高校生ー秋ー
ヨルは、今よりもっといじりたいという謎のドS精神を働かせていた。
寄るなと言われれば言われる程近くに行きたくなるもので。
毎時間授業が終わり休み時間、昼休み、アルさんの所へ機嫌よく行く、それが日課になっていた。
しかし、楽しいという思いは心の中に閉じこめて冷静な態度を崩さずにいつの間にかそこにいたかのように気配を消す。
そしてヨルに気づいて逃げていくアルさんをニヤリと心の中で笑いながら見るのだ。
ある日の放課後。
ファンクラブだかなんだか分からない人達に追いかけられていたアルさん。
そこに偶然通りかかったヨルは近くの空き教室にアルさんを引っ張り込み、すぐにドアを閉めた。
驚いていたアルさんだが、ヨルが無理やり手で口を塞ぎこんだ。
その後に聞こえる足音。何やら話し合っているようだが、何を言っているのかが分からない。
少しするとその足音は遠くへと消えて行った。
ようやくヨルの手から開放されたアルさん。すぐにヨルから離れる。
「礼の1つもないのかよ。」
冷たく呟いたヨルに少し照れながらも「助かった…。ありがとう。」と言ったアルさん。意外な反応にほほぉ…と思ったヨルはこれはこれでありだな、と1人そう考えていた。
一方アルさんは、何でこいつがいるんだ!?という疑問を抑えつつも、助けてもらったことにかわりがないためお礼を言うことに。
しかし、今思えばヨルにお礼を言ったことが一回もなく罵ってばかりだったことに気づいたアルさんは、急にヨルにお礼を言うことが恥ずかしくなってきた。
そんなことも知らずに礼を言うように促すヨル。もう逃げられないと諦めたアルさんは、恥ずかしがりながらもお礼を言った。
自分でも分かるくらいに顔に熱が集まってきている。赤くなった顔を見られたくないと思ったアルさんは、すぐに顔を背ける。
そこにアルさんの顔を覗き込むようにして見るヨル。
いつの間に移動したんだ!?と思いながら手で顔を隠そうとするとそれを止めるヨルの手。
力に自信があったアルさんだが、なぜか真剣な目を向けてくるヨルに抵抗出来なかった。
両手を掴まれたアルさんは、赤面したのをヨルに見られていることに気づき「み、見るな!!」ともっと赤くなってしまった。
それを見ていたヨルは不覚にもときめいてしまい、可愛いと思ってしまった。
そして、なぜか分からない確信がない【これは…いける…!!】という謎の自信が湧いてきた。
しかし、ここで慌てては本末転倒。冷静にと思い自分の理性を励ます。なんとか落ち着いたヨルはずっと気になっていたことを聞いた。
「何で俺をそこまでして避けるんだ?」
あの日、屋上で想いを告げてから様子が急変したアルさん。その理由が何なのかずっと気になっていたのだ。まさか嫌われているのか!?と自己嫌悪しているヨル。
「そ、それは…お前があの時、いきなり好きとか言ってきたから…。
その時に俺、すんげー鳥肌たったから近づけないと思ってだな…。」※女です
赤面した顔でそんなことを言ってきたアルさん。予想外の返事にヨルの心は恋のキューピッドかよく分からんやつにズキューンと矢で射止められてしまったのです。
【こ、これは…!!】そして何やらおかしな方向に走り出したヨルの思考回路。
【アルは俺のことが好きなのでは!?】という恐ろしい考えが思いついたのです。しかし、そう思っていても表に出さないのがヨル。
冷静を装いながら「気にすんな。」というとアルさんの頭をポンポンと撫でる。
なんだか癒された気分になっているヨル。
一方急に頭をポンポンされて【なぜ撫でられた!?】と挙動不審におちいっているアルさん。
プルプル震えそうになりながらもなんとか堪える。
ふと見てみるヨルの顔。そこにはニヤリと笑うヨルがいた。※アルさん視点です。
こいつ、性格悪いな。と確信にいたったアルさん。しかし、そんな思いを壊すようにヨルはいきなり優しい笑みを見せてきた。
不意打ち+見たこともない笑顔にまたもや鳥肌が…あれ?たたない。そんなことを不思議に思いまた見てみるとやっぱり変わらない笑顔。
【な、なんだ、この不整脈は…!?】急に押し寄せてくるこの恥ずかしさと早鐘を打つ心臓。感じたことのない感覚に思いついたのは…【糖尿病…!?】なぜか危ない病名だった。
しかし、糖尿病など危ない病気にかかったことがないアルさんはそれを信じてしまった。
「ヨル!!どうやら俺は…糖尿病…みたいなんだ…」
それをそのままヨルにむかって言ってしまったアルさん。なんてバカなことをこの人はしているのだろう。そうツッコム人がいないなか、急に糖尿病とか言われちゃったヨルは当然【え?】と思っていた。しかも、ヨルも糖尿病がどんな症状か知らなかった。でも、突然告げられえたため嘘かもしれないとなぜかアルさんを疑い始めたヨル。
こいつは好きな人を疑うだなんて本当に好きな人なのか怪しくなってくる。
「どんな症状なんだ?どっか痛いのか?」
とりあえず聞けることだけ聞いておこうと思い、今考えたことを聞いてみた。
「お、おう。なんかお前の笑顔を見ると心臓が痛くなるんだ。」
すると、心臓のある位置をおさえながらそんなことを言ってきた。
普通の人ならばそんなこと信じないだろう。しかし、糖尿病の症状を知らないヨルはまんまとそのことを糖尿病だと信じ込んでしまった。本当にバカだなこいつら。誰かこいつらに常識というものを教えてやってほしい。
それはさておき、アルさんの言葉を信じてしまったヨルだが一応病院に行ってみようと言ってみた。放課後、一緒に行くことになりとりあえずその場は落ち着いたのだった。
放課後
カラスがカーカー鳴いたら帰りましょうというけれど、今日カラスが鳴くのを聞いたのは6時間目だったので帰らずちゃんと授業を珍しく受けていたヨルとアルさん。
SHRまでおわらせると、アルさんはケンカの予約をすっぽかして正門へ、ヨルはバスケに入っているためその部活を放置して正門へと向かった。
そして、2人夕日が沈む中仲良く…帰るはずもなくアルさんとヨルの間には変な距離ができていた。
遡ること5分前…
正門を出た後、近くの病院へと向かう2人。学校から徒歩15分で着く場所にあり意外と近いことから学校の生徒が怪我や病気をした時よく訪れる場所だ。
その途中、何気に2人共話していた。しかし、ヨルのある言葉がこの2人の距離をつくってしまったのだ。
それは本当に何気なく言ったヨルの言葉。
2人共普通に話していると突然ヨルが「やっぱりアルって可愛いよなー。」とあの笑顔でアルさんに言ってきたのだ。それを聞いたアルさんはもちろんビックリ。
【こ…こいつ、何急に変なこといいだすんだ…。こいつも一緒に見てもらったほうがいいんじゃないか…?】ヨルの言葉がおかしくて気持ち悪くて仕方ないと思ったアルさんは、体が勝手にヨルと距離をとりはじめた。
そして、とんでもないことを言ってしまったと気づいたヨル。【や、やばい…つい本音が…ってアルが離れて行っているだと…っ!?】急に距離をとりはじめたアルさんに取り返しのつかない言葉を言ってしまったと後悔中…。
そして今の状況にいたるのだ。なんとかしてこのビミョーな空気を壊さなければいけないと両者が思っているうちに病院についてしまった。
平日ということもあり、意外と病院内が空いていたことも重なってすぐに名前を呼ばれた。
待合室でアルさんを待っているヨル。ボーっとしながら待っているとアルさんが戻って来た。思っていたより早く帰ってきたことに驚きつつも、病気は大丈夫なのかどうか聞いてみた。
すると、体に異常はないと言われ逆に健康的とまで言われたと言っていた。
ならば、この不整脈はなんなんですか!?なぜあいつの笑顔を見ただけでおきるんですか!?と問い詰めたところ、自分で頑張ってみてね☆という軽い返事がきたそうだ。思わず殴ろうかとしていたアルさんを看護師さんが無理やり追い出したそうで…。
とにもかくにも、病名が分からなかった謎の不整脈はいずれ自分で分かっていくだろうと思ったアルさんなのでした。
翌日。いつものように登校を終えるはずだったアルさん。
しかし、謎の不良やらチンピラに絡まれてしまい、いつもより学校に着くのが5分遅れてしまったのです。はたして、なぜそんな奴らに絡まれたんだろうと考えてみると昨日ケンカする約束を放置していたことに気づき、きっとそいつらだろうという結論にいたった。
しかし、朝からいい準備体操をしたアルさんだったが顔に怪我もなく、いつも通りすぎて周りの人達は朝からケンカしてきただなんてきづいていなかった。
その変わり、眩しいほどに機嫌の良いアルさんが逆に怖くて近寄れなかったのです。
あの病院に行った日から数日後。
2人はまた仲睦まじく秋空の下の屋上で授業をさのっていました。すると、子分なのかなんなのか、2人も知らないやつがいきなり屋上のドアをバンッと勢いよく開け現れた。
そして、2人の前に慌てた様子で来ると「て、転校生が来ています!!」急すぎる展開が始まった。
その言葉を信じた2人は急いで教室へと戻る。他クラスの教室に…ね。
転校生は見事に2人と違うクラスだった。元々2人共違うクラスだったけれど、どちら違うときた。
そのため、その転校生が来たというクラスに皆のお腹がないているであろう3時間目に乗り込んだ。
周りを見渡し見覚えのない奴がいないか見渡して見る。
どんな奴なんだと見に来た2人だが授業中ということもあり、先生に自分の教室へ帰れと追い返されてしまったのです。まぁ、当たり前ですね。
追い返された2人は意外としょんぼりした姿でその教室の廊下で授業が終わるのを待っていました。いやいや、授業ちゃんとうけよう。
そして訪れた授業終了のチャイム。なるやいなや先生が教室を出る前にその中に入り「転校生って誰ですか!?」勢いよく先生に聞くと怒りながらもあいつだと教えてあげる先生。少し説教をその場でうけていた2人だったがそれが終わると教えてもらった席へと目線をむける。
そこには、1番窓側の1番後ろの席に座っているヨルといい感じの勝負になるくらいの美少年がいる。
お目目はくりくりしており窓から入ってきた風がサラサラと髪をゆらす。まさに漫画にいるような王子様。意外な人物にビックリしているヨルとアルさん。
いざ話しかけに行ってみる2人の勇気は尊敬するくらい凄いと思う、うん。
そんな2人の声のかけかたはどんな感じなのだろう。案外普通の「ねぇねぇ。」というのか、それとも変なことを言い出すか。予想できない。
クラスの人達も(あくまでヨルもアルさんも他クラスの人です)珍しい2人がいることに興味津々のお顔。お目目がキラキラしていて、さっきの授業中の目とは大違い・・・。
その中でヨルとアルさんは転校生に声とかける。
「キミ、誰?」
唐突すぎる声かけをしたアルさん。知らない人にそんなこと聞かれたら普通戸惑うし、何だこの人と思う。しかし、それをしてしまうのがおバカなアルさん。
美人だから何でも許されるわけではないんですよ、アルさん。
そんなアルさんの言葉にヒヤヒヤしているクラスの方々。ヨルはボーっとしている。ヨル、仕事してくれよ。
その中で転校生はニッコリ微笑み「ハルです」と名乗る。
まさかの神様のような対応にクラスの女子はクラリ。心を奪われてしまいました。
それなのにアルさんときたら「ハルか。俺はアル、よろしくな。」ハルに負けないくらいの良い笑顔で自己紹介。
予想外のアルさんの反応に【おっ?】と思ったハル。
【この人、僕と普通に接してくれる…なんて…良い人なんだ!】この人までもが変な方向へと思考回路がむくんですね。そんなこともつい知らず、アルさんに続いてヨルも自己紹介。
するとなぜかヨルに対して敵対心を持ち出すハル。
「ヨルさんってアルさんの何ですか?」
「は?」
急に何を聞きだしたんだろう、ハル。ヨルは何を聞かれたのか、まだ理解できていなかったが数秒たち内容を理解したヨル。
「何って…そりゃ…」
ここまで言ってそういえば何なんだろうと思いだしたヨル。
はたしてこの3人の関係はどうなっていくのでしょうか。
ちょっと変わった主人公ことアルさんとそのアルさんをめぐってなぜか火花飛び散っているハルとヨル。3人の関係はどうなっていくのでしょうか。
この先は皆さんの想像にお任せいたします。自分が好きなストーリーを描いてください。
それでは、また。
ー終わりー