「第8話 惑わされるな!~幻影の試練~」
次の部屋に入ったリオナとアリシアは、周りを見渡した。
すると、床から黒い霧がゆっくりと立ち上り、部屋全体を黒く包んでいく。指先で触れるとわずかにモチの感触が残った。
「これは……一体何?」
「私も何が起こるか分からないわ。慎重に進みましょう」アリシアが小さくため息をつく。
二人は手首を繋がれたまま、ゆっくりと足を進める。しかし、霧は次第に濃くなり、隣にいるはずのアリシアの姿も見えなくなった。
その時、目の前にアリシアそっくりの人影が浮かぶ。
「リオナ。あなたは最強の剣士にはなれないわ」
心臓がぎゅっと締め付けられた。
「アリシア……何を言ってるの?」
「あなたには失望したわ。私を盾にするなんて」
「違う。あなたはアリシアじゃない……手錠は繋がってるはず。目の前のあなたが本物なわけない。アリシア、返事して!」
隣の本物のアリシアに声をかけても、返事はない。
「うそ……手錠は繋がってるはずなのに、どうして返事がないの?」
目の前の人影がゆらりと笑った。
「私はここにいるじゃない、リオナ」
「嘘よ!そんなの認めない!」
(これは偽物……手錠は繋がってる。)
「認めろ!私を盾にしたリオナ!」
「やめて……やめて……やめてええええ!」
(偽物だって分かってても、アリシアの声が刺さる……!)
リオナは深呼吸をひとつ、剣を握りしめる。
(これは偽物だ。なら、やることはひとつ)
霧の中の人影に向かって切りつける。
一方、アリシアの視界には、自分より背の低い魔女の人影が現れた。
「久しぶりね、アリシア。私を傷つけたぶりだね」
「く、クリスタ……どうしてここに?怪我はもう治ったの?」
「ええ。あなたがグリーンヴェイルまで逃げている間にね」
「そっか……良かった」
「良くないわよ!アリシアのせいで私の人生は崩れたの。どうしてくれるの?」
「ごめん……私が呪いの怖さに気づけず、あなたを……」
「言い訳するつもり?私の人生を壊したくせに。あなたなんてここには必要ない。出て行って、早く!!!」
「わ、私は……傷つけるつもりは……」
「アリシア!それは偽物よ!」
霧で視界は遮られているが、隣からリオナの声が聞こえた。
「偽物……そういうことね」
アリシアは目を閉じ、リオナの声を頼りに息を整える。
「私を信じられないの、アリシア?私たち恋人でしょ」
「そうね……でも、クリスタは、そんな言葉で縛ったりしない」
杖の先から水流が一気に放たれる。
澄んだ波が霧を呑み込み、人影を洗い流した。
光の粒が散り、人影は儚く溶けていく。
霧が晴れ、足元にはモチの残骸が散らばっていた。
(あの人影はモチだったのね……)
「良かった……アリシアも無事で」
「リオナのおかげで助かったわ」
「どういたしまして。私、役に立てたんだね」
胸の奥がふっと温かくなる。
(アリシアに褒められると、どうしてこんなにも嬉しいんだろう)
二人が周りを見渡すと、遠くに大きな門が見えた。
「あそこね。行ってみましょう」
門の前には看板が立っていた。
よくぞ。我が幻影の試練を攻略した。
他の部屋を攻略した時、この門は開かれる。
「あとはエリナたち次第ね」リオナがつぶやく。
「リリィちゃんたち、大丈夫かしら……」
物語はそのまま、リリィ・エリナ視点へと続く。
この物語は百合オタクの自分が趣味で書いてます。自分用ですが、読んでくれる人がいれば嬉しいです。投稿頻度は不定期です。




