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ファミリーラヴァーズ  作者: シンタグマ
第一章:嵐のきざしと宣戦布告
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 隆哉の事は気にしないようにして、テーブルにトーストと紅茶を並べる。

迷ったけれど、結局パンは二枚焼いていた。

隆哉が食べなくても、お父さんかお母さんに食べてもらえばいいし。

冷蔵庫からピーナツクリームを取り出して、それをすくうスプーンを用意する。

……。

なんかずっと視線を感じるけれど、気にしないようにする。


 椅子を引き座って紅茶を一口飲んで目を閉じると、急に眠気が襲ってきた。

あー眠い。

今日、午前だけの授業で良かった。一応優等生で通ってるので、居眠りする自分は許せない。

目を開いて、トーストにクリームを塗る。

胃がムカムカするけど、何か食べないと授業中お腹が減ってしまう。

トーストにかじりつくのと、私の横の椅子が引き出されるのは同時だった。

「なんかお前って動物っぽいよね。」

笑いをにじませた声でそう言いながら、椅子に腰掛けたのは隆哉。

前から「お前」って呼ばれてたけど、それがやけに癪に障る。

四人がけのテーブルで三席空いてるんだから、わざわざ隣に座らなくても良いと思うんですけど。

隆哉側の身体半分に意識を持ってかれそうになるが、どうにか我慢した。

普通のことでしょ、いつもの席だし。

「紅茶、アレ。パン食べるならどうぞ。」

目は向けず、そっけなくそう言う。

少し身体を隆哉と反対側にずらしたのは誤差の範囲です。

「どうも。」

紅茶を取るために伸ばされた隆哉の腕が目の前を横切る。

スポーツメーカーの半そでТシャツから覗く腕には程よい筋肉がついていて、私の腕とは全然違うんだなぁとしみじみ思った。

私の腕、どう見ても筋肉より脂肪のほうが多いもんね。血管見えないし。

トーストをもぐもぐ食べながらさりげなく横目で隆哉を見上げると、紅茶を口元まで運んだ彼とばっちり目が合った。

私が思い切り目を逸らすと、隆哉は苦笑交じりに小さくため息をついた。

「……あのさ、もうちょい普通にして。」

「え、全然おかしくないでしょ、フツーだし。」

私はそう言いつつ、パンをくわえたまま椅子をずらし、隆哉から身体半分遠ざかる。

ぎぎー、という椅子を引く音が白々しく部屋に響いた。

「意識してくれんのは嬉しいけど、そういう態度とられたらちょっと傷つくっていうか。」

隆哉が紅茶をテーブルに置く音が響く。

「そんなに構えられると期待に答えなきゃいけない気になるよね。」

「はぁ!?」

彼の笑顔、とても邪悪な感じなんですけど。

パンを落としそうになったが、どうにか持ち直す。

あーあ、指にクリームが付いちゃったよ。

「庸ちゃんは普通にしててよ。急に今までの関係壊せるとは思ってないし。」

苦しめば良いとか、普通にしててとか……好きだ、とか。

「ずいぶん色々勝手なこと言うよね。」

隆哉を見る私の視線は、相当恨めし気なものになっていたと思う。

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