大男ドラム
「女のガキだ!! 500グラムきっちりよこせぇ!!」
人間に突き出した小さな命は500グラムの小さな生肉となって森の民に投げ渡される。そんな馬鹿げた商売を始めた玉座のようなでかい椅子に座った大男、<ドラム>がこう言った。
「あ? ちょっと待て。そこのお前。これで三匹目じゃないか?」
しかしドラムの声はエルフに聞こえてなどいない。小さな肉を泣きながら食いついている。
「なに泣きながら食ってんだ? 三匹も連れてきといてまだ足りてないのかよ」
「黙れ悪魔が!! 俺たちがどんな思いで生きているか貴様にはわかるか!!」
喰いきった男は泣きながらドラムに苦しみを説こうとしているがその言葉に重みなどすでになかった。
「一生懸命喋るのはいいんだけどよ……お前が連れて来たことを棚にあげるなよ」
「黙れ黙れ黙れ!! 貴様さえいなけれ……ばっ……?」
男の口から血が込み上げてくる。胸が苦しい。男は自身の体に何が起きたか理解ができずそのまま地面に倒れた。
「うるせぇな。化け物め」
倒れた男の後ろには、真新しい血がべっとりとついた剣を持つ者がいた。長く細身のある剣。鍔には奇妙な装飾がしてあり真ん中に眼を模した宝石のようなものが備え付けられている。銀の鎧と甲冑で全身を包んでいた。
ドラムはその謎の剣を持つ者に尋ねた。
「なぁ<ミロナ>。本当にこの糞みたいな村にあるのかよ? その神の雫ってやつよぉ?」
ミロナと呼ばれる兵士は、剣についた血を振り払い大地に弧を描いた。
「さぁな。だが予言はそう言っていたんだろう?」
「何が予言だ。しわくちゃの婆さんが死ぬ前にぼやいただけだって話だぜ? そんなものを信じてる上の連中もどうかしてやがる」
「婆さんって……。預言者ミカエルの代弁者だって国が重宝していたじゃないか」
「それこそ化け物だ」
頭をかきながらドラムは鼻で笑う。
「俺は正直そんなもの信じてねえ。せっかくあっちでの事業が上手くいってたのによ。行けって言われたし、仕方無くここでアイツの食費稼ぎしてんだよ」
近くにある酒瓶を開け軽く口をつける。
「動くな」
酒が通る喉に短刀が押し付けられる。
それまで誰も気づかなかった。その場が緊張が走る。
「今すぐ人々を解放しなさい。さもなければそれが人生最後のお酒になるわよ」
しかしドラムは口角が上がった。




