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ファミリーラヴァーズ  作者: シンタグマ
第二章:夏に嵐
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12

 冷静に色々なことがあった一日を振り返ろうとするけど、リビングを出る直前の隆哉とのやり取りが何度も頭の中に浮かんで落ち着かない。玲子さんのことだとか、両親のことだとか、模試の振り返りだとかもっと考えるべきことは一杯あるはずなのに。

 意味不明な叫びを口の中に押し込めながらベッドにうつ伏せて枕をこぶしで叩いているとノックの音がしたのに気が付いた。

「庸子」

 ごくりと喉が鳴る。鍵、開けてる。

「お父さんだ」

 お父さん、か。

 私はふぅと小さくため息をついて起き上がり、開けるためにドアの方へすたすた歩いていった。

 最近声、似てきた。話し方や前後の話無しに純粋に声だけじゃ区別をつける自信が無い程。

「なーに」

 平坦な声音をつくろって答える。

「夜に悪いな、今いいか」

「珍しいね」

 お風呂も入ったようで、お互いパジャマ姿だ。

 考えてみたら中学くらいから二人っきりになったことは無いかもしれない。

 妙に緊張してきた。

 私の部屋にお父さんが一人で来ることは滅多に無い。

 話題といえば、玲子さんか進路の話だって予想がつく。

 玲子さんと今日会うことについて口止めはされなかったけれど、特にいう必要も感じられなかったし後ろめたさを感じて、私から親には言っていなかった。

 彼女から親に伝わっていないかは分からない。

 もし進路の話だった場合。

 模試の問題用紙が入った鞄をチラリと見た。……早めに、言わなきゃいけないことがある。

 進路指導が始まった去年からずっと考えていたことが。隆哉とのことがあってから、決心したことが。

「この部屋、暑いな。熱中症になるぞ、冷房入れなさい」

「冷房、あんまり好きじゃないんだよね」

 頭痛がするし、うちわで十分。そう続けながらお父さんに背を向けて窓のほうへ歩み寄った。冷房いれるなら、窓しめなきゃ。

「話って、長くなりそう?」

 窓を閉める前にちらりとお父さんの方を振り向いて視線を向けると、らしくない困ったような表情を浮かべているのが見て取れた。

 私は小さく息を吸ってから、一息で聞いた。

「今日のこと聞いたの?」

 誰と会ったか、何話したか。

 お父さんは困った顔のまま、浅く笑った。

「本当は、大学入試が終わったらきちんと話そうと思っていたんだ」

 後悔がにじんだ苦い笑みだった。

「わかってる!」

 お父さんから次の言葉が出る前に急に私が大きな声を出したから、お父さんはびっくりしたように私を見た。

 私も自分の声の大きさには若干びっくりしたけど、動揺は押し隠して言い募った。

「お父さんもお母さんも、悪意で黙ってたんじゃないのなんて良くわかる。ちゃんと考えがあったんだって。好奇心もあって玲子さんと会って、結果的に色々話は聞かせてもらった。でも、その話も玲子さんの見方でしかないし、実際にどうだったのか完全に理解したってわけじゃない。玲子さんと会ってみて、直接話を聞いて、私が思ったのは、やっぱりお父さんとお母さんが私の親だってことなんだよ」

 ゆっくり話すように内心努力したけど、早口になったような気がする。

 しかもかなり恥ずかしさを感じるくらい、熱い内容になった気がする。

「だから、今はお父さんからその話については詳しく聞かない。本来、お父さんたちが言おうと思った時期に聞きたい。私が言いたいのはそれだけなんだけど」

 お父さんは聞きながら、あっけにとられたような顔から柔らかな笑みへ、表情を変化させていた。

 私はといえば、一気にしゃべりすぎて少し息が切れた。かっこ悪い。

「……そうか」

 しばしの沈黙の後、お父さんはそれだけ言った。

「そうだよ、それ以外に何か用事ある?」

「いや、ない」

「そっか……、ならちょっと私からも話があるんだけど、聞いてもらってもいいかな」

 私はお父さんから視線を外して、机を見た。

 ノートと参考書が片隅に積み上がっている。背表紙が見えないように挟んだノートより一回り小さく、分厚い本に目をやった。

「私の、志望校について」 

みなさま、良いお年をお迎えください♪

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