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「ま、『弟』なんで。少しくらいワガママ聞いてよ。」
こんなときだけ弟アピールってどうなんだ。
そう思いつつも、隆哉の悪びれない笑顔につられて苦笑がもれる。
私の表情が緩んだのを見て安心したように隆哉は息をついた。
「まーさ、いつまでも弟扱いじゃキツイけど。」
私は気まずさを感じて思わず目を伏せた。
だって、弟でしょ……。
それを崩すことは、してはならない。
「これまでずっと考えてたし、夜も考えてた。
オレとお前が半分だけだけど血つながってるのはどうしようもない事実だし、オレはそれをどうでもいいって思うけど、お前がそう思うとは限らない。」
隆哉は紅茶のカップをに視線を移して言った。
「そんなん、わかってたし。お前は普通にしててよ、そのまんま。頑張るんで。」
どう返事を返せば良いか困って、私はとりあえず微妙に笑ってみた。
……なんて言うか、やっぱりズルくはないですか。
悶々とした表情でいると、私の肘のすぐ横に隆哉は肘をついて顔を寄せた。
「言いたいことがあればどうぞ。」
「イイエ何も。大丈夫です。」
硬直し気味に私がそう答えると、隆哉は一瞬不機嫌な表情を見せた。
「口癖かもしれないけど、全然大丈夫に見えない時がほとんどだよなー、お前。」
皮肉っぽく笑って言う。
「大丈夫ってよく言うけど、それって周りを拒絶してんだよ。」
なんか、かちんときた。
「別に、拒絶なんかしてないけど。」
「つもりはなくても。……お前、いつも頑張ってて俺にはそんなんできないからすげぇって思うけど、なんか見てて苦しくなる。」
隆哉の表情も口調も真剣なものになっていて、私が口を挟む隙はなかった。
「だから、お前の支えになれたらって思ってた。ガキだけど。
なんかウチ、普通の家庭よりは色々あるだろ。気にすんなって言ってもお前は気にしちゃうの見えてるし。
もっとオレを頼ってよ。そりゃ二コも年下だしわかんないこと一杯あるけど。
でも話聞くくらいなら、出来るんで。」
隆哉の言葉に視界の端がちょっとにじんだけど、我慢。そう連日泣いてたら姉のプライドに関わる。
はっきりいって、告白なんかより嬉しい。
暖かい気持ちが心の底から溢れてくる。
ってか。あれ。
「え、今までもしてたよね。頼りにしてるし、色々話したりとかもしてたし。」
「でも、線があるじゃん。オレはそれが気に入らないの。」
私のわずかな抵抗はあっさり切り捨てられた。
「そんなぁ、一体どうしろと……。」
心の中は自由でしょ。
もーなんなのメンドクサイ。
ネムイし。頭が働かないときにこんなシンドイ会話をなぜしなきゃいけない。
がっくり頭を下げていると、後頭部に隆哉の手が乗った。
「お前の……なんつーか味方だってこと忘れんなってこと、言いたかったっていうかさ。
一杯考えたんだけど、結局何言ってるか意味わかんねー。ゴメンね。」