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ドラゴン

 岩だらけの谷間を登り始めた時だった。何かが聞こえたような気がした。

 はっとしてメアを見ると、メアが耳に手を当てて周囲を見回している。

「メア、何か聞こえたのか?」

「聞こえた。叫び声のようなもの。羽ばたく音もする」

「どっちだ?」

「こっち」

 メアが指をさすほうに目を凝らす。遠くに山が一つある。連なる山々から一つだけ台地にぽつりと離れてそびえ立つ山だ。その山影に何かが見え隠れしている。

 そのシルエットには見覚えがあった。やつだ。

 見ているうちに山を回って影からそれが出てくる。間違いなかった。まっすぐこちらに向かって飛んでいる。また叫び声がした。聞き覚えのある声だ。まぎれもなくドラゴンのものである。

「なになに。どうしたの」

 先行していたはずのエルが谷を下りてやってきた。

「なにかあったー?」

「今、変な音がしたようですが」

 テノとセノも寄ってくる。

「やつが来た。ドラゴンだ」

 俺は口の中が乾くのを感じながら言った。

「ドラゴンって、そんな……」

 エルが言葉を失う。

「あれですか……。あんな大きなものが……」

 セノがメアの指すほうを見てぼうぜんとつぶやく。

 俺はもう一度ドラゴンを見た。もうはっきりとその姿を確認することができる。遠くの町の上を通過するところだった。風圧だろうか。羽のはるか下の塔が崩壊する。しかし俺はその姿に違和感を覚えていた。以前見たものに比べて一回り、いや二回りくらい小さい気がする。しかも色が違う。前のはただ黒かったが、このドラゴンは少し赤い感じの黒だ。別のドラゴンだろうか。

「ねえ、あれ何!」

「アンドリゼのほう!」

 谷にざわめきが広がっていた。

 そうだ。この人たちを逃がさないといけない。それに村の人々にも逃げるように伝える必要がある。でも、そのための時間がない。ドラゴンはあと数分でここにきてしまうだろう。そうしたら村までもすぐだ。何とかしなくてはならない。

 何とかできるだろうか。倒すのは無理なのか。「ドラゴンは倒せない」というカシェさんの言葉が頭の中で響く。とにかく時間を稼ぐ必要がある。そう、時間を稼ぐんだ。それくらいならできるはずだ。

 俺は心を決めた。

「俺が、おとりになって注意をひきつける。皆は村までこの人たちを連れて行って、村の人たちに洞窟に逃げるように知らせてくれ」

「私もおとりする」

 メアに袖をつかまれた。

「しかし、メア」

「ずっと一緒と言った」

 頑として聞きそうにない顔をしている。

「そうですよ。私たちも戦います」

「私もやるよー」

「こうなったら一蓮托生よ、一蓮托生」

 三人も口々に言う。気持ちは嬉しい。しかしここは冷静になるところだ。

「皆がここで戦ったら、誰がこの人たちを守るんだ。それに誰かが村までいかないといけない」

 四人が顔を見合わせる。時間がない。俺は思いついたことを言った。

「じゃあ、エル。カナルさんについて村まで連れて行ってくれ」

 妥当な選択だろう。カナルさんたちには親族のエルがついているべきだ。

「でも、……」

「頼む」

「わかった」

 エルが渋々という顔で応じる。

「それから、テノ。村まで飛んでリュダさんにみんなを逃がすように伝えてくれ」

 テノは普段はお気楽な感じにふるまっているが、実際のところこの中では一番しっかりしていると思う。きちんとリュダさんに状況を伝えてくれるだろう。

「んー。わかったー」

 テノはあっさりと引き受けた。

「では、私とメアさんは一緒に戦うということですね」

 セノが確認をしてくる。少し自信なさそうな顔だ。

「ああ、そうだ。だけど、戦うといってもドラゴンの注意をひきつけるだけだ。あまり近づく必要はない。みんなが逃げる時間を稼げばいいんだ」

「わかりました」

「わかった」

 二人がうなずく。

「とにかく、時間がない。戦闘には剣を使おう。エルは敵が出れば一人で戦うことになる。剣で一気に片を付けるんだ」

「はい」

「メア、セノ。俺たちもドラゴンには遠くから剣で雷撃を与えて攻撃しよう」

「そうですね」

「了解」

 俺は四人の顔を見回した。皆、決意に満ちている。

「よし、行動開始だ。エル、テノ、行ってくれ」

「はい」

「行くねー」

 エルが岩場を駆け上がっていく。テノはまっすぐ空に上がった。村のほうに飛んでいく。俺は剣を右手で抜いた。それを左手に持ち替えてメアとセノを見る。二人も剣を左手にもってこちらを見ていた。

「よし、行こう」

 俺は右手を高く上げた。地面が速やかに遠ざかった。


 空の上で俺たちは左手だけで剣を構えた。右手は体に引き付けていつでも動かせるように準備をする。

「それにしても大きなドラゴンですね」

 セノが恐怖の色を隠さない声で言った。

「いや、あれでも小さいほうだ」

 俺は応えた。正直なところ俺も恐ろしいが、それは口には出せない。

「小さいって……」

「ミゾ渓谷とかいうところで見たドラゴンはもっと大きかった」

「もっと大きいって、……。えっ、この地方にもう一体ドラゴンがいるんですか!」

「そういうことになる」

「そんな……」

「話はここまでだ。来たぞ」

 ドラゴンまで数百メートル。ドラゴンがこっちに気がついたようだ。轟音のような咆哮が響く。口の中に光が見えた。

「右によけるぞ!」

 右に手を伸ばす。ドラゴンから少し遠ざかる。ドラゴンが旋回した。光の球が俺たちの後方を通る。背後の山腹にぶつかって爆発した。

 赤い石の力でドラゴンのブレスは無効になっているはずだが、当たらないに越したことはない。それよりもドラゴンが俺たちの移動したほうに向きを変えてくれたのはよかった。時間を稼ぐという役目はうまくいきそうである。

 しかし、ドラゴンはさらに旋回した。俺たちに背を向けて谷のほうへ向かう。

「まずい。行ってしまう。攻撃だ!」

 俺は剣をふるった。炸裂音がして雷撃がドラゴンへと走る。メアとセノも雷撃を放った。三つの攻撃がそれぞれにドラゴンの広い背中に命中する。

 しかし、ドラゴンは気にする様子もなく飛んでいく。そういえば、アーシア軍と戦ったドラゴンも雷のような魔法をまったく相手にしていなかった。ドラゴン相手にこの攻撃は無駄なのだろうか。

「くそ!」

 行かせるわけにはいかない。俺は剣を強く握って右手をまっすぐドラゴンのほうへ突き出した。急速にドラゴンに近づく。右腕を縮めて左腕を突き出す。電車のような太さのドラゴンの首に剣を叩きつけた。

 ゼロ距離で雷撃がはじける。大皿のように大きいドラゴンの鱗が数枚割れた。ドラゴンが身をよじる。首が近づく。服の防御の上から接触する。俺は弾き飛ばされた。すぐそばを巨大な爪が通る。前足だ。俺をつかもうとする。俺は上昇して逃れた。

「タカ様」

「大丈夫ですか?」

 メアとセノが寄ってくる。ドラゴンはまた向きを変えようとしている。こっちに注意を引くのに成功したようだ。

「大丈夫だ」俺は答えた。「剣はまったく効かないわけじゃない。ただあの皮膚を傷つけるのには威力が足りないんだ」

 考える。あの鱗を突破して傷を与える方法はないだろうか。エンチャントを重ねて剣の威力を増すか、鱗のない部分を狙うかということになる。ここは両方を試すしかない。

「メア、セノ。ドラゴンの目を狙ってくれ。そこなら鱗がないから攻撃が通じるかもしれない」

「わかりました」

「タカ様は?」

「俺は剣をさらにエンチャントして攻撃力を上げる」

 ドラゴンがこちらを向いた。ブレスを飛ばしてくる。

「頼んだぞ」

 俺は二人の返事を待たずに上に飛んだ。はるか下で左右に分かれた二人が雷撃をドラゴンの顔にぶつけている。

 俺は両手で剣の柄を握ってエンチャントを開始した。一回、二回、三回、……。

 下ではセノが雷撃を乱射していた。ドラゴンがセノほうに向きを変えている。メアはすばやく飛び回り、接近して一撃を加えては離脱することを繰り返す。

 俺はエンチャントをつづけた。十五回、十六回、十七回、……。

 エンチャントが二十五回に達したとき、俺はセノの様子がおかしいことに気がついた。剣を構えることなくふらふらと高度を落としていく。そのセノに向けてドラゴンが接近する。

 俺は剣をさやにおさめて右腕をセノのほうに向けた。一気に降下する。左手でセノの右腕をつかんだ。目の前にドラゴンが迫る。

 そこにメアが現れた。ドラゴンの凶悪そうに光る右目に剣を叩き込む。光がはじけた。ドラゴンが吠える。

 俺はセノを連れてドラゴンの鼻先を降下した。すぐ上をドラゴンが通り過ぎる。

 ドラゴンはそのまま山裾に突っ込んだ。大地がゆらぎ岩の砕ける音が響き渡る。砂煙がドラゴンの体を覆った。メアの攻撃が効いたようだ。

 俺はセノの腕をつかんだまま雑草の生い茂る畑におりた。ドラゴンが起き上がろうともがいている山裾から一キロほど離れている。

「セノ、大丈夫か?」

「ありがとうございます。タカ様」

 セノが弱々しく答えた。

「どうしたんだ?」

「この剣はふるうごとに体力を消費するようです。体力が尽きてしまって……」

「タカ様、セノ。どうした?」

 メアが降りてきた。

「メア。セノの体力が尽きた。剣のせいらしい。お前は何ともないか?」

「ちょっと、疲れた」

「そうか」

 多分、乱射していたセノのほうが体力の消耗が激しかったということだろう。

「……それで、体力をなくなると同時に、飛行魔法の効果も弱まって」

「そうだったのか」

 体力が尽きると飛ぶこともできなくなるのか。それは問題だ。

 山のほうでは、ようやくドラゴンが起き上がった。叫び声をとどろかす。羽ばたこうとするが、片方の羽がおかしな方向に向いている。飛べないようだ。これでひとまずは村の危機を回避したか、と思ったがそれは甘かった。ドラゴンは地響きを立てて山を登り始めた。村のほうに向かっている。

 なんとかしなくてはいけない。そう思ったところにすぐそばに人影が降り立った。

「タカ様。今戻ったー」

 テノである。

「よくここがわかったな」

「ん、なんとなく。セノになにかあった気がしてねー。どうしたの?」

 なんとなく、でここに来るあたり、さすが双子というべきだろうか。

「剣をふるって体力を使い切ったんだ」

「そっかー。それが石の効果なんだね」

 テノは何もかも見通していたかのように言った。

「どういう事だ」

「石をエンチャントするだけで、どうしてあれだけの力を得ることができるのかということだよー。きっと石は装着した人の体力を吸い取って力に変えているんだ」

「なるほど」

 納得のいく話だ。しかし、そういうことであれば石をエンチャントしたものを迂闊に使えないということになる。俺は腰の剣を見た。これを使うと俺もただでは済まないわけだ。けれど、ためらっている猶予はない。ドラゴンは山を登り切ろうとしている。あの山を登れば村が視界に入るだろう。

「テノ。セノを連れて村に戻ってくれ」

「わかったー」

「タカ様?」メアが覗き込んでくる。

「メア、来てくれ。ドラゴンを止めるんだ」

「はい」

 俺は剣を左手にメアと空に上がった。


 背後からドラゴンに急接近する。と、ドラゴンが首をひねった。顔だけこちらを向く。同時に光の球が飛ぶ。近すぎてかわせない。瞬間、ブレスに包まれる。何事もなくブレスは通り過ぎた。

 想定していたことではあるが、肝を冷やす。

「メア、ドラゴンの注意をひいてくれ」

「わかった」

 メアがドラゴンの鼻先をかすめて雷撃を撃った。俺はいったん上に飛んでドラゴンから遠ざかる。ドラゴンがメアの動きを追う。よく見るとドラゴンは右目を開けていない。さっきのメアの攻撃は思った以上の効果があったようだ。ドラゴンも自分にダメージを与えたメアを覚えているのか、メアに向けて連続してブレスを放つ。

 メアの動きを追ってドラゴンが向こうを向いた。無防備な背中をさらしている。

 ここだ。

 俺は一気に首筋へ降下した。振り上げた剣を打ち込む。

 閃光が弾け、鱗が飛び散った。剣先が首筋を切り裂いている。ドラゴンが吠えた。首をよじる。その動きを上空に逃げてかわす。切り口から黒々とした血が吹き出した。ドラゴンが怒り狂ってブレスを乱射する。

 俺はブレスをよけながらドラゴンのすきを探した。体を疲労感が襲っている。やはり二十五回以上もエンチャントした剣だ。たった一撃でも体力をかなり吸いとられてしまう。腕が重く感じる。次で片を付けないとこちらがもたない。

 しかし、暴れ回るドラゴンに決定的なすきが見つけられない。

 口を開けたままブレスを休みなく放つドラゴンを見ているうちに、俺ははたと気がついた。ドラゴンは目同様に口の中も防御は薄いのではないだろうか。であれば、ブレスとブレスの合間に雷撃を撃ちこめばどうだろう。いや、ブレスを放つ瞬間に撃ちこめばより効果的かもしれない。

 俺はドラゴンの正面に飛んだ。ドラゴンの目が俺をとらえる。ブレスを撃ってきた。それをかわさず、突っ込む。ブレスの中を通り抜けて、開いた口の前に出る。大きな口だ。トラックをかみつぶせそうに大きい。その奥、喉のほうに光が見える。そこに向けて俺は剣を突き出した。強烈な雷撃が光に向かって走る。二つが重なった。爆発が起きる。俺は後方に飛んで逃げた。

 ドラゴンの首がはじけた。中から血しぶきが吹き上がる。その合間に炎が見える。ドラゴンは轟音をたてて倒れこんだ。

「やった。ドラゴンを倒した……」

 心地よい達成感が、全身に満ちる。と、同時に俺は痺れるような疲労感に包まれていた。体の自由がきかない。だんだんと高度が落ちていくのがわかる。しかし、どうしようもない。それどころか意識が遠のく。

 聞き覚えのある咆哮が聞こえてきた。ドラゴンだ。でも、目の前のドラゴンは動くことなく、今や全身を炎に包まれている。どういう事だろう。

 俺は疑問を抱えたまま、暗い意識の底へ落ち込んで行った。


 目を開けると薄暗い天井が見えた。ごつごつとした岩の天井だ。

 なんだろう、ここは。

 起き上がろうとするが体が重くて動けない。これでは昨日の晩と同じじゃないか。

 と、ここでようやく俺は状況が飲み込めた。俺は昨日と同じで体力を使い果たしてしまったのだ。誰かが俺を助けて運んでくれたらしい。

 顔を動かしてあたりの様子を見る。燭台がある。明かりはまたしてもこのロウソクの光だけのようだ。天井付近にロープが張られ、カーテンのように白い布がさがっている。仕切りだろう。耳を澄ますと人がひそひそと話をする声がこだましている。ここは洞窟の中のようだ。

「おっ、起きたようだな」

 声のほうを見るとカシェさんが布の間から顔をのぞかせていた。

「待っていろ。すぐ、ミーネを呼んでくる」

 そう言って行ってしまう。

 燭台があるのと反対側を向くと、人が何人か同じように寝ているのが見えた。隣はメアである。何が起きたのだろう。メアも体力を使い果たしたのだろうか。

「気がつきましたか。ここは裂け目の洞窟の臨時診療所です」

 ミーネさんが元気よく入ってきた。リュダさんとカシェさんも一緒だ。

「臨時診療所ですか?」

「そうだ。診療所は被害を受けたのでな」

 リュダさんが答える。ミーネさんは俺の手首をつかんで何かを確認してる。

「被害って何があったんですか?」

「ドラゴンだよ」

 リュダさんが言った。「君がドラゴンを倒した後、別のドラゴンが現れたんだ。そいつがまっすぐ村にやってきてブレスをうちこんだんだよ」

「そんな、まさか村は……」

 俺の頑張りは無駄だったのだろうか。全壊した村と炎に包まれる人々の姿が脳裏をよぎる。デニさんたちや、小さな子供たちはどうなっただろう。

「いや、村は八割がた無事だ。村人にもエルが連れてきたメオーダの人々にも被害はない。君が使いによこしたテノのおかげで早めに避難できたのと、エルたちのおかげでドラゴンが早々に退治できたからな」

 ほっと息をつく。しかし、気になる言葉があった。

「退治ですか?」

「皆さん」ミーネさんが割って入った。「お話はその辺で。今はよく寝て体力を回復させることが大事です」

「あの、何があったのか聞かせてください」

「しかし、……」

「聞かせてやれ。しっかり説明してやらないと夢見が悪いだろう」

 カシェさんがミーネさんにとりなしてくれた。

「簡単な話だ」リュダさんが続きを話す。「力尽きた戸田山君をメアが助けた。そこに遠くからドラゴンが近づいてきた。メアは、セノを村に運んで戻ってきたテノに君を預けると、君の剣を手にドラゴンに戦いを挑んだ。しかし、体力をすでにかなり消耗していたエルには一撃を放つだけで精いっぱいだった。その一撃でドラゴンを地面に叩き落とすことには成功したが、致命傷ではなかった。そこで、メオーダの人々を送り届けたエルがメアから剣を引き継いだ。エルはメアからドラゴンの弱点を聞いて、その言葉を実行しドラゴンを倒したんだ」

 あまり簡単な話ではなかったが、要はあの剣でメアとエルがドラゴンを倒したということらしい。本当に武器さえあれば、ここの人たちは俺がいなくても大丈夫なのだ。

「それで、メアが寝ているんですね」

「メアだけじゃないぞ。エルもそこに寝ている。君の剣は普通の人間では一撃を放つだけでもかなりの体力を消耗するらしい。テノがそう言っていたよ。常人の何倍もの体力を持つ君でなくては扱えない代物だとね」

 そう言われても、かなり体力を消費した後のこととはいえ、俺も二回攻撃しただけでダウンしてしまった。あの剣はもはや普通に扱える剣ではなくなっている。

「お話はそれくらいで。戸田山さんも満足しましたか?」

 ミーネさんが俺とリュダさんを見比べた。

「そうだな。今のところはそれだけだ。本当はまだあるのだが……」

「それは明日にするのだろう?」

 カシェさんが割り込む。

「どうかしたんですか?」

「いや、いいんだ」

 リュダさんは口をつぐんだ。

「いいですね」

 ミーネさんが俺に念を押す。

「はい」

 俺の答えにミーネさんはうなずくと、俺の額に触れた。

「では、おやすみなさい」

 その言葉とともに、俺は深い眠りの淵へと沈んでいった。



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