吊られた少年
バケツに捨てる勢いで口の中に食べ物が放り込まれる。
サーラはあの後、必死になって食料を探した。折れた木やコケに生えたキノコを大量に引っこ抜き、すぐに火の前で串焼きにした。焼けたキノコの香ばしい香りで火の近くで横に横になっていた少年が野獣のような目でそのキノコに喰らいついた。
あれから数10分、少年は声を発した。
「誰だか知らないけどありがとう。もうちょっとで餓死するところだったよ」
その少年は笑顔でキノコを貪りながら喋り始める。
「私はサーラ。大丈夫? どうしてあんなところに?」
サーラは自身が罠を仕掛けたことを黙っていた。餓死寸前に追いやったのが彼女であるためである。言ったら面倒なことになるだろうと思いす少し冷や汗を垂らしながらその場をやり過ごす。
「いやー、お腹がすいてて食べ物探してたら突然縄が足に絡まって。正直何がなんだかわかんないんだよね」
「ごめんなさい」
サーラはボソボソと謝罪した。
「サーラはいったいどこから来たんだ? その耳を見たら人間ではないのはわかるけどそこの村の人でも無いだろ?」
その少年は不思議そうな顔をしてサーラに答えを求める。
「私は……ここから少し離れたところにある小さな村から来たの。まだ人間たちに見つかってないから、この事は内緒にしてほしい」
サーラは少年に対し嘘の言葉で返した。自身の村の話を避けるために人間に村は見つかってないと言う。旅の最中、聞かれるであろうと事前に考えていた言葉だ。
「ふーん。じゃあ仕方ないか。それじゃサーラはどうして旅を始めたんだ?」
最初の質問が微妙な答えだと感じているのか、少年は立て続けに質問を続ける。
「ヒュー帝国に行くためよ」
「ヒュー帝国? エルフの天敵だろ人間は。なんでわざわざあんなところに」
ヒュー帝国。
北の大地に作られた人間の国。世界の1/5の人間がヒュー帝国に滞在すると言われている。他種族との差別が強い人間は、他種族1人口が多いことを有利にこの世界の覇権を握っている。
「ちょっとした用事でね」
「そうなんだ。なんかあまり詳しいことはわからないな」
「秘密のある女性って魅力的でしょ? それよりあなた名前は? 今のところお腹へって吊るされてただけの男だよ?
サーラは冗談混じりにそう言った。
「あぁ、そうだ。そう言えば自己紹介もしてなかった。俺の名前は」
少年が名前を発しようとしたときだった。
少し離れたところから悲鳴が聞こえてきたのだ。




