「第13話 夜の森と透明な空間」
外の空気は、ひんやりとして心地よく、サンセットブルームの蕾が静かに閉じかけていた。
長い戦いを終えたリオナたちは、森の外れで休むことにした。
白い床の柔らかさが恋しくなるほど、地面は固いけれど――それでも、生きて帰れただけで十分だった。
「ふぅ……やっと外に出られたね」
リオナがため息をつくと、アリシアが小さく笑う。
「疲れたでしょう。今日はもう休みましょう」
「ここで野宿するのか?なら見回り役が必要だな」
「それは問題ないわ、リリィちゃん。魔具は知ってるかしら?」
「それって食べ物?」
「ふふっ。違うわ、食べ物じゃないの。魔具はその名の通り、道具に魔力が込められたアイテムのことよ。いろんな場面で役立つの」
「なるほど。じゃあ今回、その一種を使うのか」
「そう。冒険者に必須級の魔具を今回使うわ」
「お姉ちゃんの私物?」
「そうだけど、そんなたいした物じゃないよ。それにアリシアも持ってるでしょ?」
「そうね」
「それで今回使う魔具はどんなやつなんだ?」
「よくぞ聞いてくれたわ。これを使うのよ」
リオナは鞄から小さな筒状の物を取り出した。
「全然すごい物に見えないゾ」
「まだ収納状態だからね。よーく見てなさい。それっ」
リオナが筒を広げると、丸まった布が空中でふわりと膨らみ、あっという間にテントの形になった。
「おお~、これはすごいな」
「でしょ。でもここからもすごいのよ」
パチン。リオナが指を鳴らすと、テントが透明になった。
「消えちゃったゾ。どういうことだ?」
「厳密には消えてないわ、リリィちゃん。このテントはクリアワームの糸から作られているの」
「つまりどういうことだ?」
「透明にして姿を隠せるってことよ」
「見回りいらなくなるのか」
「そういうこと。しかも、万が一襲われても音が鳴るオプション付きよ」
「私のもあるから、一つのテントに二人入る感じね」
「もちろん。エリナはお姉ちゃんと一緒ね」
「ふふっ。そんな気がしてたわ。リリィちゃんは私と寝ましょうか」
「おう」
こうしてみんなはテントに入り、静かな夜の森に身を委ねた。
みんなが眠りについたあと、リオナはそっとエリナの腕をどけ、外に出た。
「あー今日はいろいろありすぎて眠れないな。アリシアとあんなに近くにいたし……」
「あら、私がどうかした?」
「あ、アリシア!?どうしてここに?」
「リオナちゃんも眠れなかったの?」
「アリシアも?」
「そんなところ。せっかくだから一つ質問していいかしら?」
「もちろん。ただ呪いのことは言えないからね」
「分かってるわよ。ところでリオナとエリナは、いつもあんな風にくっついてるの?」
「そのこと?うーん、どちらかと言うとエリナが勝手にくっついているというか……」
「そう……リオナはハグみたいにべったりくっつくこと、どう思ってる?」
「どうって言われても……嫌いな人じゃなければ、嫌な気持ちにはならないと思う。そんなこと聞くってことは呪いが関係してるの?」
「そんなところ……」
アリシアは少し悲しそうにうつむいた。
(アリシアの悲しい顔なんて見たくない……よし、リオナ、ここは明るく)
「大丈夫よ。アリシアの呪いのことは分からないけど、アリシアには私がいるわ」
(ま、まって、私今なんて言った?告白みたいじゃない!?)
アリシアの目が少しだけ潤んで、でも優しく笑う。
「ありがとう、リオナ。君のようなポジティブ思考が羨ましいよ」
「な、なんかそろそろエリナにばれそうだから、私寝るね。おやすみ」
「分かったわ。おやすみ、リオナ」
(もう急に褒めないでよ……ドキドキが止まらなくて余計に眠れないよ~)
クリアワームの糸で作られた魔法のテントは、透明でも外の気配を感じられる――けれど、この中だけは静かで安心できる小さな空間だった。
リオナは自分のテントで目を閉じ、森のひんやりとした空気に包まれながら、ゆっくりと呼吸を整える。今日の出来事を胸にしまい、ようやく心を落ち着けて、眠りに身を任せることができた。
この物語は百合オタクの自分が趣味で書いてます。自分用ですが、読んでくれる人がいれば嬉しいです。投稿頻度は不定期です。




