断されたベンチや遊具、そして人の死体。まだ夕方前だというのに空は血のように赤く染まっていた。
「なんなんだ、、なんなんだよアレ、、、」
そのとき不意に背後から優しい声がかかる。
「ねえ、あたし、綺麗?」
男が振り向く前に首が胴から切り離された。
『都内の公園にて恐ろしい殺人事件が発生しました。犠牲者は地元の若者グループ五名で、鋭利な刃物でバラバラに切断されており、警察は複数犯による殺害として調査しておりますー』
ニュースキャスターが無機質な声で事件を読み上げていく。それをトーストをかじりながら一人の少年ー緋神開斗(ひがみかいと)が見ていた。黒髪を某万事屋の店主ーまではいかないがぼさぼさにしていて顔立ちは整っていて身長も高い。
「おー。最近は怖いねえ」
そしてもう一口かじろうとすると背後から大声がかかる。
「開斗先輩!!何してるんですか!?学校遅れますよ!」
そう声をかけたのは美吉遥香(みよしはるか)。開斗が住む長屋に部屋を借りている後輩だ。時間も頃合いのため、さっさと準備をして遥香と一緒に長屋をでる。
「先輩、ニュースがあってた公園、あれですよね」
みると、建物の間から例の公園が見える。
「ん、そういうのは専門家に任しとけ」
「だ、だったら先輩こそ解決に向けて動くべきじゃないですか。これ、絶対あやかしの仕業ですよ!」
あやかしー人々の思念により生み出された悪意が形を得て、危害を加える化け物のことだ。当然、こういうのの対策に漫画によくある秘密組織が暗躍し、人知れず治安を守っている。
「あの事件は先輩には関係ないことです!活動自粛なんてする必要ないじゃないですか!」
「えーやだよ。めんどくさいもん」
「なっ、、」
遥香は思う。この人のものぐさな性格をどうにか更生できないだろうか、と。
そうこうしているうちに学校に着き、一日を終え、遥香は帰路につく。開斗は寄り道をするため、遥香が先に長屋に着くがー
「ねえ、あたし、綺麗?」
「ッ!」
寒気を感じて、振り向くと、そこにはマスクをした女性がいるが、着ているコートが血に濡れている上に強い呪力を感じる。
(あやかし!)
素早く携帯を取り出し、開斗にSOS連絡を送ると同時に空が赤色に染まり、辺りから人の姿が消える。空が赤いということは高位のあやかしが作り出せる隠形空間に連れ込まれたということだ。こうなってしまえば開斗が来るのはもう少し後になるだろう。
「仕方ないか、、、」
そうつぶやくと、バッグから奇妙な文字が描かれた札を取り出す。
「呪装、展開」
そう唱えると、札から魔法陣が現れ、一振りの刀を吐き出し、遥香の手元に収まる。
「あら、あなた陰陽師なのね。どうりで呪力が多い」
陰陽師ー霊的エネルギーである呪力を使い、あやかしを祓う怪異専門の戦闘集団だ。
「こっちも意外でした。まさか感知ができるなんて思ってもいませんでした。封印指定妖魔、口裂け女さん」
「ふふ。余裕を見せてるようだけど、足が震えてるわよ?」
その瞬間、口裂け女の手が閃いたかと思うと、目の前の地面に大きな亀裂が入る。
「、、、!」
「さて、鬼ごっこを始めましょうか」
口裂け女がそういうのと同時に遥香は大きく後ろに下がった。
「あれ?遥香?」
珍しく早めに帰宅した開斗は遥香がいないことに違和感を感じた。いつもは自分より早く帰ってきているのだが、、その時、長屋に忘れていた携帯に着信が入っていることに気づく。メールを見ると、差出人は遥香。内容は、助けてー
「いや、まさかな、、、」
正直、かなりめんどいが、最悪の展開を予想した開斗は長屋を飛び出し、学校に向かいながら、ある場所に電話をする。
「ぐうっ、、」
ボタボタと地面に血が垂れ落ちる。
「うーん。お嬢ちゃん足が速いわねえ。呪力を噴出して加速してるのかしら?お姉さん全然追いつけないわあ」
「また、、謙遜をしますね、、あれだけ斬撃が速いなら身のこなしが遅いなんてことはないでしょう?」
「、、そんなに思うならー少し本気を出してあげるわよ?」
すると口裂け女の纏う空気ががらりと変わる。
「ッ!」
遥香は反射的に防御態勢を取る。
「遅いわ」
そんな防御をものとせず、口裂け女の振るう包丁は何度も遥香の体を斬りつける。
「ほらほらほらあ!死んじゃうわよおお!?」
「ぐ、う、、、あ、、、」
呪力と体力の限界が近づいたとき、突二人の間に雷が落ちた。
「なに?」
途端に力が抜け、その場に倒れそうになるところを誰かが優しく抱き留めてくれる。
「先輩、、、」
「遅くなった。だるかったけど呪力が濃い場所をしらみつぶしに探してたんだ」
「あらあらあ。なかなかいい男じゃない。お姉さんと一緒に踊りましょう?」
「あ、いや。おばさんには興味ないんで」
『・・・・』
この男、礼儀を知らないのか。遥香は内心で毒づく。
「ふふふ、、いままでそう言って逃げようとするやつらはいたわ。そいいう輩は、、どんなにいい男でも殺すってきめてるのよおお!!」
「あ、そうすか」
口裂け女の高速の斬撃を開斗はいとも簡単に捕まえる。
「なっ!?」
「めんどくさいから封印しなくていいよな」
すると回斗の体からチチッ、チチチッ!と音がするかと思うと途轍もない呪力の雷が開斗の右手に集まり、刀の形をとる。
「な、なああ!?」
「雷刀・飛風見」
今度は神速の斬撃が口裂け女をバラバラにした。
今作が初めてサイトにあげる作品です。つたないところやわかりにくいところもあると思いますが、お付き合いよろしくお願いします!