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ファミリーラヴァーズ  作者: シンタグマ
第二章:夏に嵐
19/30

 産みの親であるらしい高浜玲子さんからメールで連絡が来たのは夜も更けた時刻だった。

『昼間はどうもありがとう。高浜玲子です。

 仕事のため連絡がこんな時間になり申し訳ありません。

 金曜の夜か日曜に時間があったら会えませんか。』

 暗い部屋の中光る画面を見つめ、細く息を吐き出した。今週末は模試がある。日曜の午後三時に終わる予定だ。

 ためらったのは一瞬だけだった。直ぐに返信画面を開く。

『日曜夕方からなら大丈夫です 模試が三時までなので』

 それだけ打ち込んで直ぐに送信する。すぐに模試会場の場所を問うメールが返ってきたためそれに返信すると、試験終了時間に会場最寄駅前にて集合する提案がされた。異存ないといった意味合いのメールを返し、玲子さんとのやり取りは終わる。

 寝入りかけていたのに目が覚めてしまった。

 私は静かに起き上がり、学習机に腰を下ろして閉じたばかりの問題集とノートを広げた。

 過去はけして変えられない。私があの人に会うのは、事実を知りたいだけだ。そこから先に望む事など何も無い。

 純粋なる好奇心。大したことではない。

 何度もそう思いながらテキストの文字を追っているうちに、浮ついた気持ちは落ち着いてきた。

 集中して勉強に取り組まないと。私は受験生なのだ。

『要らない子の癖に』

 不意に頭に響いた遠い記憶の中の言葉は、以前ほど私の心に痛みを与えなかった。


 そわそわしながらも夏期講習へ行ったり、その復習をしたり、家事の手伝いをしたりしていたらあっという間に週末になった。レベルが高い模試のため手を抜くことはできない。寝不足気味の頭で筆記用具と学生証や財布など受験に必要となる持ち物のチェックを行う。

 玲子さんは明日、模試会場の駅まで迎えに来てくれるらしい。お気に入りの店に連れて行ってくれるとの話だけど、はっきり言ってこっちはファミレスでも何でも良い。肝心の話だけ聞いてさっさと帰りたいというのが本音だ。今更馴れ合う気は全く無い。

 勢い良くファスナーを閉めてから鞄を足元に放って、私はベットに横たわった。

 何だか、ほんと最近精神的に疲れている気がする……。

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