戦う理由
風を切る音がした。
ドラムの首筋に短刀を押し付けていたサーラは確かに有利だった。
気を抜いたわけではなかった、ただ一瞬視線を反らしただけだった。サーラはすぐに短刀を構え直した。
ギィンと剣の交じりあう音が響く。鎧が数歩で間合いを詰めてきたのだ。サーラは後ろにステップして距離とる。
「やるな。この剣を止めるとは」
「ミロナ殺すな。生け捕りにするんだ」
「了解した」
先程のようにミロナが一瞬で間合いを積めてくる。凄まじい剣撃の数々を小さな刃が打ち払っていく。しかし何度もあの剣を避けられるほどサーラには余裕がなかった。
手が出せない。そんな隙を一つも与えてはくれないその剣の早さはまるで突風の如く。受けるだけですでに精一杯だった。
「もらった!!」
鋭い突きが頭に向かっていく。止められると短刀で薙ぎ払おうとしたが、その判断は間違いだった。
ミロナの刀身が曲がったのだ。
ローブに突き刺さりその拍子に顔が露となる。
「エルフか……些か勿体ない逸材だが仕方ない」
「何故こんなことをするの。私たちは同じ人間、差別する理由なんて一つもないはずよ」
「理由? 戦いを始めたのはお前たち森の民だ。淘汰されるべき種族がふざけたことを」
「私たちエルフはそんな事していないわ!! 私たちエルフには誇りがある!! それに戦いなんて誰も望んでいなかった……!!」
「誇りだと……? ふざけたことを!!」
剣を突き出すと勢いよくサーラに向かって伸びていく。
ただの突きではない。まるでカメレオンの舌のように本当に伸びているのだ。
これはなんだ。
サーラは動揺を隠せないまま体を捻って頭に向かってきた剣を回避する。
しかし、連撃が続くにつれ間合いをどんどんと積めらめていく。
攻撃を弾くことが限界で手がないサーラは少しずつ後ずさる。だがそれは失敗だった。
後頭部に何か圧力がかかっているような気がして回避ついでに後ろを見たときだった。
目の前にはあの大男ドラムが居り、避けようとしたが体が間に合わず後頭部を掴まれる。
大地に吸い込まれている気がした。
それほどの早さでドラムは彼女の頭を地面に叩きつけたのだ。
「-------!!」
「---------」
鎧が大男に声をあげているが、上手く聞き取れずそのまま意識を失った。




