猿解魔術
フィーロから王都に向かう道中、人の背丈より少し小さい猿型魔獣と出くわしていた。
その猿は人を襲わない、比較的友好な魔獣だった。まあ、猿をいじめたりすれば怒るけど。
「猿はこの辺りでは珍しいよね。」
「…あ!ちょうど試したい魔術があったんだ!」
「へー、何て言う魔術?」
「猿解魔術!」
えんかい…?盛り上がっていこうぜー!的な?飲み会の幹事くらいしか使えなくない?
「どんな効果なの?」
「猿の言っていることが理解できる魔術らしい。脳周辺の魔力を読み取ってそれを俺達が分かる言語に変換してくれると予想しているがまあとりあえず試してみようか!」
あー猿に解るね。にしても、よくそこまで無呼吸で言えるよな。なんで息切れてないんだよ。でもこれくらいじゃないと本当に強い魔術師にはなれないのかもしれないな。
「麗麗鏽瑠黴贐饗璽鬣黷…」
お、やっぱり詠唱が速いなー。早口言葉でもしてる?ってくらい速い。もう詠唱を終えたのか。
「…効果範囲を設定できる魔術だったから大人数で猿の話を聞くことを前提として造られた魔術なのかもしれないな!」
いつもと同じく目を輝かせてるなー。懐中電灯として使えるんじゃないか?
「じゃあ、私にも聞こえるってこと?」
「そ」
へー面白いな。猿って普段どんなことを考えてるんだろ?
「おい、オメーら、何のようだ!」
おおー、猿がしゃべった。にしても声たか!たしかにいつもはウキウキキャインキャイン言ってるもんな。
「脳周辺の魔力を読み取るっていうのは予想通りだがそれ以外の魔力の軌道はすべて見えないようになっているから…」
うん、それがわかったところでどうするんだ魔術オタクよ。
とりあえず猿に話しかけてみるか。
「なにしてるの?」
……あれ?返事が返ってこない?
「ほうほう!会話できる魔術ではなく一方的に猿の話を聞ける魔術というわけか!まあそれもそうか。こちらが一方的に魔力を読み取っているわけだもんな。しかし言語の変換はどのようにして…」
うん。しばらくヤマトには話しかけずに考察させてあげよう。わからないしな。まあ猿の観察でもしとこう。
「ガンつけてきたくせによー。まあいいか。」
まあそういう反応になるか。
「あーバナナ欲しー」
あー金欲しーみたいに言うな。そんな高い声で。ちょっと子供っぽい声で。
「そろそろメス見つけないとおいてかれるなー」
彼女つくらないともうみんな結婚し始めてるよー的なことを堂々と言うな!…いや私らしか聞いてないのか。
「でもみんなに溶け込めないもんなー。メスにもモテないか」
なんかぼっち陰キャコミュ障で彼女作れない成人男性に見えてきたな。
「悲しくなってきたから帰って寝よ」
…人間社会も猿の社会も同じで世知辛いんだなー。ヤマトは猿の話も聞かずに考察してたから、私しか猿の話を聞いてなかった。なんとなく辛かった。




